ヤマハ発動機の日高元社長(共同、時事)

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 苦渋の決断だったに違いない。「父親として家族のケアに専念したいとの考えに至り(略)、本日付で辞任することになりました」--9月30日、ヤマハ発動機の日高祥博社長(61)が辞任を発表した。

【写真】日高社長と娘が暮らしていた自宅。娘が社長を切り付けた“現場”となった

 9月16日には、日高氏を刃物で切りつけた娘(33)が逮捕される事件が起きていた(10月4日に不起訴)。経済ジャーナリストの福田俊之氏が言う。

「2018年の社長就任時に話したんですが、彼は名古屋大出身だけど『バイクもツーリングも大好きだから、俺は4輪(トヨタ)よりこっち(ヤマハ)のほうがいいんだ』と“バイク愛”のある経営者でした。日本自動車工業会の二輪車委員長として改革を進めていく矢先の出来事で驚いています」

 日高社長を知るあるジャーナリストも、今回の辞任を残念がる。

「いわゆる大企業の社長っぽくない人ですよ。それでもバイクが大好きで、アイデアマンだった。以前、『ヤマハは昔あったバイクの復刻は出さないんですか?』と聞いたことがあります。そしたら、ヤマハの基本的な方針として古いものに対する“先祖返り”はしないと話していました。常に新しいもの、技術を追求していくと。

 家庭の報道は本当にびっくりでしかないですね。家のことと仕事のことは完全に切り分けて考えてるタイプだと思っていたから……」

 事件後、静岡県磐田市にある日高氏の自宅の近隣住民に話を聞いた。

「よく地元のテレビに出ていたし、この辺では有名な方でしたよ。半年前くらいに父娘で一緒に歩くのを見ました。仲が悪そうには見えなかったんですが……」

 家族の間に何があったのか。事件の数時間前、「ヤマハ発動機の日高祥博社長の娘」を名乗るSNSアカウントが、ある投稿をしていた。

「自身の精神疾患を明かした上で、『父に馬乗りになられ6回ビンタされた』『まだ同じ家に住んでいます』『生きていくのが辛い』などと投稿していた。娘本人のアカウントか真偽はわからないままですが、事件後に投稿が拡散され物議を醸した。日高社長は幸いにも軽傷でしたが、トラブルについては公の場で一切言及していません」(全国紙社会部記者)

 投稿の真偽やトラブルについてヤマハ発動機に問うと、「会社からコメントすることは控えさせていただきます」(広報グループ)とのことだった。

 日高氏は父親としての仕事をまっとうすることを選んだ。