高齢者の労災防止へ職場環境など整備、厚労省が法改正へ…昨年の死傷者は4万人弱と8年連続で最多を更新
急増する高齢者の労働災害を防ぐため、厚生労働省は企業に対し、高齢者の労災対策を努力義務として課す方針を固めた。
人手不足を背景にシニアの働き手は増えており、職場環境を整え、転倒などの事故を防止するよう求める。来年の通常国会で労働安全衛生法の改正案の提出を目指す。
65歳以上の労働者は昨年、過去最多の914万人となり、20年前からほぼ倍増した。これに伴い、労災事故も増えている。昨年、死傷した60歳以上は3万9702人で、8年連続で過去最多を更新した。
転倒事故が4割に上っており、ぬれた床で足を滑らせたり、段差でつまずいたりと、加齢による身体機能や筋力の低下が要因とみられるケースが目立った。
全労働者に占める60歳以上の割合は18・7%だったが、労災に遭った人は60歳以上が29・3%に上った。発生率は30歳代と比べ、男性で約2倍、女性は約4倍に上り、休業期間も長期化する傾向にあった。
厚労省は2020年、高齢者の労災防止に向けた指針を策定。企業に対し、高齢の労働者の体力や健康状態を把握した上で、段差の解消、スロープや涼しい休憩場所の設置などの対策を呼びかけている。
だが、厚労省の昨年の調査では、対策を講じた企業は19%にとどまった。実施しない理由は、「自社の60歳以上は健康」(48%)が最多で、「必要性を感じない」(23%)も多かった。
こうした状況を改善するため、厚労省は指針で示している労災対策について、労働安全衛生法に基づく企業の努力義務として、取り組みの推進を図ることにした。6日に開かれる厚労相の諮問機関・労働政策審議会の分科会で、同省が法制化を見据えた案を示し、了承が得られる見通し。
少子高齢化で人手不足は更なる深刻化が見込まれ、政府は高齢者の就労を拡大したい考え。40年に全労働者に占める割合は30%まで増える見込みで、対策は急務となっている。