勝地涼「ただ面白いだけではない」 宮藤官九郎が手掛けるコントで久々のタッグ【インタビュー】
宮藤官九郎が免疫力がアップすることだけを目指して書いた、ウーマンリブvol.16「主婦 米田時江の免疫力がアップするコント6本」が11月7日から上演される。ウーマンリブは、宮藤が何物にもとらわれず、今やりたいことを自由に、ストレートに表現する大人計画の公演。今回は、主婦・米田時江の日常生活をのぞき見るようなオムニバスコントを、片桐はいり、勝地涼、皆川猿時ら実力派俳優たちが展開する。勝地に宮藤との久しぶりの舞台でのタッグについてや勝地の“免疫力アップ法”、さらには2024年を振り返った心境などを聞いた。
−出演が決まったときのお気持ちを教えてください。
俳優を25年くらいやってきましたが、僕の半分は宮藤官九郎さん、もう半分は古田新太さんでできていると思います(笑)。それくらいお世話になってきたので、宮藤さんに呼んでいただけるのは本当にうれしいです。今(取材当時)、稽古が始まったばかりですが、笑いを耐えられないくらい面白いんですよ。宮藤組常連の皆川さん、片桐さん、伊勢(志摩)さんはさすがです。皆さんが面白いので、毎日、楽しいですし、これからもっと面白くなると思います。片桐さんは、面白いせりふを面白く言おうとするのではなく、その人物になってせりふを言っているんです。例えば、宮藤さんから「こういうふうにやってください」と演出があったとき、片桐さんは一瞬、止まるんですよ。その止まっている時間に、自分とその役をつなげる作業をしているんだと思います。やっぱりすごいなと思って、めちゃくちゃ観察しています(笑)。片桐さんが役者としてすばらしいのはこういうことなのかなと、改めて感じています。
−勝地さんは宮藤さんの台本からどのように面白さを抽出して演じているのですか。
周りの皆さんの盛り上がりやノリについていくと、自然にそうなっている気がします。北(香耶)さんもすごく面白いんですよ。ご本人は「みんな面白いです」とおっしゃっていましたが、そういう北さんも全く違う面白さがある。自分がどうなのかは分からないですが、とにかく演じていて楽しいです。きっと周りの方々に影響を受けているんだと思います。
−宮藤さんとのクリエイトという意味での楽しみは?
自分で台本を書いておいて「何でこんなこと書いたんだっけ?」ということが起こるので、めちゃくちゃ面白いです。台本通りに演じるというよりは、現場で起こることを大切にされているので、「そのせりふ、2回言ってみようか」とかゲラゲラ笑いながら演出をされている姿は宮藤さんっぽくていいなと感じています。
−そうすると、稽古場も皆さんで楽しみながら進んでいるのですね。
そうですね。宮藤さんの演出を受けるのはかなり久しぶりなんです。前回は2018年だったと思うので、6年くらい経っています。その間の宮藤さんの作品には、呼ばれていないんですよね(笑)。こうして取材で、これまでの俳優人生についての話になったときに、絶対に宮藤さんの名前が出てきて、「勝地さんといえば宮藤さんですよね」と言っていただけますが、意外と出てないんです(笑)。でも、その出ていない時間に宮藤さんが手掛けられた作品を見て楽しんでいますし、もはやファンですね。やっぱり天才だと思うので、こうしてまた呼んでいただけるのはうれしいです。
−勝地さんからみた宮藤さんの作品の魅力は?
現代を切り取って、社会問題を作品の中で面白おかしく、風刺として取り上げていらっしゃるところや、宮藤さんが宮城県出身ということもあり、震災についてもしっかり描かれているのですごいなと感じています。もちろん、今回のような風刺がない作品も面白さが詰まっていて好きです。今回、1本目のコントは、台本をゲラゲラ笑って読みながらも少し切なくなったんです、学生時代を思い出して。当たり前ではありますが、ただ面白いだけではないというのが宮藤さんの作品の魅力だと思います。
−今回は、「免疫力がアップする」コントということですが、勝地さんにとっての免疫力アップの方法は?
笑うことだと思います。コロナ禍であまり話ができなくて、ふさぎ込んでいたときに笑わないのはやっぱり良くないと思いました。その頃、宮藤さんとテレビ電話をしたことがあったんです。当時、ほとんど人と顔を合わせていなかったこともあって、久しぶりにめちゃくちゃ笑いました。遠距離恋愛中のカップルみたいでしたね(笑)。そのときに「いつかコロナのこの状況を笑って作品でいじれたら面白いよね」ということを宮藤さんがおっしゃっていて、僕も「やりましょう」とそんな話をしたのを覚えています。とにかく笑って、話をしたことですごく元気が出たんです。今は、満席の状態でゲラゲラ笑いながら舞台を見ることができますが、それすら当時は考えられなかった。こうして「舞台で笑って免疫力をあげよう」と言える世の中に戻って本当に良かったなと思います。ゲラゲラ笑うというのは素晴らしいことですし、免疫力もアップすると思います。
−勝地さんは、普段から健康や体のケアを何か行っていますか。
以前はキックボクシングに通っていましたが、最近はサウナに行くだけで、運動はしていないです。その替わりに、森山未來くんから教わったボールを使ったマッサージやストレッチをしています。未來くんがやっていることなら間違いないだろうと思って(笑)。
−ところで、今年はこの作品で締めくくりとなると思いますが、勝地さんにとってこの1年はどのような1年でしたか。
あまり調子は良くなかったように思います。「新宿野戦病院」にも呼ばれてないですから(笑)。宮藤さんの映像に呼ばれるというのは、役者として、信頼してもらう必要があるので、もっと頑張らなくてはいけないなと改めて思っているところです。
−2024年に特に印象に残っている出来事を教えてください。
宮藤さんとこうしてまた舞台をやれることもそうですし、宮藤さんが脚本を担当されたテレビ朝日開局65周年記念 ドラマプレミアム「終りに見た街」という作品に出演させていただいたことも印象深いです。僕が最初に宮藤さんの作品に出演させていただいたのは、(2008年放送のドラマ)「未来講師めぐる」という作品だったのですが、そのときのプロデューサーやそのつながりで出会った監督と再び仕事ができ、また呼んでもらえるように頑張ろうとすごく感慨深い気持ちになりました。
−では、来年の目標は?
舞台だけではなく、映像作品にも出演したいと思っていますし、落語もやりたいとも思っています。落語は、風間杜夫さんが年齢を重ねてからやられていたのを見て、役者は仕事が来るのを待っているだけじゃなく、自分から動くことも大事だなと思うようになり、そこから目標にしています。森山未來くんもそうですし、プライベートで仲が良い加藤シゲアキくんも新しいことをやろうと前を向いている人で、その姿を見て刺激を受けています。なので、古典落語にも挑戦して、加藤シゲアキくんに台本を書いてもらう。いつか宮藤さんにも書いてもらう。そんな夢を持って、楽しんでいきたいと思います。
(取材・文・写真/嶋田真己)
ウーマンリブvol.16「主婦 米田時江の免疫力がアップするコント6本」は、11月7日〜12月15日に都内・ザ・スズナリ、12月18日〜22日に大阪・松下IMPホールで上演。