クレジットカードやキャッシュレス決済に関する疑問や悩みに“クレカの鉄人”岩田昭男師範が答える連載企画。今回は、会社経営者や個人事業主はもちろん、近年増加する副業を持つビジネスマンも注目のビジネスカード・法人カードについて、岩田師範が解説します!

 

【第22回】副業用にオススメのビジネスカードを教えて!

【解説する人】岩田 昭男

クレジットカード分野の取材・研究に30年以上携わるご意見番。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】加瀬郷 阿夫里(かせごう あふり)

大手通信会社に勤める35歳プログラマー。会社が副業を認めていることもあり、3年前からアプリ開発の副業を開始。これまで一般カードをビジネスの支払い専用のカードとして使ってきたが、そろそろ副業用にビジネスカードを作りたいと考え、アドバイスをもらいに道場を訪ねた。

 

(相談者の要望)

〇副業用に最適なビジネスカードを教えてほしい。

〇ビジネスカードを選ぶ際に重視すべきポイントを知りたい。

〇ビジネスカードのトレンドや注目のカードがあれば教えて。

 

「働き方改革」でビジネスカードの注目度が急上昇!

師範 ビジネスカード(法人カード)について話を聞きに来たのはおぬしか?

 

加瀬郷 はい。趣味で続けているゲームアプリ作りが数年前から副業化できまして。ついてはそれ専用にクレジットカードも作ったほうがいいかなと思ったもので。

 

師範 ほほう。近年「働き方改革」が叫ばれるようになり、実際大手企業でも、これまで認めていなかった副業を認める会社が増えている。三井住友銀行もこの10月から副業を解禁してニュースになっとったが、おぬしもそんな時流に乗っとるわけじゃな。ところでおぬし、そもそもビジネスカードを持とうと思った理由は何じゃ?

 

加瀬郷 それはやはり、経理管理がラクになるからですかね。また、特典もいろいろ付いてると聞くので、気になってます。

 

師範 なるほど。それに加えて重要なのは、カードの利用限度額が個人カードより高めに設定されていることかの。ただ、その限度額はカードのランクによって変わるし、何よりカード会社の与信審査で限度額が決められる。カードを発行する会社によって限度額も異なるので、自分の事業活動に必要な金額をあらかじめ把握して、事業に支障をきたさない限度額に設定しておくことが重要じゃ。

 

加瀬郷 まあ、私の場合は個人でのプログラム開発なんでそんなに限度額を高めに設定する必要もないんですけど、たしかに毎月の経費がどれぐらいになるか知っておくことは重要ですね。

 

開業すぐのフリーランスもビジネスカードが持てる時代

師範 そもそも法人カードには「ビジネスカード」と「コーポレートカード」「パーチェシングカード」の3種類がある。ビジネスカードは中小企業や個人事業主向けのカードで追加カード枚数の目安は3〜5枚、コーポレートカードは追加カードを20枚以上発行できる主に大企業向けの法人カードを指す。ちなみに「パーチェシングカード」は法人携帯電話料金や光熱費など法人の購買活動での支払いに特化して使うカードで、ほとんどが物理カードが発行されないカードレスタイプ。まあおぬしにはほぼ関係ないカードじゃろ。

 

加瀬郷 お話を聞く限り、私に関係があるのはビジネスカード、ということになりそうですね。

 

師範 そうじゃな。ビジネスカードに関しては、最近はフリーランスや副業を行う者も手軽に作れるよう、「登記簿・決算書の提出不要」など申し込み手続きが簡便化されたものも多い。従来、ビジネスカードは個人カードと比べて審査が厳しく、審査通過の目安はだいたい「設立年数3年以上」と言われてきたが、上記の「登記簿・決算書提出不要」なカードの登場により、開業したての個人事業主や設立直後の法人でもカードが作れるようになってきた。ただし、申込者本人が支払い遅延など、個人のクレジットヒストリーに傷がついていたり、多額のローンを抱えていたりすると審査通過は厳しいから要注意じゃ。

 

ビジネスカードを選ぶ際には利用限度額とビジネスに役立つサービスの有無に注目

加瀬郷 実際にビジネスカードを選ぶ場合、どんなところに注意したらいいんでしょう?

 

師範 先ほども言ったが、限度額は大きいほうがいい。仕事の大事な場面で限度額を超過して必要なモノが買えない、なんてことになったら目も当てられん。個人カード(一般カード)の限度額はせいぜい100万円。これに対し、ビジネスカードの限度額は200万〜300万円、あるいはそれ以上のものもあり、それらのカードを選んでおけば安心感は大きい。合わせてセキュリティの高さや不正利用保険の有無もチェックしたいところじゃ。また、カードに付帯する特典・サービスにも注目。自分が使っている会計ソフトと連携できれば経理処理や確定申告の大幅な負担軽減が期待できるし、海外出張が多いなら旅行傷害保険の充実や空港ラウンジの無料利用も魅力になる。接待が必要な人にはレストランの利用優待といったサービスも有効に使えるじゃろう。

 

加瀬郷 私の場合、接待は必要なさそうですが、会計ソフトとの連携はすごく助かるはずです。

 

師範 もちろん、年会費とポイント還元率も重要。ビジネスカードのなかには年会費無料のものもある一方、年会費の高いカードは付帯サービスが充実しておる。ビジネスカードの年会費は経費として計上できるから、ビジネスに役立つサービスが多いなら年会費高めのカードを持つも良し。事業を始めたばかりなら、年会費無料カードから始めるのもアリじゃ。ポイント還元に関しても、少しでも還元率が高いほうが経費削減に役立つ。決して軽んじるわけにはいかんぞ。

 

新登場のJCB「Biz ONE」は個人事業主・フリーランスに最適な1枚

加瀬郷 では師範のオススメは?

 

師範 まずはJCBがこの秋に発行開始した「Biz ONE」かの。これは個人事業主、フリーランス向けに作られたカード。追加カードは作れんが、年会費無料でポイント還元率は1%、利用限度額は最大500万円と十分なスペックじゃ。このカードはJCBオリジナルシリーズなので、様々な優待店でさらにポイント還元率を上げることが可能。特にAmazon利用時のポイント還元率が最大2%になるのも見逃せん。なお、同カードは取引先への銀行振り込みをカード払いで代行できる「請求書カード払い」に対応。請求書の支払い期限を約40日先延ばしできるぞ。

 

加瀬郷 たしかに予定していた入金が遅れた際に支払いを先延ばしできるのは安心です。

 

師範 さらにこのカードは、マネーフォワード、freee会計、弥生など複数のクラウド会計ソフトに対応し、会計処理を自動化可能。カード入会後に「弥生会計オンライン」を2年間、「やよいの青色申告オンライン」を1年間無料で利用できるのも魅力じゃ。

 

加瀬郷 そこまでできて無料って、たしかにスゴいですね。

 

師範 ちなみに、カード払いする経費が年間100万円以上なら上位カードの「Biz ONE ゴールド」を推奨。年会費5500円(税込)が初年度無料に加え、年間利用額100万円以上で、翌年度も年会費無料になる。特典・サービス面では、「Biz ONE」の特典に加え、空港ラウンジの無料優待、医師や保健師、看護師などによる健康・医療・メンタルヘルスなどの24時間相談サービス、提携医療機関の人間ドックを優待料金で利用できるサービスを付帯。特に「人間ドックサービス」は、高額な人間ドックを受ける機会の少ない自営業者、フリーランスには魅力的じゃ。ショッピングカード保険やスマホ保険、サイバーリスク保険の付帯も見逃せん。

 

加瀬郷 それだけサービスが手厚いと、個人事業主なら年会費5500円も高くないかもです!

 

師範 ちなみに、Biz ONEもBiz ONE ゴールドも登記簿など法人の本人確認書類は提出不要。法人名義のほか、代表者個人名義の口座でも決済できる。ただし旅行傷害保険の適用がないことで、万が一の旅行保険は個人カードでカバーする必要があるな。

 

「三井住友カード ビジネスオーナーズ」はフレキシブルな補償プランと新幹線のネット予約サービスに特色あり!

師範 ほかに副業用のビジネスカードというと、三井住友カード ビジネスオーナーズ(一般)あたりが王道。年会費無料で利用限度額は最大500万円(所定の審査がある)。登記簿や決算書の提出が不要で、「請求書支払い代行サービス」(請求書カード払い)にも対応しておる。通常ポイント還元率は0.5%ながら、三井住友カードと2枚持ちするだけでAmazonでの買い物やETC利用、ANAとJALの航空券購入で決済した際のポイント還元率が1.5%になる。会計ソフトはfreee、マネーフォワードと連携可能。また、最高2000万円の海外旅行傷害保険(利用付帯)が付いているが、この保険をスマホ保険や弁護士保険など別の補償プランに切り替えもでき、すでに個人カードに旅行傷害保険が付いているなら、他のプランに切り替えたほうがおトクじゃ。さらに、同カードには東海道・山陽・九州新幹線チケットのネット予約&チケットレス乗車サービスも付帯しておる。

 

加瀬郷 新幹線のネット予約サービスは、出張など国内の移動が多い人には便利そうですね。

 

師範 同カードは追加カードを無料で18枚発行でき、中小企業の法人カードにも最適。また、このカードを年間100万円以上利用すると「三井住友カード ビジネスオーナーズ ゴールド」に年会費永年無料でアップデートの招待状が届く。ゴールドカードは空港ラウンジが無料で利用できるほか、最高2000万円の海外・国内旅行傷害保険も付帯(利用付帯)。年間100万円以上の利用で1万ポイントがプレゼントされる継続特典も付いとるから、招待を断る理由はないな(対象取引や算定期間など適用条件がある)。

 

加瀬郷 こちらのカードもポイント還元率ではJCB Biz ONEにやや劣るものの、特典では甲乙つけ難いですね。特にゴールドカードは1万ポイントの継続特典に惹かれます。

 

師範 ちなみにその三井住友カード ビジネスオーナーズ ゴールドは通常の申し込みも可能。これも登記簿・決算書提出不要で、起業したてでも申し込めるぞ。

 

法人カードの新トレンドは「破格の利用限度額」

師範 ところで法人カードの世界で、あるトレンドが生まれとる。それは、クラウド会計会社などが発行する「利用限度額が超高額なカード」。例えば「マネーフォワード ビジネスカード」は、後払い式とプリペイド式の2つの支払い方法が選べ、後払い式では独自の与信審査により利用限度額は最大10億円、1決済あたり最大1億円まで利用可能となっている。一方、プリペイド式なら与信審査不要で、チャージ上限額は原則5000万円、最大20億円まで増枠もできる。ポイント還元率は通常の支払いで1%、マネーフォワード関連の支払いで3%。毎月の利用額に応じて0.5%相当のボーナスポイント(「10万円で500ポイント」など)がもらえるのも魅力じゃ。専用スマホアプリ「マネーフォワードPay for Business」を使えば月次計算の負担が軽減。「マネーフォワード クラウド経理」や「マネーフォワード クラウド会計」と連携すれば、経理業務をより効率化できる。これで年会費無料、決算書の提出も不要というから驚きじゃ。

 

加瀬郷 年会費無料とは思えない特典の多彩さにめまいがしそうです!

 

師範 さらに、最近注目を集めとるのが「UPSIDERカード」。年会費無料の法人専用カードで、利用限度額10億円かつ発行枚数無制限。銀行残高や入出金情報を元に限度額を算定する独自の与信モデルを採用し、設立直後の法人でも申し込み可能じゃ。また、このカードはキャッシュバック制を採用。毎月最大1.5%が利用額から差し引かれる。利用明細データはリアルタイムに反映され、月次計算をスピード化。マネーフォワードクラウド会計/クラウド会計Plusに加え、freeeや勘定奉行、弥生など多彩な会計ソフトとも連携できるなど、経理のサポート能力も抜群。同カードは「スタートアップ企業が上場するまでの一貫サポート」を謳っており、実際に新規上場企業の20%以上、6万社以上がUPSIDERカードを利用しとる。

 

加瀬郷 ふぇ〜、世の中はそんな時代になってるんですか! まあ私に関しては、会社を上場させるなんて夢のまた夢ですけど、万が一副業が本業になって起業……なんてことになったら、ぜひそういうカードのお世話になりたいですね。

 

価格はすべて税込価格。情報はすべて本稿執筆時のものです。

 

 

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男