斎藤元彦・前兵庫県知事「応援していただいている方が増えていることは感じています」

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「パワハラ」「おねだり」など知事をめぐる様々な疑惑の告発文書で大きく揺れた兵庫県政。出直し知事選は10月31日告示、11月17日投開票となるが、現地では意外な風が吹いていた。本誌・週刊ポスト(10月18日発売号)で「斎藤前知事現象」をレポートしたジャーナリストの赤石晋一郎氏による斎藤元彦・前兵庫県知事の独占インタビューを詳報する。【前後編の前編】

【写真】「イケメン東大生」時代の斎藤知事(46)、カニを前にご満悦な姿や、辻立ちには100人近くの人が集る姿など

────テレビで観る限りは「悪者」のイメージですが、今朝(10月11日)も三宮駅前(神戸市)での辻立ちには100人近くの人が集まっていた。9月30日付で失職した後、朝の辻立ちはどのくらいしていますか。

「失職した日からですので、9月末からスタートしました」

────ああいった形で失職して、今は直に県民の方と接する機会があって、その反応はどうですか。

「最初、JR須磨駅に立たせていただいたんですけど、その時はすごく緊張しましたね。というのは、やっぱりそれまではいろんな記者会見とかはありまして、厳しい質問もありましたけど、それはメディアの方とか議員の方との対峙ということでした。県民の多くの皆さんと直接接するということがなかったので、初めてそういった現場に立ったのがJR須磨駅で、朝の街頭がスタートでした。

 その時は確か、頷いてくれたりとか、そういった方もおられましたけど、そこまですごく強い反応ではなかったんですね。あとは厳しいことを言われる方も確かにおられました。やっぱり報道などを見て、これまでの対応とかも含めてよくないことをしたっていうようなコメントですね。『あかんことをしたらあかん』っていう感じの言葉ですかね」

街頭で受け取った手紙は「数十通」

────「人殺し」などと言われたこともあったとか。

「そういう感じでもなく……。やはり報道を見て、悪人と思われているところがあった。やはり私自身もよくなく、ハラスメントと疑われても仕方がないことをした。いわゆるハラスメントやおねだりをしたっていうような印象がすごく強かった報道だったと思うので、そういったなかで(県民の反応は)厳しいのかなっていうふうには思っていたんですけど。ただ、そこまでは……皆さん、最初の頃は様子を見ているという感じでしたね」

────今日の辻立ちを見ると、罵声のようなものはなかったように見えました。(聴衆の反応が)変わったという印象ですか。

「皆さん、なんとなく遠くで眺めておられるという感じでしたが、お手紙を持ってきていただいたりとか、そういう方が出てこられました。『あぁ、お手紙をいただいたりするんだ』と結構驚きましたね。中身も読ませていただいたら、本当に頑張ってほしいというような、すごく応援の言葉があって。今はもう(手紙は)数十通あります。

 Xとかでも事前にこういうところで(辻立ちを)やりますよと言ってる方がおられたり、私がやっているのを見て投稿する方もおられて、『それを見て電車を降りてきました』という方も出てきて、ちょっと反応が出てきたなと思いましたね」

────今日も手紙を持ってきた方がいたが、手紙をもらうことが多い?

「今日も5通いただきました。昨日も10通くらいいただいたので……。毎晩、帰ってからすべて目を通しています」

「高校生からの手紙がきっかけで出馬」の真相

────出直し選挙に出馬するきっかけが、「高校生からの手紙」という話があった。パワハラなどのイメージがあるのに応援する人が本当にいるのかとも思われそうだが、実際にはどういった経緯でもらった手紙だったのか。

「定例の囲み取材を毎朝していまして、ある日それが終わってエレベーターに乗ろうとしたら高校生が近寄ってこられて、『頑張ってください』と手紙をいただいた。その高校生というのも、もちろん面識もないですし、どこの高校かも知らなかった。手紙には書いていましたけど。大変驚いて、読ませていただいたら、今回の問題が大きくクローズアップされるなかで私のこれまでやってきた仕事とか、そういったことを調べていた。その高校が、私が県立高校を応援したいということで行ったことがありますので、そこで見掛けたということだったと思います。

 具体的な政策として県立高校のトイレの改修や洋式化、教室や体育館のクーラーの設置、部活動の応援をやらせていただいた。令和2年度の私が就任する前の決算を見たら兵庫県の県立高校一校あたりの予算額が全国で46位だったんです。施設が古かったり、生徒の部活の道具がすごくボロボロで、OBの皆さんの寄付とかでやりくりをしているという状況だったんです。そういったことが高校生のほうにも届いているっていうことはすごく感じました」

────その手紙を読んで、出直し選挙に出る決意を固めたと?

「若い世代の方が今回の問題を機に、結果的に県政だったり政治に関心を持たれたということはすごく大事なことだと思います。それとやはり次世代を担う若者が応援してくれているっていうことは本当に私にとってすごい励みになりました。

 確かに出直しっていうのは、私は組織も政党もまったく応援がないので大変厳しい戦いだと思いますけど、それでもやっぱり挑戦したいというふうに思いましたね」

────実際に街頭に集まった聴衆の方々に話を聞くと、初めて政治に関心を持ったという人が結構いた。いまネットを中心に、新しい支持層が徐々に増えているようだが、それについてはどう感じているか。

「そこはすごく強く感じますね。今日も何人もの高校生とか大学生、社会人の方から、『今回生まれて初めて投票に行くと思います』と。『今回の問題をきっかけに自分自身がいわゆるメディアの報道に加えて色んなものを自分で調べたりして、政治にすごく関心が高まったんです』というふうに言ってくれる若者がすごく多いなと思いました。そういった方々が調べていくうちに、私が県立大学の授業料の無償化であったり、高校の支援や不妊治療の支援、それ以外にも若い世代を応援する政策をしっかりやっているっていうことを知ったり、あとは色んな行政改革をやってきたっていうことも知りましたということもよく言われますね」

ネットで支持が広がっている!?

────そうした支持する人たちは、主にネット世代やネットユーザーの方々が多い印象だった。

「そうですね。応援していただいているアカウントが増えているっていうのはすごく感じますね。駅立ちの様子とかも皆さんアップしていますし、そこも閲覧がすごく多いですし、私自身へのXのコメントも非常に好意的なものが増えていますね」

────斎藤氏を支援する人たちには「メディア不信」を抱いている人が多いのも特徴と感じた。

「メディアの報道について少し偏っているという指摘をされる方はすごく多いですね。そういう方はメディアリテラシーと言いますか、今のXなどのSNS世代は自分で物事を調べる力がすごく長けておられる方のような感じがしますね。それで調べていくうちに、『誤解がとけました』ということを昨日も言われました。SNSというのが悪い面としてとらえられていることも多いのですが、こういった一人で戦うという局面においては非常にプラスのほうに作用する、良い面もあるとうことは私自身すごく思いました」

────何がSNSでの斎藤氏の注目度につながっていると考えられるか。

「今回お手紙をたくさんいただいたりするなかで、辞職をせずに自分が信じている道を貫かせていただいていることに対する共感を書かれている方がすごく多いんです。シングルマザーの方であったり、子育てが大変だったり、病気をされていたり、お子さんが不登校気味になっているという方がおられたり。あとは受験されている方ですね。今日もたくさんおりましたけど、結構世の中ってしんどい思いとかつらい思いをされている方がすごく多いと思います。

私もすごくしんどかったんですけど、何とか周りに支えられながらここまで一歩ずつ歩むことができて、辞職せず自分の道を貫かせていただいているんですけど、その姿に対する応援であったり、斎藤の姿を見て自分も頑張ろうと思いましたっていうような手紙がすごく多い。私も決して強い人間ではなくて、一日一日精一杯やらせていただいている」

────出直し選挙に出るにあたって、何を訴えたいか。

「これからの兵庫、日本を担う若者の支援というものを私はしっかり改革をして、財源を生み出していきたいと思っていますので、それが私の訴えたい大きなことです。

もちろん文書問題に対する反省や課題、県職員や県議会との信頼関係の再構築はやっていかなければならないが、大事なのはやはりこれまでの改革をストップせず、県民の皆さん、特に若い世代に向けた政治、行政、政策をしっかりやっていくということを訴えていきたいです」

(後編へ続く)

【プロフィール】
赤石晋一郎/ジャーナリスト。「FRIDAY」「週刊文春」記者を経て2019年よりフリーに。近著に『韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち』(小学館新書)、『完落ち 警視庁捜査一課「取調室」秘録』(文藝春秋)。『元文春記者チャンネル』をYouTubeにて配信中。