熊谷のグラブを借りて、外野手の動きを練習する中川(撮影・立川洋一郎)

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 「阪神秋季キャンプ」(1日、安芸)

 阪神が1日、高知・安芸での秋季キャンプをスタートした。藤川球児新監督(44)は高卒3年目の中川勇斗捕手(20)を外野へ本格挑戦させると明言。指揮官が「能力が素晴らしい」と絶賛する打撃を生かすのが狙いだ。来季の出場機会を増やすため、積極的に外野守備に取り組む姿に「若い選手なので、プレッシャーにならないようにしたい」と配慮しつつ、中川の成長に期待を込めた。

 地元・高知に藤川監督として帰ってきた。秋季キャンプ初日は残念ながら雨。ブルペンや室内練習場などに限られたが、ナインが練習に「没頭」する姿に満足顔だった。

 「選手たちが非常に活気あふれて。天気は、こんな天気でしたけど、笑顔もありながら、その中で追い込んでいる姿を見て、選手の状態もいいんじゃないかと思います」

 安芸で早くも“藤川構想”が披露された。午後からの守備練習で中川が手にしていたのはキャッチャーミットではなく、外野手用のグラブ。筒井外野守備兼走塁チーフコーチの下、外野手としてマンツーマンで基礎練習を繰り返す姿があった。

 「打撃が非常に優れた選手。あとちょっと手を痛めているので、できることが限られているということで。これを一つのきっかけにちょっと違う練習をしている」

 藤川監督が中川の打力を生かして、外野に挑戦させることを明かした。今季は2軍で70試合に出場し、打率・321、4本塁打、28打点。高卒1年目からパンチ力のある打撃は評価が高かった。2年目の昨季は試合出場こそなかったが、1軍は経験。みやざきフェニックス・リーグで右手に死球を受けた影響で打撃や送球を控えており、時間を有効に使っていく。

 「試合に出てナンボなんで。どこでも守れるところを見せて、1軍で活躍したい。自分の持ち味はバッティングなので、そこは伸ばしながら。キャッチャーも上手になって、どっちもやれる状況に来年はしてきたい」

 中川は外野挑戦を前向きに受け止めた。京都国際時代に一塁や三塁を守った経験はあるが、外野は小学生の頃に遊び程度だという。「本当に素人なんで難しいです。明日から実弾も捕っていく方向なので、もっと課題が見つかると思う」。グラブは熊谷から借り、今後は外野の守備に就き、打球補などを行う予定だ。

 「言うのは簡単ですけどね、やる選手は大変なので。若い選手なので、プレッシャーにならないようにしたい」。気遣いの言葉からも藤川監督の期待がうかがえる。他球団でも広島・坂倉、ヤクルト・内山、オリックス・頓宮、森ら捕手と野手の併用で出場増につなげた例もある。V奪回を狙う来季を見据え、可能性を広げていく。

 ◇中川 勇斗(なかがわ・はやと)2004年1月27日生まれ、20歳。愛知県出身。172センチ、75キロ。右投げ右打ち。捕手。味岡小1年から「味岡キングス」で野球を始める。味岡中時代は「愛知尾州ボーイズ」に所属。京都国際では3年時に春夏連続で甲子園に出場し4強進出に貢献。高校通算18本塁打。21年度ドラフトで阪神から7位指名を受ける。1軍出場はなし。

 ◆捕手から野手転向の成功例 衣笠祥雄(広島)、江藤智(広島など)、山崎武司(中日など)小笠原道大(日本ハムなど)、和田一浩(西武など)、近藤健介(日本ハムなど)、頓宮裕真(オリックス)らがタイトルホルダーとなるような活躍を残した。阪神でも田淵幸一、関川浩一、原口文仁ら、打力が買われコンバートされたり他のポジションに就いたりした例がある。