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 阪神の秋季キャンプが1日、高知県安芸市でスタートした。雨天の初日、藤川球児新監督(44)はブルペン投球の意識改革に着手。ベース上に白いゴム製の紐(ひも)を張り、高低を意識して直球を投げ込ませた。ストレートの質を高めるために、球団では久しく使っていなかった道具をマイナーチェンジし、「火の玉ボール養成アイテム」として引っ張り出した形だ。

 投手出身で、コミュニケーションを重視する藤川新監督のらしさが初日から出た。ブルペンに滞在すること約1時間半。選手に頻繁に声をかけ、直接アドバイスを送ることもあった。自らの指示で、安芸市営球場の倉庫に眠っていた道具も引っ張り出した。6レーンのうち3レーンのホームベース上に白いゴム製の紐を張った。

 「高めなのか、低めなのか、どういうことを意識して投げ込むかが凄く大事。どういう狙いでみんなが投げるのかなっていうのを(見たかった)。コーチと相談した上で僕からお願いをした」

 21年の春季キャンプで2軍が今回と同様にブルペンに紐を張った経緯はある。しかし近年、1軍では使用していなかった。また、球団に古くあったものは元々、四角のマス目状になっていた。縦の線を取っ払って横の線だけ残したところが球児流だ。

 「僕は高めのピッチャーで、今はそういうピッチャーはなかなかいなくて。低いところに集められるピッチャーが優れていて、特に先発は」

 高めに投げるのも低めに投げるのも各自の自由。ただし、紐の上を狙うのか、それとも下を狙うのか、高さにこだわって直球を投げるよう求めた。大事なのは内角、外角ではない。力のあるストレートを狙った高さに投げ込むことが成功の秘訣(ひけつ)というメッセージ。「火の玉」と言われた剛速球でプロ野球歴代5位タイの243セーブを挙げたレジェンドによる「ブルペン意識改革」だった。

 選手の反応も上々だ。初体験の門別は「紐があることで高さが分かりやすいと思った」と目付けをして左腕を振った。先発らしく、紐よりも下を狙って投げ「しっかり抑えられた」とニコリ。体重移動について直々に助言ももらった。高卒3年目を迎える来季の飛躍へ、収穫が多い一日になった。

 指揮官は「初めてああいうことをした選手もいると思う。3年、5年、10年とした時に、あ、あんなことがあった、あんな練習をしてみようという気付きにもなるので」と長期的な効果も唱えた。直球を磨くという点では、“火の玉養成紐”と言えそうだ。雨天でグラウンドが使えない不運な船出もなんのその。「22」が付いた背中には熱気が満ちあふれていた。(倉世古 洋平)

 ≪過去の“珍トレ”アラカルト≫

 ☆ハンマー 21年2月、オリックス・山本(現ドジャース)が体重移動の意識付けを目的に、ハンマー投げのハンマーに似た器具で練習。横歩きに合わせて、ゴルフスイングのような動作から円運動を繰り返す。

 ☆段差ティースタンド 23年2月、日本ハム・万波が名護キャンプに高低差が10センチあるティースタンドを持参。右肩が下がる癖を修正するため、下げた手前のボールに当てないよう、通常の高さのボールを打つ練習を繰り返す。

 ☆折れたバット 24年1月、ヤクルト2位の新人・松本健が入寮時に持参。シャドーピッチングで使うためで「普通はタオルでやるけど、バットなのでしならずに速く腕を振れる」。フォーム固めにも効果を発揮。