現在の地球と太陽は生命にとって程よい距離に保たれていますが、今後10億年ほどで地球上の水が蒸発するほど太陽放射が強くなり、75億年以内に太陽が現在の256倍に膨張して地球を飲み込んでしまうと予想されていますが、そうはならないとする学説もあります。新たに天文学者らが、地球から4000光年離れた位置にある恒星系で、「膨張した太陽に飲み込まれなかった場合の80億年後の地球」に似た惑星を見つけたと報告しました。

An Earth-mass planet and a brown dwarf in orbit around a white dwarf | Nature Astronomy

https://www.nature.com/articles/s41550-024-02375-9



This rocky planet around a white dwarf resemb | EurekAlert!

https://www.eurekalert.org/news-releases/1059118

Astronomers spot a possible 'future Earth' - 8 billion years into its future | Live Science

https://www.livescience.com/space/exoplanets/astronomers-spot-a-possible-future-earth-8-billion-years-into-its-future

学術誌のNature Astronomyに掲載された論文では、地球から4000光年ほど離れた天の川銀河の中心付近にある「KMT-2020-BLG-0414」という恒星系について報告されています。この恒星系が発見されたのは、2020年に約2万5000光年離れたさらに遠い星の前にKMT-2020-BLG-0414が移動し、重力によって空間と光をゆがませる重力マイクロレンズ効果を起こしたことがきっかけでした。

天文学者らがKMT-2020-BLG-0414を調査したところ、中心にあるのは「KMT-2020-BLG-0414L」という太陽の約半分の質量を持つ白色矮星(わいせい)であることが判明しました。また、これを中心としてKMT-2020-BLG-0414Lbという地球の約2倍の質量を持つ惑星と、KMT-2020-BLG-0414Lcという木星の約17倍の質量を持つ褐色矮星が公転していることがわかりました。

太陽のように中性子星になるほど重くはない恒星は、やがて膨張して赤色巨星となり、重力が弱まった外層のガスが流出して白色矮星になります。白色矮星は「恒星の残骸」とも呼ばれる終末期の形態であり、太陽もやがて白色矮星になると予想されています。



研究チームは、白色矮星であるKMT-2020-BLG-0414Lの周囲を公転している地球型惑星のKMT-2020-BLG-0414Lbは、「太陽が地球に飲み込まれなかった場合の80億年後の地球」に似ている可能性があると主張しています。

太陽は約10億年後に膨張を始め、地球の公転軌道よりも大きい赤色巨星となって水星や金星を飲み込むと予想されています。しかし、60億年以内に膨張した太陽が地球を飲み込むのか、それとも太陽の質量減少によって公転軌道が遠くなった地球が太陽に飲み込まれるのを免れるのかは、科学者の間でもコンセンサスが得られていないとのこと。

論文の筆頭著者でありカリフォルニア大学サンディエゴ校の天文学者のケミング・チャン氏は、「いずれにせよ、地球が居住可能なのは今後10億年ほどです。赤色巨星に飲み込まれるリスクが現実となるよりずっと前に、地球の海は温室効果の暴走によって蒸発してしまうでしょう」と述べています。

もし地球が太陽に飲み込まれずに済んだ場合、太陽が白色矮星になってからも、赤色巨星だったころに遠くなった公転軌道は変わらないとみられます。KMT-2020-BLG-0414Lbの公転軌道は地球と太陽の平均距離(天文単位)の約2倍であり、地球が太陽に飲み込まれなかった場合の軌道も同じくらいになると考えられています。



たとえ太陽が赤色巨星となって地球に住めなくなったとしても、人類は太陽系の外縁部に避難所を見つけるかもしれません。特に木星の衛星であるエウロパ・カリスト・ガニメデ、あるいは土星の衛星であるエンケラドゥスなどは、赤色巨星の膨張に伴って凍った表面が融解し、海を持つ可能性があります。

チャン氏は、「太陽が赤色巨星になると、ハビタブルゾーンは木星と土星の軌道の周りに移動し、これらの衛星の多くが海洋惑星になります。その場合、人類はそこに移住できると思います」と述べました。