東京24区の立候補者の訴えに耳を傾ける有権者ら(17日午後4時36分、東京都八王子市で)=後藤嘉信撮影

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[24衆院選 現場から]<東京24区>

 「こんな素晴らしい政治家を(国政に)押し上げないでどうしますか」

 17日、東京都八王子市の駅前。

 自民党元政調会長の萩生田光一(61)は選挙カーの上で、前経済安全保障相の高市早苗(63)からこう持ち上げられると、聴衆に2回、頭を下げた。

 萩生田と高市はともに元首相の安倍晋三に近い保守系議員として、気脈を通じている。

 旧安倍派に所属していた萩生田は政治資金収支報告書の不記載問題で、自民の公認を得られなかった。選挙事務所は党幹部らの「必勝」のため書きで埋め尽くされるはずだったが、今回はまばらで壁の色が目立つ。

 萩生田にとって代わりによりどころになっているのが「安倍人脈」だ。

 16日には、同市の結婚式場で開かれた非公開の集会に安倍の妻・昭恵(62)を招いた。安倍をしのぶ雰囲気の中、昭恵は「『美しい国日本』を目指した主人の遺志を継いでほしい」とエールを送った。

 萩生田の危機感は強く、駅立ちや企業の朝礼回りをこなすなど、33年前に八王子市議に初当選して以来のどぶ板選挙に徹している。立憲民主党が擁立した元参院議員の有田芳生(72)が「落下傘候補」であることを念頭に、萩生田は「最後は八王子の土になる覚悟だ」と地元密着の姿勢をアピールする。

 これに対し、立民は幹部らを続々と現地入りさせ、総力戦の構えだ。

 代表で元首相の野田佳彦(67)は15日の第一声の地に八王子を選んだ。萩生田の不記載問題や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を挙げ、「裏金額の多い議員で、旧統一教会との結びつきも強い。裏の自民政治に決別しよう」と訴えた。

 かつて安倍に政権奪還を許した野田は、24区を打倒自民に向けた象徴的な選挙区とする考えだ。有田もジャーナリストとして旧統一教会問題に詳しいだけでなく、安倍の死去に伴って行われた昨年の山口4区補欠選挙に立候補するなど、因縁が深い。有田は萩生田を破ることで「安倍政治が終わる」と強調している。

 象徴区で選ばれるのは、安倍の後継者か刺客か――。有権者の判断に全国の注目が集まっている。(敬称略)

 27日投開票に向けて各候補が激戦を繰り広げる現場を追う。