イスラエル、レバノン国連部隊に砲撃・退避勧告 隊員2人負傷

写真拡大

[ベイルート/エルサレム/ローマ/国連/ヤルゼ(レバノン) 10日 ロイター] - 国連レバノン暫定軍(UNIFIL)は10日、南部ナクラにある本部の監視塔がイスラエル軍の戦車による砲撃を受け、隊員2人が負傷したと発表した。UNIFILの別の2拠点も攻撃を受けたが、そちらでは死傷者はなかった。

UNIFILは「平和維持部隊に対するいかなる意図的な攻撃も国際人道法の重大な違反だ」と批判する声明を出した。

声明によると、10日はナクラにある本部の監視塔に加え、近隣の別の拠点への砲撃で車両や通信システムに被害が出た。9日には付近を監視するカメラに「故意に発砲し、作動不能にした」としている。

イスラエル軍は声明で、自国の部隊が「UNIFIL基地に隣接した」ナクラ地域で作戦活動を行ったと説明。国連軍に対し、保護された場所に留まるよう指示した上で発砲したという。また、UNIFILとの定期的な連絡を維持していると述べた。

米ホワイトハウスは攻撃の報道を受け、深く懸念しておりイスラエルに詳細な説明を求めていると述べた。

イタリアのクロセット国防相は、国連平和維持部隊の拠点に向けた攻撃は戦争犯罪の可能性があるとして非難。イスラエル大使を呼んで説明を求める考えを明らかにした。 

国連平和維持活動部長のジャンピエール・ラクロワ氏は「レバノンにおける国連軍の安全と治安がますます危険にさらされている」と懸念を表明。UNIFILは基地内に閉じ込められ長時間シェルターに避難しており、活動は9月23日以降、事実上停止状態にあると明らかにした。 

これに先立ち、イスラエルのダノン国連大使は10日、レバノン南部に駐留するUNIFILに対し、5キロメートル北方への退避を勧告すると述べた。イスラエルとイラン支援下にあるレバノンの武装組織ヒズボラとの戦闘が激化する中、危険回避を要請するとした。

 ダノン氏はイスラエルがレバノンに留まるつもりはないとした上で「ヒズボラをイスラエル北部の国境から追放し、北部の住民7万人が帰還するために必要なことを行う」と表明した。

一方、UNIFILに隊員を派遣する50カ国は10日、1万人以上の部隊の駐留を継続することで合意した。

UNIFILのテネンティ報道官は、イスラエル軍の砲撃や退避勧告にもかかわらず、国連軍はレバノン南部にとどまる決意だと表明。今回の砲撃について「おそらく過去1年で最も深刻な事態の一つだ」と述べた。

また、監視塔やカメラ、通信機器などが攻撃を受けたことでUNIFILの監視能力が制限されたとした。国連関係筋はイスラエルの攻撃によって同地域における国際法違反の監視が不可能になるのではないかと懸念を示した。