石破茂首相(右)と立憲民主党の野田佳彦代表(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

10月27日には衆議院議員選挙、11月5日にはアメリカ大統領選の投開票が行われる。その結果によって、マーケットはどう動くのか。エコノミストのエミン・ユルマズ氏に見通しを聞いた。

※記事の内容は東洋経済の解説動画『衆院選、米大統領選後の株価の行方』から一部を抜粋したものです。外部配信先では動画を視聴できない場合があるため、東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。

総選挙のポイントは「自民党が過半数を取れるか」

――衆院選の投開票が10月27日に行われます。衆院選の行方とそれによる日本の株価をどう見ていらっしゃいますか。

今回の解散・総選挙が決まってから株価は基本的に大きく動いていないですよね。1969年以降、解散・総選挙が発表された日から選挙が行われる日まで、株は下がったことはない。

問題はその後ですよね。日経平均株価の動きを見ると、1日の変動幅がすごく小さい。始値と終値の差が大きくないことを考えると、相場として方向性を探っているような感じですよね。

結局、今回のポイントは、自民党(与党)が過半数を取れるかどうかです。そもそもなぜ岸田首相が退任しないといけなかったのかを考えると、メディアは裏金問題とかいろいろ言ってるけど、私はメインの理由はインフレだと思うんですよ。国民の実質賃金は2年以上マイナスが続いている、要は2年以上にわたって購買力が減ってきたということですね。

国民はインフレを何%と実感しているか。私の感覚ではざっと10%じゃないかと思うんですよ。少なくとも自分がよく行っている飲み屋さんやご飯屋さんとか、よく買っているお菓子とか、そういうものは軒並み10%ぐらい上がっています。

実は日銀が「生活意識に関するアンケート調査」というのを出していて、最新の数値だと14.5%(「1年前に比べ、物価は何%程度変化したか」を聞いた数値)です。

もちろん、その最大の理由は食料品や生活必需品の値上がりです。食料品の値上がりでエンゲル係数(家計の消費支出に占める食材費の比率)が高くなっているということは、全体としては日本人の購買力が減ったということです。

1週間に2回飲みに行けたけれども、今は1回しか行けない。2年に1回海外旅行に行けたけれども、今は高くていけない。こういう不満の蓄積がある。だから今回、石破(茂)首相は難しいところで政権を任された。

過半数割れすると株価にはマイナス

――与党が過半数割れをすると、株価が反応する可能性がある?

あります。かなりマイナスです。立憲民主党は金融所得課税を20%から25%に引き上げる発言をしている。石破さんも最初は似たようなことを言っていたけれども、その後に変えて、岸田政権の路線を継続する、貯蓄から投資へという資産運用立国にするという意味で、金融所得課税の強化をあきらめた。

もう1つ、立憲民主党はインフレ目標を「0%超」としているが、これはインフレにならなくていいよと言っているようなもの。もう1回デフレに戻すような、少なくともデフレの国民生活が楽だったんじゃないかと思っている。

おそらくそれはそのとおりですけれども、先ほども言ったように、インフレになって賃金が追いつくまではタイムラグがある。

立憲民主党がそうとう力をつけて、自民党が負けるような結果は、相場にとってこれはかなりの売り要因です。

不安定要因、不安定さをマーケットは嫌います。(衆院選投開票日の)27日以降は、やはり警戒は必要だと思いますね。

動画では「アメリカ大統領選後の株価見通し」「米国株が調整するリスク」「2024年末の株価」についても解説しています。

(福井 純 : 「会社四季報オンライン」編集部長)