日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』の場面カット(C)TBSスパークル/TBS

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 俳優の神木隆之介が主演を務める、TBS系日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(毎週日曜 後9:00)。1950年代の長崎県・端島(通称・軍艦島)と現代の東京を結ぶストーリーが描かれている。過去パートの舞台となる端島は、長崎港から船で約40分の場所に浮かぶ日本近代化の遺構。当時の端島を再現するため、VFXを駆使するなど連続ドラマとしては初の試みに奮闘しているのが、脚本家・野木亜紀子氏×塚原あゆ子監督×新井順子プロデューサーだ。

【写真】マジで別人…ホストを演じる神木隆之介

 『アンナチュラル』『MIU404』に加え、大ヒットを記録している映画『ラストマイル』を作り出したヒットメーカートリオだが、日曜劇場を手掛けるのは今回が初めて。ここでは第1話の放送を終えた今だからこそ聞きたい、企画の立ち上がりの経緯や制作エピソードといった舞台裏はもちろん。今後の見逃せないポイントを、新井プロデューサーに直撃してひも解いていく。

──脚本を担当する野木亜紀子さんと長崎に旅行したことが、今回の企画につながったと聞きました。

 旅行では長崎のいろいろな名所を訪れ純粋に楽しませていただきました。そのときに端島にも訪れたのですが、上陸したときに感じた圧巻の光景が印象に残っています。ガイドを務める元島民の方が話してくださった端島ならではの逸話もとてもおもしろくて。一方で、この島をテーマにした作品はきっと作れないだろうなとも思いました。時代モノになるでしょうし、素晴らしい景色や端島ならではの物語は、そう簡単に再現できないだろうなと。それからしばらく経って、「日曜劇場で何か作ってみたいね」という話になり、この枠でなら壮大な物語が作れるのではないかと考えるように。そこから本作の企画がスタートしました。

──端島の風景を再現するにあたり、工夫した点や苦労したところは?

 端島銀座のセットを建てる場所を探すのにかなり時間がかかりました。大規模なセットを長期にわたって建てられて、なおかつ躯体を作って倒れないようにしないといけない。とても大変な作業でしたが、完成してみたらとてもリアルで、まさしく圧巻でした。また、当時の島にあった美容院やビリヤード場などの建物が台本上に出てきたときは、塚原監督から実写にしたいという希望が出たので、ワンカットを撮るために場所を探し飾って撮影しました。こだわり抜いただけあってとても豪華な映像になっていて。第1話を見たみなさんから「映画並みですね」と言ってもらえています。

──第2話ではそんな端島を台風が襲います。この場面の撮影エピソードも聞かせてください。

 台風の撮影はとても大掛かりでした。一体何トンの水を使ったんだろう…。撮影では端島銀座全体に雨を降らせる装置を1日がかりで設置したり、水をかぶるシーンでは、ドラム缶5つ使った装置を作って勢いのある水の演出をしたり…。斎藤さんが撮影現場に用意された水の量を見て、「泳げそう」とおっしゃっていましたね(笑)。

──現代パートでは、これまでにない神木さんを見ることができますね。

 ホストの玲央は、「見たことのない神木さんを作ろうと」とできた役柄。神木さんがロケに協力してくださったホストクラブの方々にいろいろ取材して、そこで聞いたエピソードを実際に芝居に生かされているのですが、それがとてもリアルで。同じ日に鉄平と玲央を演じたときには「切り替えが難しい」と言っていましたが、神木さんは没入型なうえに、一瞬でスイッチの切り替えができる俳優さんなんです。役を引きずることなく、カットがかかればすぐに素に戻れる。だから、前向きに生きている鉄平から、けだるい雰囲気で目が死んでいる玲央への移行が本当に見事でした。

──皆さんのキャスティングはどのように進められたのでしょうか。

 主人公はすぐに「神木さんでいこう」という意見で一致しました。鉄平を巡る3人の女性(朝子、百合子、リナ)については、神木さんと並んだときにそれぞれ違った印象を醸し出す人たちに。なかでもリナ役は、お芝居はもちろん歌える人となるとなかなかいなくて…どなたにお願いするか悩みました。ダメ元で池田さんにオファーしたところ、お父さまが端島の隣の高島のご出身というご縁もあり、すぐに出演OKのお返事をいただきました。朝子役の杉咲花さん、百合子役の土屋太鳳さんとは、彼女たちが10代のころからご一緒していて。「また一緒にやりたい」とずっと考えていたこともあり、依頼しました。いづみ役の宮本信子さんには、「なんとかご一緒したい」という思いを込めてお手紙を書いて。念願叶って皆さんに集まっていただけました。

──男性キャストの起用エピソードも教えてください。

 進平役の斎藤(工)さんは、これまでずっとスケジュールが合わなかったのですが、今回ようやく出演してもらえました。鉄平の幼なじみの賢将役は、野木さんがイメージにぴったりな清水尋也さんにお願いしたいとおっしゃって。また、端島パートは、できれば長崎、もしくは九州出身の方に出ていただきたいと思い、炭鉱員役の方を探す時には「九州出身の体の大きな方募集!」という貼り紙を作って募ったりしました。撮影現場のキャストは皆さん本当に仲良しで、雰囲気作りも含め、いいキャスティングができたと感謝しています。

──和尚役は長崎県出身のさだまさしさんが担当されています。

 長崎といえば、さださんは欠かせません! ご自身のコンサートもあるなかでのオファーだったのですが、『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』の縁もあり、お願いしたら「やるよ!」と快諾してくださいました。

──第1話を見た限りでは、まだまだ展開を予想できないのですが、今後のヒントをお願いいたします。

 ストーリー全体を通してさまざまなグラデーションがあって、中盤・終盤ではまた違う味わいになっていきます。さまざまなテーマにも斬り込んでいて、いろいろな出来事が起こっていくうちに、人生が思いもよらない方向に走っていく。まさに激動の“70年にわたる愛の物語”なんです。愛あってこその展開だと感じていただける、日曜劇場らしい作品にしていきます。

──神木さんの一人二役が今後どう繋がるのか、女性陣といづみさんに何か関係が…?など、気になるポイントがたくさんあります。

 そこはぜひ推測してみてください! 難しいとは思いますが、「そこだったのか…!」と思っていただける展開になっています。スタッフたちも「えーっ!?」ってなっていたので(笑)。実は第1話からすでにヒントが散りばめられているので、最終回まで見届けていただいた後にもう一度最初から見ていただくと、さらに楽しんでいただけるはず。過去パートの内容がどう現代に結びついているかが、今後のキーになっていく物語。玲央が端島の人々の人生を知ることにより、どう変化していくのか…その展開にぜひご注目ください。

――本作での新井さんのこだわりポイントを1つ教えてください。

 いろいろありますが、King Gnuさんに主題歌をお願いすることにはこだわりました。日曜劇場の主題歌には優しくハートフルなイメージがあると思いますが、今回はノスタルジーな世界とは対象的に力強さが欲しかった。常田大希さんと直接打ち合わせをさせていただいて、キーワードもたくさんお伝えしましたし、台本も全部読んでもらったうえで作ってくださった楽曲になっています。

――では、最後に視聴者へのメッセージをお願いいたします。

 神木さんもおっしゃっている通り、本作は「ちゃんぽん」のようなドラマ。家族の物語、ラブストーリー、考察要素など、皆さんが好きな見方で楽しんでいただけたら。誰が主人公になってもおかしくないストーリーになっているので、登場人物の誰かに感情移入しながら見てもらえるといいなと思います。

 このチームではこれまで事件モノや社会的なテーマを扱った作品を作ってきましたが、3人で手掛ける日曜劇場は初めて。私たち自身も、今回で幅が広がったという実感があります。皆さんにも「こういうジャンルも作るんだね!」と、世界が広がったことを感じてもらえたらうれしいです。