「積み上げたものは無駄じゃなかった」スピッツのレギュラーイベント『ロックロックこんにちは!Ver.26』2日目ーー憧れのJUN SKY WALKER(S)、期待を寄せる秋山黄色、サバシスターが個性を爆発
『ロックロックこんにちは!Ver.26 -tsumu-』2022.9.5(TSU)大阪・Zepp Namba(OSAKA)
9月4日・5日、Zepp Namba(OSAKA)で『ロックロックこんにちは!Ver.26 -tsumu-』が開催された。2日目は、スピッツはもちろん、期待の若手・サバシスターと秋山黄色、さらにJUN SKY WALKER(S)の4組がお目見え。それぞれに異なる個性を爆発させた一日の模様をレポートしよう。
『ロックロック』おなじみ、FM802 DJの中島ヒロト&加藤真樹子をナビゲーターに迎え、26回目という数字から「ツム」=バランスタワーを据えたスタジオからゆるりとしたトークを展開していく冒頭。早速一番手のアーティストをコールする。
サバシスター
サバシスター
ビッケブランカ「Ca Va?」のSEを合図に、1曲目「ナイスなガール」から高純度のアンサンブルを仕掛けるサバシスターがお出ましに! じわじわ体温の上昇を感じさせながら、「よしよしマシーン」では、緩めのリズムにユーモアたっぷりの言葉を乗せ、見る間に会場全体をサバシスターワールドへと巻き込んでいく。「ライブハウスで会える皆さんのこと、メンバーのこと、仲間のことを歌った曲です」となち(Vo.Gt、以下同)が導いた「ハイエースナンバー」では、泥臭いバンドワゴンの旅路をキラキラした表情で歌い、何ともまばゆい光景を描いていく。
「(昨年の、スピッツの仙台での恒例イベント『ロックのほそ道』に続き)2回も呼んでいただけて光栄です。しかもトップバッターで。任されたその意味、しっかり理解して最高に『ロックロック』していくのでよろしく!」とギアをマックスに入れ、「覚悟を決めろ!」をぶっ放す! 今宵イチのソリッドな音像からは、ライブバンドとしての確たるアティチュードがにじみ、ひときわポップネスな「22」へ。GK(Dr.Cho)とサポートのサトウコウヘイ(Ba)のエネルギッシュなリズムが先導し、その勢いは増すばかり。また、今年頭から田村明浩(Ba)のアンプを借りているというるみなす(Gt.Cho)は、この日も「いい音出てますか?」と問い掛け、フロアも大歓声で応答する。
サバシスター
終盤にはすっかりホームと化し、「タイムセール逃してくれ」からラストは「サバシスター's THEME」で大ジャンプをかましフィナーレへ! どんな世代もキッズ化させる、エモーションたっぷりのステージングで圧倒したサバシスターだった。
秋山黄色
秋山黄色
耳をつんざくような轟音ギターで開幕を告げたのは、今年唯一のソロアクトとなる秋山黄色だ。ド頭の「アイデンティティ」から、デジタリックな中にもドクドク血の通ったサウンドを喰らわせ、初見の人々をもお構いなしに吸い寄せていく。イントロから歓喜の声が湧いた「Caffeine」では、床に転がり回ってギターを弾き倒すなど、一曲一曲、いや一音一音に魂を込めたその姿勢には、『ロックロック』への大きなリスペクトを感じずにはいられない。
昨年開催した東京でのスピッツの恒例イベント『豊洲サンセット』にも出演していた秋山は、サバシスター同様スピッツと再びの巡り合わせに。この日の出番前には、草野マサムネ(Vo.Gt)から名前の理由を尋ねられたというエピソードも。小学生時代、友達に「自分は忍者だ、そして黄色が苦手なのだ」という「設定」を語っていたことが転じ、黄色と呼ばれるようになった……という草野へのアンサー後、「そういう虚言ばかり言ってたんですけど(笑)、いつか音楽で食っていきたいなとか、スピッツの弾き語りを練習してて、いつか本人の前でやりてーなとか言ってて……皆様のおかげでかなえることができました!」と、名前のいきさつからは信じられないくらい素敵な着地点をキメて(笑)、新曲「Lonely cocoa」を奏でる秋山。高潔なボーカルであっという間に場を支配するや、「やさぐれカイドー」では聴く者にふつふつとしたエナジーを与えていく。
「部屋の隅っこで弾いていたギターを炸裂させますから、存分に未来へ期待して帰ってください!」と咆哮し、脳内に直接注入するかごとく爆音を放ったその瞬間、彼のステージでしか得られない多幸感をまざまざと知らしめる。ラスト「ソニックムーブ」までたった5曲。圧倒的な「主人公感」で魅せた秋山黄色に満場の拍手が送られていた。
JUN SKY WALKER(S)
JUN SKY WALKER(S)
初っぱなの「MY GENERATION」から伸びやかな歌声でZepp Namba(OSAKA)を満たしたのはJUN SKY WALKER(S)! 30年越えのキャリアは、もはやレジェンドと呼ぶにふさわしい。その一方、何度見ても初めて耳にしたときの衝動をリバイバルさせるフレッシュさは、今宵も健在だ。最新曲「そばにいるから」では、一人残らずシンガロングする絶景が生まれ、かつてない一体感に包まれていく。全員で声を合わせるハピネスを全身に浴び、続いてはスピッツの「楓」をカバーするサプライズも! 宮田和弥(Vo)の歌唱は空にまで届きそうなほどドラマチックで清廉だ。「草野くんが好きだって言ってくれたナンバーを!」(宮田、以下同)と投げ掛けた「だけど一人じゃいられない」でも、言葉の豪速球ストレートに、幾度心のクライマックスを迎えたことだろう。
JUN SKY WALKER(S)
「昭和に生まれ、平成を生き永らえ、令和で絶滅危惧種・トキのように生き残っております(笑)。ところで今日動くジュンスカを初めて見た人は? (チラホラと手が上がり)お~。コレは梅田や心斎橋でオオクワガタを見つけたようなものです。こんな革ジャン着てるヤツなんて……でもあのドクロ(『ロックロック』のロゴ)には一番合ってると思いませんか?」
軽妙な話術に観客は何度も沸きながら、季節を先取りしての「白いクリスマス」を披露する。人肌の温度を宿したメロディと情景の浮かぶ言葉たち……オーディエンスは魅入られたかのようにステージへとくぎ付けだ。宝物のようなロッカバラードを挟み、ここからはノンストップ! 森純太(Gt)とサポートの市川勝也(Ba)がそろって客席最前線まであおりにあおる「START」、たくさんの拳が突き上がった「歩いていこう」では、ぶ厚いシンガロングが大きく広がっていく。そんな怒濤のエンディングを飾るのはトドメの「すてきな夜空」! パンキッシュに攻め立てる小林雅之(Dr)のドラミングがビリビリ肌を震わせ、最後の最後まで共に音楽を共有できる場=ライブがもたらす至福を教えてくれた。そんな永遠のロックヒーロー・JUN SKY WALKER(S)を経て、いよいよオーラスへ!
スピッツ
スピッツ
2日間にわたるお祭りもいよいよ残すところあと一組。粼山龍男(Dr)が打ち鳴らす転がるようなリズムをトリガーに、「たまご」からスピッツの時間が始まる。会場中に響きわたる特大クラップが高揚感を膨らませる「ハチミツ」、続く「恋する凡人」では心ごとわしづかむグッドメロディの洪水で、メンバーのシルエットをその実像よりもずっとずっと眼前に感じる。サポートを務めるクジヒロコ(Key)の鍵盤も実に軽やかで、『ロックロック』に欠かせないお楽しみの一つ、カバー曲の披露では、Vaundyの「怪獣の花唄」をお見舞いする。草野のイノセントな歌声との親和性はすさまじく、後のMCで「段々ノってきて、今日がピークかもしれない!」(草野)と評したのには激しく同意!
「ロックロック?」とのコールに、瞬時に「こんにちは!」と返すオーディエンスとのあうんの呼吸を経て、今宵の出演者への賛辞を述べる草野。
「サバシスターは、一年前に『ロックのほそ道』へ出てくれたときから、さらにかっこよくなったよね。伸び代しかない! これからが楽しみですね。そして秋山黄色くん。俺の中ですごく好きな名前なのよ。ほら、嵐山の紅葉みたいで。あやかって「草野緑色」なんて名前にするのもいいな(笑)。今日もギターロックの未来を感じさせてくれました。素晴らしい!」
そう、若手の活躍をまぶしそうに語る彼らを少年に戻したのは、何と言ってもJUN SKY WALKER(S)。『ロックロック』第1回の際は、出演者全員で「MY GENERATION」を歌った過去があるほか、もっとさかのぼれば直接デモテープを渡したこともあるほど、学生時代からのスターだったという。
「楽屋でもすごかったよ。もう、みんな大合唱!」(三輪テツヤ/Gt)
「同じステージに立っているのが本当に感慨深いです」(草野)と、キラキラ語る姿が何とも印象的だ。そんな『ロックロック』ならではの醍醐味を感じさせつつ、「群青」では一層加速度を増し、きらめく音階での「魔法のコトバ」では、幸せそうに揺れる客席に胸が温かくなる。かと思えば、三輪の色鮮やかなプレイが映える「ローテク・ロマンティカ」では、一筋縄ではいかないビートで場を先導。「今後も『ロックロック』を続けていけるようにアンチエイジング!」(草野)とおどけ、「美しい鰭」では天まで届きそうなハイトーンボイスでフロアを掌握し、「8823」へとつながる開放感たるや! 時にシンバルを叩き、また時にドラムスティックで弦を弾く田村明浩(Ba)のいたずらな表情からも目が離せない。フォークロア感ある「野生のポルカ」で締めるも宴はまだまだと、熱狂のアンコールに応える彼ら。
「26回目、積み上げたものは無駄じゃなかったなと。また来年、会いましょう!」(田村)
「帰り道は、<こんな綺麗な夜空に>……と思いながらお家へ帰ってくださいね」(クジ)
「最高です! ここにいる皆さん全員で「MY GENERATION」ということで!」(粼山)
「まだ誰にも言ってないことを今から言うから。ここだけの秘密だぜ。……実はね俺、忍者!」(三輪)
「皆さんでリラックスした雰囲気をつくってくれて。全員、生まれてきてくれてありがとうございます! また<こんな綺麗な夜空>の下で会えることができますよう祈りたいと思います」(草野)
来年の再会を約束し、1995年発表の「ルナルナ」と最新作からの「めぐりめぐって」というタイムマシンのように時代を行き交う楽曲で、今年の『ロックロックこんにちは!Ver.26 -tsumu-』は大団円を迎えた。
なお、この日のライブ写真は『ロックロックこんにちは!Ver.26 -tsumu- デジタルパンフレット(NFT)』でフォトレポートとして掲載される。デジタルパンフレットでしか見られないソロカットや、リハーサル風景、またトークの模様もお届け予定なので、ぜひチェックしてほしい。
取材・文=後藤愛 写真提供=『ロックロックこんにちは!』(撮影:河上良/Hoshina Ogawa)
初日のレポートはこちら!
スピッツ恒例『ロックロックこんにちは!Ver.26』初日レポート――GOING UNDER GROUND、Homecomings、SUPER BEAVERがつないだ憧れと刺激のバトン「また今日を糧に面白いスピッツをお見せできたら」