今の時代に合った実写版「ウイングマン」へのチャレンジ!特撮アクションの第一人者・坂本浩一監督インタビュー

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アメリカの「パワーレンジャー」、日本では「仮面ライダー」「スーパー戦隊」「ウルトラマン」の三大特撮を監督するという偉業を達成した特撮アクションの第一人者・坂本浩一監督が、1980年代に一世を風靡した人気漫画の実写化に挑んでいる。


藤岡真威人演じるヒーローに憧れる主人公・広野健太が、不思議なノートの力で空想の戦士に変身する、ドラマチューズ!「ウイングマン」(毎週火曜深夜24時30分)。1983年から1985年にかけて「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された桂正和原作の「ウイングマン」、ヒーローとしての魅力、実写化へのこだわりとは?

【動画】特撮アクションの第一人者・坂本浩一監督が手がける実写ドラマ「ウイングマン」

昭和の新しいヒーロー像の令和に通じる魅力



「ウイングマン」第1話より

――1983年〜1985年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された、桂正和先生原作の「ウイングマン」。1970年生まれの坂本監督は原作漫画の直撃世代ですが、「ウイングマン」のどこに魅力を感じていたのでしょう?

「“健太”が等身大の少年であるところに、一番の魅力を感じました。自分自身も特撮ヒーローや漫画・アニメ、ジャッキー・チェンをはじめとするアクション映画が大好きな、健太と同じオタクでした(笑)。自分にとって身近な、今までにない新しいヒーロー像に親近感を覚えたんです」

――それまでに主流だった熱血漢でも運動神経万能でもない、ニュータイプの主人公が新鮮でした。

「当時のヒーロー、アクション作品のほとんどは、年上のお兄さん、お姉さんが主人公でしたが、健太は自分と同世代の中学生(※ドラマでは高校生、原作では中学生)だったことも大きかったですね。しかも、13歳だった当時の自分と同じように女の子にドキドキしたり、ヒーローに憧れるあまりドジったり、親や先生に怒られたりする(笑)、いわゆる三枚目。まさにその作品の中にいるような、まるで自分が主人公のような気持ちで見られるところも魅力的でした」

「ウイングマン」第1話より

――中学生という年代は、それまでヒーローやアクションものに夢中だった少年が異性を意識し始める多感な時期です。

「その点、『ウイングマン』はヒーローとしてもカッコいいし、ドラマでは加藤小夏さんが演じるヒロイン・アオイはもちろん、登場する女の子のキャラクターもみんな魅力的でかわいらしい。自分のニーズに応えてくれる、好きなものがすべて詰まった『ウイングマン』という作品に、すぐに熱中しました」

――令和の時代にも続く主人公像であることに、桂先生の革新性、先見性を感じますね。

「そうですね。ただ、この物語を令和という時代に実写化するにあたって、漫画が連載されていた40年前の社会とはずいぶん変わっていますし、見る側の感覚も違いますから、そこをどうやってドラマとして成立させるのか――。今の時代の若い世代に強くアピールしていくのかが大きな課題です。

自分と同じく1980年代に『ウイングマン』を見ていた40〜50代の方々をターゲットに入れつつも、例えば、今の特撮を見ている若い人たち、あるいは漫画やアニメが好きな人たち、特撮や漫画・アニメには興味ないけれどドラマが好きで見てみたいと思っている人たち。40年前の原作のいいところを受け継ぎながら、今の時代に合った“実写版『ウイングマン』”にしていくことは大きなチャレンジでしたし、プレッシャーでもありました」

「ウイングマン」第1話より

――多くのファンを抱えている作品ですから、ご苦労も多かったと思います。“今の時代に寄せる=改悪”などと言われ兼ねません。

「ところが、桂先生自ら“原作のここはこうした方がいい、こう変えましょう!”と、意欲的だったんです。これには驚きました。やはり原作者としては、オリジナルを出来るだけ守りたいと想像していたのですが、先生は今の時代に合った設定変更やキャラクターの変更を自ら提案してくださったんです。こちらのアイデアも踏まえてディスカッションしてくださったので、とても頼もしかったですし、すごく実りのある準備期間でした」

――今回「総合監修」の肩書でクレジットされる桂先生の言葉で印象に残ったことは何ですか?

「“漫画、アニメ(1984〜1985年放送/テレビ朝日系)、今回の実写化と、メディアによってそれぞれの表現方法があるのだから、同じことをする必要はない。今の時代に合わせた作品を作ろう”ということです。先生も20代のころに描かれた作品なので、ブラッシュアップしたい部分もあるようでした」

時代に合わせ、設定に説得力を




――具体的に、今の時代に合わせて変更した部分は?

「マーベルやDCなど大人が見るヒーロー映画・ドラマがある中で、様々な設定に説得力と生合成を持たせることが必要です。例えば、“ドリムノートとは?”“どうやってウイングマンに変身できるのか?”“敵組織の目的と作戦は?”などをもう少し現実的に落とし込んだり、セリフに説得力を持たせたり、細部にこだわっておられましたね」

――実写ドラマでは、第1話で健太がドリムノートにウイングマンについて書き込むくだりからして説得力がありました。

「脚本家チームの方々が特撮畑の方々ではなく、リアリティに寄せたディテールにこだわって、シーンに説得力を持たせるように色々とアイデアを出して下さいました」

――原作では「カッコいいノートを見るとついつい書きたくなってしまう」とつぶやくや、勝手に落書きを。ドラマでは、アオイと衝突した場所にカバンを置き忘れたため、先ほど思いついたアイデアを書き留めるものがなく仕方なしに…という具合。

「桂先生も随所にたくさんアイデアをくださったので助かりました」

「ウイングマン」第1話より

――先ほどおっしゃった「40年前の原作のいいところを受け継ぎながら」という意味では、1980年代の中学生…坂本少年もドキドキしたであろうアオイの衣装も、今の時代にギリギリのラインで再現されていました。

「(笑)そうですね。そこは放送が深夜枠といえども今の時代ではさすがに難しいので、アレンジしました。

解釈としては、セクシーなコスチュームというよりはアーマー、戦闘用のスーツです。戦闘時の機能や、着心地や動きやすさも考慮して桂先生にデザインしていただきました」

「ウイングマン」第2話より

――ウイングマンについてはインタビュー【後編】でお聞きするとしまして、アオイのコスチュームは、桂先生も相当こだわったのでは?

「特殊衣装制作を担当したJAP工房さんと何度も話し合って、どういう素材で、どういうディテールにするのかを何度もデザインを練り直しておられましたね。今の時代にみなさんから受け入れられるコスチュームを目指しましたので、早く感想が聞きたいです」

――実写のアオイも魅力的です!

「よかったです! アオイの髪の毛の色も、原作では青ですが、実写だとコスプレ感が出やすいので、いくつか試した後で今の色に落ち着きました。コスプレっぽくならないようにアオイとしてのキャラクターを立てつつ、ファンの方々がガッカリしないバランスを探りました。

その結果、戦闘服時は銀髪、学校などの日常生活では黒髪となりました。加藤さんも、実写のアオイをうまく表現してくれていて流石です」

「ウイングマン」第2話より

明日公開の【後編】では、「チェイング!」の掛け声もイメージのまんまと評判の藤岡真威人さん演じる健太、そして気になるウイングマンの造形、坂本監督入魂のアクションについてお聞きします!


今夜放送、ドラマチューズ!「ウイングマン」(毎週火曜深夜24時30分)第3話は?

第3話
アオイを追って、異次元世界から悪の帝王の右腕・キータクラーが攻めてきた。キータクラーの力により健太(藤岡真威人)の同級生らは次々と暴徒化し、お互い襲いあってしまう。そんな仲間たちを救うため、健太は“ウイングマン”へと変身し、アオイ(加藤小夏)とともに学校内で暴れ回るキータクラーとシードマン・ロドムスに挑む。一方、クラスメイトの布沢久美子(片田陽依)は、騒動の中でスマホである映像を撮影してしまう…。


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【プロフィール】
坂本浩一(さかもと・こういち)
1970年9月29日生まれ。東京都出身(アメリカ国籍)。16歳の時に倉田アクションクラブに入門後、スタントマンを経て渡米し、スタントマン・俳優として活躍。その後、日本の特撮「スーパー戦隊」シリーズをベースにした「パワーレンジャー」シリーズの監督・プロデューサーとなる。日本では「仮面ライダー」「スーパー戦隊」「ウルトラマン」の三大特撮を監督するという偉業を達成した特撮アクションの第一人者。本作では監督・アクション監督を務める。

(取材・文/橋本達典)