今年8月、株価が大きく下落しました。新NISAで人気が高まった「株100%の投資信託」は、株価急落の影響を大きく受けました。

年明けから7月まで、相場の調子は比較的よかったと言えます。世界的に株価が上昇し、日経平均株価は7月11日に史上最高値となりました。

新NISAを活用して株100%の投資信託に投資していた人は、資産を順調に増やしていたはずです。

しかし8月頭に株価が急落すると、こうした投資信託の評価額も、当然大きく下落しました。

新NISAを機に資産運用を始めたものの、資産が大きく目減りしてショックを受けた人もいるのではないでしょうか。自分にあった投資ができているのかどうか、不安になった人もいるかもしれません。



○分散投資には種類がある

リスクを抑えて投資するには、投資対象を一つの銘柄だけに集中するのではなく、複数の銘柄に分散することが大切です。

投資信託は、数百や数千といった銘柄に分散投資できる商品です。株100%の投資信託を選んだ人の中には、「分散投資をしていたのに大きく減った」と感じた人もいるかもしれません。

実は一口に分散投資といっても、さまざまな種類があるのです。株100%の投資信託は、分散しているとはいえ中身は株だけなので、リスクが高めです。

よりリスクを抑えたければ、株以外に債券、不動産、金など、さまざまな資産に分散して投資するといいでしょう。下図のように、異なる値動きをする資産を組み合わせることで、リスクを効果的に抑えることができます。

2つの資産に分散投資をした際のリターンの変動(イメージ図)

さまざまな資産を組み合わせれば、全体として値動きのブレを小さくすることができます。結果として、リスクを抑えながら、より安定してリターンを狙えるようになるのです。

○8月の株価急落でも、資産ごとの値動きに差が出た

ロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」が投資しているETF(上場投資信託)を使って、株や債券、金、不動産の値動きを比べました(下図)。期間は、日経平均株価が史上最高値となった7月11日から、過去最大の下落幅を記録した8月5日の約1カ月としました。

左側の3つが株です。いずれも円建てで15%以上下落しました。一方で、債券や金、不動産は7〜9%台の下落にとどまりました。



ドル建てだと、株は6-7%台のマイナスですが、債券と不動産は株が大きく下がったこの期間に、プラスのリターンとなっていました。資産ごとに値動きが異なるということを、実感してもらえるのではないでしょうか。



8月の急落では、株が総じて下落しており、株100%の投資信託の下落幅が大きかったことがわかります。もし株だけでなく、ほかの資産にも分散投資をしていれば、資産全体の下落幅を抑えられたはずです。

○リスクに目を向けて投資しよう

新NISAで資産運用をするとき、大切なのは長く続けることです。10年以上の長い期間、コツコツと続けることで、大きなリターンを得ることを目指せるからです。

今回の株価急落は、新NISA開始後、初めてのことでした。驚いた人も多いと思いますが、長く投資していくのであれば、株価急落はまた起こるはずです。もっと大きな経済危機が起こる可能性もあります。

株価急落がいつ、どれだけの大きさで起こるかを正しく言い当てることは誰にもできず、避けることはできません。しかし過去の急落を振り返ると、株価がずっと下がり続けることはなく、どこかで底を打ち、急落前を超えて上昇しています。相場の荒波に負けず、長期で続けることが大切です。

相場が一時的に急落したときに、慌ててやめてしまうのは、とてももったいないことです。リスクを抑えながら着実に資産を増やしたいのであれば、株だけでなくほかの資産にも分散するのがいいでしょう。

相場の急落を乗り越えて資産運用を長く続けられるよう、自分にあった投資を今一度考えてみてはいかがでしょうか。

牛山 史朗 ウェルスナビ 執行役員 リサーチ&クオンツ 働く世代の誰もが「長期・積立・分散」の資産運用を行えるようにしたいという想いから、2015年12月にウェルスナビに入社。金融工学の専門知識を活用し、自動の資産運用サービス「WealthNavi(ウェルスナビ)」の資産運用の仕組みを開発・リードしてきた。ウェルスナビ入社以前には、三菱UFJ信託銀行で個人向けの資産運用アドバイスなどを担当した後、野村證券にてグローバルな投資戦略の開発を行った。京都大学工学部で人工知能を研究、京都大学大学院情報学研究科で金融工学を専攻。 この著者の記事一覧はこちら