藤木直人インタビュー~CSホームドラマチャンネルで「音楽デビュー25周年記念 藤木直人LIVEセレクション」を放送
俳優・アーティストとして活躍中の藤木直人。今年(2024年)は音楽活動25周年を迎え、7年ぶりとなるライブハウスツアーも成功させた。ホームドラマチャンネルでは、そのツアーの中から52歳のバースデーを迎えた7月の東京公演の模様を初放送。当日のステージを振り返ってもらいつつ、セットリストに込めた思い、さらには「音楽デビュー25周年記念 藤木直人LIVEセレクション」と題した、5か月に渡る過去のライブの連続放送について、藤木に思い出を語ってもらった。
ーー今年7月に開催された豊洲PITでの「Naohito Fujiki Live Tour ver14.0~BE FREE~」が早くも放送されます。まずはツアーを終えた今の気持ちをお聞かせください。
とりあえずホッとしました。また、今回のツアーはすごく楽しかったので、終わってしまう寂しさもありました。ライブハウスツアー自体が7年ぶりだったこともあり、バンドのメンバーとも楽しみながら、和気あいあいとした旅ができましたし、お客さんとも狭い空間ならではの盛り上がりがあったりして。本当に気がついたらあっという間に終わっていたという感じでしたね。
ーー今年音楽活動25周年を迎え、その記念シングルとしてリリースされたのが、布袋寅泰さんの書き下ろしによる『BE FREE』でした。ツアータイトルにもなっていますが、この楽曲が生まれた経緯を教えていただけますか?
2017年に開催した前回のライブハウスツアーも約16年ぶりですごく久々でしたので、その時は初心を取り戻す意味も込めて、ツアータイトルを「原点回帰」にしました。今回も同様に自分にとっての音楽の原点を考えた時、やはり高校生の時に衝撃を受けたBOØWYであり、布袋寅泰さんだなと思い、それで最初はBOØWYの世界観に寄せた楽曲を作ろうと考えていたんです。ただ、ディレクターと話しをしていく中で、「布袋さんに楽曲提供をお願いしてみませんか?」という案が出て。実はこれまでにも何度かオファーをさせてもらったことがあったのですが、なかなかタイミングが合わず実現しなくて。きっと今回も難しいかなと思っていたらまさかのOKをいただいたんです。
ーー思わぬ展開ですね。そこから具体的な話し合いを?
はい。僕のほうから楽曲の方向性であったり、今回のツアーにかける思いなどをお伝えしました。何かとコンプライアンスが叫ばれる時代ですが、はたしてそれがすべていいことなのかという思いが僕の中にあって。また、僕自身が52歳という年齢を迎える今、意訳ではあるのですが、“ごじゅうに=ご自由に”から、“BE FREE”という言葉を曲やツアーのコンセプトにしたいといったこともお伝えし、楽曲に盛り込んでいただきました。
ーーセットリストについては、やはり25周年を意識されたのでしょうか。
それはなかったです。僕の頭の中からすっかり抜け落ちていて、布袋さんに「25周年のお祝いに、僕から曲をプレゼントするよ」と言われてアニバーサリーなんだと気付いたくらいでした(笑)。セットリストで意識したのはバンドだけでみせるっていうことぐらいですね。これまでは、新しくツアーをするたびに、ホーンセクションを加えたり、ダンサーに入ってもらったりと、いろんな要素を演出面に取り入れてきました。でも今回はシンプルに、純粋にバンドだけでやろうという狙いがあったので、セットリストはそこを前提に、ライブの流れやファンが楽しみにしている曲を盛り込んで構成していきました。また、今回は『BE FREE』を含めた新曲が3曲あって、BOØWYの『JUSTY』もカバーさせてもらったので、既存曲と新曲のバランスがよかったのではないかと思います。
ーー今お話しにあったBOØWYのカバー『JUSTY』は、『BE FREE』と並んで披露されていました。
『JUSTY』は以前、『BOØWY Tribute』というアルバムに参加させてもらった時に歌った曲で、これまでなかなか自分のライブで披露する機会がなかったんです。今回は同じく布袋さんが手掛けてくださった『BE FREE』もあったので、“歌うならここしかない!”と(笑)。『BOØWY Tribute』でカバーしたものにはシライシ紗トリさんのアレンジが加わっていますが、僕が17歳の時に必死になってコピーした曲のフレーズを、こうして35年経った今、自分のライブのステージで弾くことができた。そのことに僕自身も興奮しました。だって、高校時代の自分に聞かせても、絶対に信じてもらえない話ですからね。「お前、何言ってんだ!?」って(笑)。
(撮影:宮田浩史)
ーーそして、ライブ終盤には「パーフェクトワールド」も披露。会場が一つになってシンガロングする光景が印象的でした。
コロナ禍以降、しばらくみんなで声を出して一緒に歌うということができませんでした。この「パーフェクトワールド」はファンにとっても思い入れのある楽曲だと思いますし、だからこそ、客席の声出しが解禁になるまでこの曲は絶対に歌わないと決めていたんです。そうしたら、客席で感極まって涙を流してるファンもいて。そうしたシーンを作ることができて本当によかったなと、心から思いました。
ーー今回のホームドラマチャンネルの「藤木直人LIVEセレクション」では、これまでの音楽活動における節目とも言える過去のライブ映像も放送いたします。なかでも、2006年に初めて日本武道館で開催したライブ(12月放送予定)は思い入れも強いのではないでしょうか?
僕は10代の頃、バンドスコアを買って、家でコピーをして楽しんでいたタイプでした。ですから、ライブにほとんど行ったことがなく、実は武道館にもそれほど思い入れがなかったです(笑)。けど、あの場所でライブができたという経験はかけがえのないものでしたし、すごく嬉しかったです。それに、当時は音楽活動を始めてからようやく自分の中でやりたいことが見えてきた時期で、演出やセットリストなど、僕自身が決めていこうとしていたタイミングでもありました。そうした新たな体制になって割とすぐのライブでしたので、その意味でも強く思い出に残っていますね。
ーーステージから見た景色はいかがでしたか?
1万人ほど集客できる大きな会場なのに意外と客席が近く、お客さんの表情もよく見えるというのはすごく新鮮でした。
ーーBOØWYの氷室京介さんが過去に「ライヴハウス武道館へようこそ」という名言を残されていますし、やはり特別な空間なのかもしれませんね。
有名な言葉ですよね。僕も真似しようかなと思ったのですが、やめておきました(笑)。あの会場を「ライブハウス」と言い切れるのはやはり氷室さんだけです。
ーーそのほか、2022年に開催した50歳のアニバーサリーライブ『Naohito Fujiki Live Tour ver13.0~L-fifty~』も来年2月に放送予定です。この時のステージではダンスも披露されていて驚きました。
まさにそこが狙いでもあって、ダンスをまったくやったことがなかった僕がライブで踊ったらみんな驚くだろうなと。あのライブではピアノの弾き語りもしていますが、ピアノだって元々は全然弾いたことがない。でも、だからこそ皆さんに楽しんでもらいたいなと思って挑戦することにしました。ただ、そうしたサプライズ的なことを一度でもやってしまうと、次にする時に新鮮さがなくなってしまう。なので、常に“今度はどんなことでびっくりさせられるかな”ということを考えるようにしています。皆さんの期待や予想を、いい意味で裏切っていきたい。そこがライブをする僕の楽しさにも繋がっているんです。
(撮影:宮田浩史)
【プロフィール】藤木直人/Naohito Fujiki
1972年7月19日生まれ、千葉県出身。1995年、映画『花より男子』花沢類役でデビュー。その後、ドラマ『ナースのお仕事』シリーズや『ホタルノヒカリ』シリーズなど多くの話題作に出演。2008年からは舞台にも挑戦し、蜷川幸雄演出の『海辺のカフカ』のほか、同氏最後の演出作『尺には尺を』では主演を務めた。俳優業と並行して音楽活動も行い、1999年にメジャーデビュー。2017年には香港、台湾、上海を回るワールドツアーも行った。10月からは主演ドラマ『D&D ~医者と刑事の捜査線~』(テレビ東京系)が放送開始。
文・取材:倉田モトキ
撮影:宮田浩史
ヘアメイク:大渡八千代
スタイリスト:古田ひろひこ(chelsea films)