これで十分…ジムに通えない「庶民」でもできる体力向上の「意外な方法」

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放っておくと筋肉は年齢と共に衰え、そのことが原因で免疫力が下がったり、生活習慣病を引き起こしたり、心の健康や、脳の認知機能にまで影響を及ぼすと言われています。とはいえ、筋肉を衰えさせてはいけないとわかってはいても、運動をコンスタントに取り入れるのはなかなか難しい……。

そこでウォーキングの提案です。ウォーキングなら家の周りを歩いてもいいし、どこかに行くついでに1駅分歩くこともできるし、すぐにでも始められます。ただ、なんとなく歩くだけでは体力アップはむずかしいことも事実です。著者は科学的に「どれくらいの速度で」「どれくらいの頻度で」「どれくらいの時間行えば」「どんな効果が得られるのか」を徹底的に研究し明確にしました。その根拠となるのは、10年余りで7000人以上のデータを取った結果と分析。それがわかりやすく示されているので、なぜどのように体にいいのか、納得できます。そのようにして確立した、効果的で継続しやすい方法「インターバル速歩」を紹介。ややきついと感じる早歩きと、ゆっくり歩きを一定間隔で繰り返すだけのシンプルな方法です。

*本記事は『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。

体力向上はウォーキングで十分だった!

先に述べたように、いわゆるジムに行って体力測定を行い、それに基づいて持久力・筋力トレーニングプログラムを作成し、それを実施さえすれば、効果が得られることは科学的に実証されている。

しかし、そのためには週に3〜4日ジムに通い、自分のトレーニング実績をカルテに記録し、さらに定期的にトレーニング効果を判定し、それに基づいて運動プログラムを改訂していかなければならない。それらをこなすには本人だけでは困難で、専門のトレーナーの指導を受ける必要がある。そして、これをこなせるトレーナーは、自己投資をして大学や専門学校でそれなりの教育を受けているので、それを考慮した人件費を支払わなければならない。その結果、ジムに通うための会費は先に述べたように半端なものではなくなってしまう。

もっと「庶民」でも、気楽にできる体力向上のための運動プログラムはないか。私たちは、この課題を解決すべく過去10年余り研究を行い、マシンを使わない「インターバル速歩トレーニング」でも十分な効果が得られることを明らかにした。この方法なら、たとえば通勤や買い物の行き帰りでもできるし、特別なマシンやウェアを準備する必要もない、極めて簡単な運動方法なのだ。インターバル速歩トレーニングは、最高酸素消費量の70%以上の速歩と40%以下のゆっくり歩きを3分間ずつ繰り返す、という簡単なもので、誰でも簡単にできる。詳しい「やり方」は後ほど示す。また「開発の経緯」と「詳細」は【巻末付録2〜5】(書籍に掲載)を参考にしていただくことにして、ここでは、その体力向上効果について述べる。

私たちは、中高年者246名を対照群、1日1万歩群、インターバル速歩群の3群に分け、それぞれ5ヵ月間の介入を行った。対照群は、従来の生活を続けていただく、1日1万歩群は、週4日以上、1日1万歩を目標に歩いてもらう、インターバル速歩群は、週4日以上、1日30分以上を目標にインターバル速歩を実施してもらうことにした。

5ヵ月間の介入期間中、1日1万歩群は平均で週4・5日、1日の歩行時間64分で、1万135歩の実施となった。一方、インターバル速歩群は平均で週4・5日、1日の歩行時間52分、そのうち早歩き33分、ゆっくり歩き19分の実施となった。ちなみに、インターバル速歩群の実施日1日あたりの平均歩数は8520歩で、1日1万歩群の84%にすぎなかった。

図2―1に各群のトレーニング後の筋力・持久力変化を示す。インターバル速歩群では、膝伸展筋力(大腿の前の筋力)が13%、膝屈曲筋力(大腿の後ろの筋力)が17%、最高酸素消費量が10%向上した。ちょうど、体力年齢で10歳若返ったことになる。一方、1日1万歩群では、ほとんど体力は向上せず、対照群と変わらなかった。その理由は、インターバル速歩群の早歩きは、個人の最高酸素消費量の70%以上の運動強度になるが、1日1万歩群は最高酸素消費量の40%以下に相当する運動強度でしか歩かないからである。すなわち、乳酸が出るようなややきついと感じる運動をして初めて体力が向上することが改めて確認できた。

インターバル速歩トレーニングは、マシンを必要とせず、大勢の中高年者を対象に、体力向上効果に伴う生活習慣病など加齢に伴う疾患の症状改善効果も一度に明らかにすることができる。次にそれを紹介しよう。

中高年の生活習慣病を「劇的に改善」する「すごい歩き方」の「衝撃の6つの効果」