上野由岐子「新しいスキルを身につけている」ロス五輪へ“勉学”の秋 10年ぶり世界一に安堵…インタビュー
ソフトボールで五輪3大会メダル獲得のレジェンド・上野由岐子投手(ビックカメラ高崎)が、このほどスポーツ報知のインタビューに応じ、日本代表で10年ぶりの優勝に貢献した7月のワールドカップファイナル(イタリア)を振り返った。2大会ぶりにソフトボールが、種目復帰する2028年ロサンゼルス五輪を見据え、「新しいスキルを身につけている」と勉学の秋を過ごしている。
ソフトボールがネット上でトップニュースになったのは、7月のパリ五輪開幕前。イタリアでのワールドカップ(W杯)決勝大会で10年ぶりの優勝を飾った。リリーフエースで活躍した上野がMVPに輝いた。
「五輪がなくなった以上、W杯が一番大きな大会。そこで優勝することは一番大きな成果だと思うので、自信にもなるし、良かったなという安堵(あんど)感がありますね。MVPに関しては自分が取るとは思わなかった。まさかの受賞です」
予選ラウンド2連勝で迎えたオランダ戦。日本は先発左腕の後藤希友(トヨタ自動車)、2番手の三輪さくら(シオノギ)は3回、欧州で力をつけている相手に連打を浴びて3失点。上野は0―3の3回1死一、二塁で登板し、打者2人を封じる。4回2/3を無失点で抑え、逆転勝ちの流れをつくった。
「(3回は)先制点を取られた展開だったので、これ以上(点差を)離されるわけにはいかないという思いがあった。後藤と三輪で失点したので、ここで私が失点したら日本は打つ手がないという危機感もあった。私が打たれるわけにはいかないみたいなプライドというか、そういう強い思いを持って、投げていました」
今大会は23歳の左腕・後藤、26歳の右腕・三輪を軸に回し、上野は主にリリーフで登板。24歳の坂本実桜(日立)は初めて海外での国際大会を経験。若手の投球に思いを乗せる。
「国際大会の経験を糧に成長してくれたらうれしい。良くも悪くも外国人慣れするというか…日本人と外国人の打者の怖さは違うので、(抑えるのに)必要とされるボールが違う。そういう感覚を持ちながら、使い分けられるようになってほしい。抑えられるようになれる能力は、(3人とも)持っているので。後藤と三輪は(国際舞台で)投げるほど研究される。『慣れられて、抑えられなくなったね』とならないよう、自分も進化していく必要があることにも気づいてほしいですね」
2028年ロサンゼルス五輪で、ソフトボールは2大会ぶりに種目に復帰する。日本協会の推薦により、日本オリンピック委員会の指導者養成講座を週4日、受講し始めた。選手としてキャリアを重ねる上でも学びは多いという。
「スケジュールもハードだし、休む暇がない。チームにはすごく迷惑をかけています。でも受講していて、私自身が新しいスキルを身につけている感覚があって、楽しいというか、面白いというか、やりがいがあります。(ロス五輪は)選手として関わることになるのか、コーチや指導者として関わることになるのかは、今の私には分からない。ロスで日本のために何か力になれるように、必要とされた時にしっかりと成果が出せるような準備は、ぬかりなくしていきたいなと、今は思っています」
まずはニトリJDリーグの終盤戦。2季ぶりの「王座奪還」を目指してきたビックカメラ高崎は、東地区暫定2位でプレーオフ(9〜10日、等々力球技場)に進む。「どんな状況であれ、結果が求められるチーム。結果を出すための努力をしていくチームで在りたい」と投手陣の柱として腕をふるう。
◇上野 由岐子(うえの・ゆきこ)1982年7月22日、福岡市生まれ。42歳。小学3年で競技を始め、2001年に実業団の日立高崎(現ビックカメラ高崎)入り。代表初選出の02年世界選手権・中国戦で完全試合。12、14年世界選手権で金メダル。五輪は04年アテネ大会に初出場し、銅メダル。08年北京、21年東京大会で金メダル。アジア大会は02〜23年に6連覇。最速121キロ。右投右打。174センチ。