Galileo Galilei

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人生の喜びの大半は他者と深い部分で共鳴し、さらにまだ世の中にないものを生み出すことじゃないだろうか。尾崎雄貴は前作『Bee and The Whales』のツアー中、すでに異なる2枚のアルバムを同時にリリースすると言い切っていた。しかし内実はすでに曲があったからではなく、始動後のGalileo Galileiならいくらでも曲を書けるという確信があったから切れた啖呵だったのだ。そんな前向きなアグレッシヴさが投影された2作のアルバム『MANSTER』と『MANTRAL』。人間性の表面と内側をテーマに分けられた2作はサウンドやアレンジの方向性もかなり明確に分かれているが、トータルの聴後感は彼らの創作の冒険に対する憧憬だった。わんわんスタジオとリモートで繋ぎ、メンバー全員に大いに話してもらった。

――まず、Galileo Galileiが始動した頃に比べて、制作時のモードに変化はありましたか?

岩井郁人:(岡崎)真輝君がGalileo Galileiに入って、真輝君がいる状態で『Bee and The Whales』を作った時にすごく手応えがあって。それはいい楽曲を書けるっていう手応えもそうだし、このメンバーだったらどこまでも行けるんじゃないかっていうある種の無敵感を『Bee and The Whales』を作ったことで得たんです。だからこそ雄貴がアルバムを2枚作りますっていう啖呵を切ったんだと思うし。実際、同時に2枚作ってみて、真輝君が入ったこの4人のGalileo Galileiっていうのがやっぱり無敵なんだなっていうのは改めて思いました。曲を書くこともそうだし、人間としての関係性が今まで以上に……例えばみんなで野球したり(笑)、真輝君がけん玉という文化をGalileo Galileiに持ってきたり、お互いの趣味とか日常が混ざり合うのがすごく楽しくて。毎日青春してるなって思ってます。

――当事者である岡崎さんはいかがですか?

岡崎真輝:メンバーひとりひとりに思う印象は、『Bee and The Whales』の時と今と全然変わってなくて。ただ、その中で一緒に過ごす時間も増えて、より深くメンバーのことを知ることができる時間が自ずと増えてきて。メンバーと触れ合って濃い時間を過ごしていることが、今回の2作品のアルバムには音としても出てるなっていうのと、曲としてもそれが反映されていることは個人的に感じています。

――生活そのものっていう感じなんでしょうね。

岡崎:そうですね。家族以上に長い時間を過ごしているなと思っていて、その中で制作している時もあれば、制作の合間にキャッチボールをやったり、一緒にバッティングセンターに行ったり。北海道にはエスコンフィールド(日本ハムファイターズの本拠地)があるんですけど、その試合にメンバーと行ったりとか、そういうプライベートな時間も一緒に過ごすことが多かったなと思います。

――和樹さんはいかがですか?

尾崎和樹:1枚アルバム(『Bee and The Whales』)を作ったことによって、もう家族だなと思っていて。真輝君と初めてアルバムを作って、なんでも言い合えるようになって、「一緒にこういうことやろうよ」っていろいろと挑戦ができるし。その関係性を築けたことが、今回のアルバムができあがったことに一番大きく反映されるんじゃないかなと思います。

――雄貴さんはどうですか?

尾崎雄貴:Galileo Galileiとしては、今までよりすごく心がオープンだなっていう感じはしていて。これまでは、周りからの影響を遮断する術をデビューしてから磨き上げすぎて、結構クローズドな感じになってたと思うんですけど、今の自分はとてもオープンな感じだなって作りながらも思ってたし、実際オープンな状態で楽曲を作ったりみんなと過ごしたり、そして実際ライブをやってGalileo Galileiのファン人たちと接することで、そのオープンなエネルギーっていうのが広がっていって。“やりたい”と思ったことは、自分たちで無理やり頑張って実現させてきたバンドなんですけど、最近は周りから実現する・周りからチャンスが降ってくるっていうようなことが何回かあって。それはやっぱり自分たちがオープンになっているからなのかなと思ったんです。そこが始動してからの大きな変化だなって思います。

Galileo Galilei

――具体的には映画の公開であったり、ポーター・ロビンソンとのコラボ、日本ハムファイターズの試合でのライブなど、いろんな方向に間口が拡がってますね。

雄貴:今回のアルバムにも入ってる「SPIN!」を作った日に、「これって球団のプレイしてる映像とかに合うよね」っていう話をしてたんですよ。それこそ僕たちも野球をやり始めてて、「スポーツの中での回転の動きってすごい大事だよね」っていう話をしたところだったので、そこから曲を書いて。で、「ファイターズガール(日本ハムファイターズのチアリーディングチーム)が踊ってくれたら最高だよね」って話してたんですよ。そしたら、偶然にもこのタイミングでオファーをもらって、エスコンでライブをさせてもらったり、実際にファイターズガールが踊ってくれたりと、希望が叶っていって。
ポーター君もそうですね。僕たちからポーター君にアプローチしたんじゃなくて、ポーター君からきてくれたんですよ。僕たちがデビューして上京した当時、自分たちの中でのアイデンティティを模索してた頃に「洋楽だ洋楽だ」って言って、洋楽を追っかけてた側のバンドだったんです。「海外に行ってしまおうか」なんて話までしてたり。それぐらい洋楽から影響を受けてるんだっていうのをある種誇張して、そうなりたいと思っていたんです。あの頃の自分たちに伝えてあげたいですね、ミュージシャンとして活躍してる人が、海の向こうからGalileo Galileiにラブコールを送ってくれるっていう現実を。そういったことがちらほら起こり始めていて。あと、PEOPLE1っていうアーティストがいるんですけど、MCでGalileo Galileiが好きって話してくれて、稚内にも実際に行ってくれたみたいで。こういう話を聴いて、僕らが蒔いてきた種が本当に実ってる時期だなと実感したし、その時期と僕らが今オープンに生きていこうかなって思ってる時期が重なっているのが、Galileo Galileiとしてはいいなあっていう。今、バンドもそうですし、僕らの周りもすごく風通しの良い状態だなって。それはいわゆるレーベルから離れたことは結構大きいなと思いますね。

Galileo Galilei

――本当に作りたいから作った2枚というようにしか思えないですもんね。

雄貴:ほんとにそう。一回のリリースや一個のムーブに力を注いで、そこからいわゆる“バズる”ですよね。僕はバズるっていうことを信用してないし、求めてないし、ないだろうと思っているので、だからこそ14曲+14曲の28曲を長い目で普通に聴いてくれりゃいいなと思っていて。世に残す作品をみんなで作って、みんなの音楽に対しての情熱とか探究心っていうのを形にして、僕らの心を乗せてそれが世に残るだけでいい。それって種蒔きをしてるのと一緒で、それがいずれ何かしらの形で実ってくれたらいいんだっていう生き方が、僕らの人格に一番合ってると思うので、呼び込むというか“こっちおいでよ”のスタンスで今やっています。

――自分の体験としても、10代の時にちょっと難しそうな洋楽のアルバムを買ってきて、1~2ヶ月かけて聴くような体験に近いんですよね。すぐにはわからないかもしれないんですけど、わかるタイミングがくる曲があったり。そういう体験はずっと残って行くし、そういうレコードだと思います。

雄貴:ありがとうございます。音楽を娯楽として取り入れて、気持ちいいな、いい歌詞だなっていうのも、それは全然いいと思うんですけど、やっぱり音楽っていう芸術を探求することで、自分自身っていうひとりの人間としても自分を探求していくっていうことが僕らにとってすごく重要なプロセスなんです。その喜びを僕らの音楽を通じて知ってくれた人たちっていうのが、今ちょくちょくアーティスト側にも出てきてくれてるっていうことにすごく喜びを感じてて。売れることじゃなくて、音楽に対してもがいてる自分たちっていうのを僕らはずっと見せ続けているので。それが勇気を与えたり、「音楽という芸術を作ることに対して、こんなに熱意を持つってすごく楽しそうだな」と思ってくれてミュージシャンになった子もいるんだろうなって、今フェスの現場などで声をかけられて思うんです。そういう風にずっとやり続けていきたいなと思いますね。

――これまでの楽曲も休止期間関係なく作ってらっしゃる本人にしてみたらあまり関係ないのかもしれないんですけど、リスナーとしては前作までとこの1年っていう感覚の違いはありました。

雄貴:Galileo Galileiって、プロでやってるってところでの数字を出さなきゃいけない、でも“いい音楽を作りたい”っていうところを守るために戦い続けて、一番戦ってるときに武道館で終了したと思っていて。その後始めたBBHFっていうのは、また一から上って行かなきゃいけないっていうところで勝負をずっとしていたんですけど……Galileo Galileiは当時の“いい音楽を作る”ことを守った上で音楽業界に残っていくところで戦っていた姿のまま聖域として僕らの中で残ってたんです。それを今再始動してみて、当時のこのままのスタンスでいいんだなと思えて。例えが変なんですけど、RPGのゲームで“強くてニューゲーム”っていうのがあるんですよ。一回クリアした後の強い主人公たちのままもう一度プレイできるみたいな、再始動した時の僕の感覚が“強くてニューゲーム”で。いろいろ学んでつらい思いをした上で一番純粋な部分に立ち返って、もう一度守ってみようよ、戦ってみようぜっていう、土俵に上がれたなと思っていて。それを作ってくれたのはずっと待っててくれたファンだし、僕らの音楽に少しでも心が震えてくれたたくさんの人たちのおかげだなと思っているので、すべてが今うまく回ってるっていうよりは、シンプルに前に進んでいってるなって思います。

Galileo Galilei

――今回、リスナーの皆さんは『MANTRAL』から聴くのと『MANSTER』から聴くのとで衝撃度が違いそうですね。

雄貴:まさにそれを狙っていて。それこそ作り始めたタイミングから、せっかく2枚フルで出すんだったら“こっちは嫌いだけどこっちは好き”ぐらいに思ってもらおうよって思ったので、そういう感想が聞けると楽しいなと思います。僕ら自身も日によって思いが結構変わるので、聴いてくれるみなさんに「両方を好きにならなくていいよ」って言ってあげたいです。

――最初どっちから聴こうかなって思いますし。

雄貴:おすすめは『MANSTER』から聴くことですね。

――(笑)。ちょっと衝撃的だと思います。ところで『MANSTER』にも『MANTRAL』にもMANがついていて、これは人というより男性という意味なのかなと。

雄貴:昨今それを言うのはちょっとあれかもしれないですけど……男性じゃない性別の人たちのことは全く関係なく、単純に自分たちが男性ですっていうことを受け入れて、それについてしっかりと考え始めていて。それは「男ってさ、女ってさ」っていうことではなく、少し前から会話に出てくるようになったのは父親の話とか、「お父さんってこうだったよね」みたいな。年齢的にもそうですし、自分たちが今父親になったりしてるっていうのもあると思うんですけど。今まで音楽のことばっかり考えてたんですけど、音楽と自分たちの人生について考えるっていうところが、やっとちゃんと重なるようになったのかなと思います。だからこそ、改めて自分たちの今までの人生とかこれからの人生、自分の愛する人の人生、人の人生にすごく興味を持ってるんだろうなと思っています。

――では、ここからはちょっと具体的に。自分にとって重要だったり、こだわりのある曲を各々挙げていただけますか。

岡崎:自分は『MANTRAL』の「オフィーリア」ですね。この曲はもともとwarbearの『Patch』っていうアルバムに収録されてる曲なんです。そのアルバムを携えてwarbearでライブをやっていたんですけど、そこがGalileo Galilei始動を発表したタイミングで。その「オフィーリア」が入っているアルバムの曲たちもベースでレコーディングに参加させてもらったり、すごく自分の中では思い入れの強い曲なんです。ある種自分の中では、「オフィーリア」からこのGalileo Galileiが始まってるんだって捉えることもできる曲なので、『MANSTER』と『MANTRAL』を2枚同時にリリースするこのタイミングで「オフィーリア」が入っているっていうのは、自分の中で結構メモリアルなことですね。

雄貴:それこそ、Galileo Galileiのためにこれ書くわって書いた曲で、もうその時点でGalileo Galileiとしてもう一度リリースできたらいいねってずっと前から話してたんです。『Bee and The Whales』のタイミングでも一瞬考えたんですけど、その時じゃないなと思って寝かせていて。で、今回のアルバムにハマるじゃんと思ってリアレンジしたっていう曲になってます。

岡崎真輝

――「オフィーリア」をはじめ、今回いろんな曲で雄貴さんの歌詞の中にシェイクスピア的なものの影響を感じました。

雄貴:ありがとうございます(笑)。メンバーで絵画を見たり、絵画について調べてて。好きなYouTube番組を見て、みんなで「自分たちの作品に取り入れられないかな」って話を冗談交じりにしたりするんですけど、僕たちは芸術をやってるんだっていうプライドが自分たちにあって。だからこそ芸術っていうものをなんであれ、小説もそうですけど自分たちなりに紐解いて、自分たちの血と肉にしなきゃいけないっていう感覚があるんです。芸術ってものに対しての自分の考えと思いっていうのを歌ったのが「オフィーリア」っていう曲になってます。

――では和樹さんはいかがですか?

和樹:自分は『MANTRAL』から「やさしいせかい.com」って楽曲なんですけど、個人的にはこの曲が一番、活動終了する前のGalileo Galilei的な空気感を持っているというか。むしろGalileo Galileiのファーストアルバム『パレード』のような人懐っこさみたいなのがあるなと思っていて。その頃から聴き続けてくれたファンの人たちを、ふわっと懐かしい気持ちにさせるような、そんなニュアンスがあるんじゃないかなと思ってこの曲を推していきます(笑)。

尾崎和樹

岩井:僕はですね、『MANSTER』の「ヴァルハラ」でお願いします。

雄貴・和樹・岡崎:(笑)。

岩井:みんなが『ヴァイキング~海の覇者たち~』っていうドラマにハマって、まあ主に雄貴か。真輝君も見てたんだっけ?

雄貴:激ハマりしてたよ。

岩井:和樹は見た?

和樹:俺まだ見てないんだよね。

岩井:僕の家にも新しくスタジオ作ったので、今作では別作業をすることがあって。『MANTRAL』のミックスをこっち側で多めにやったり、『MANSTER』をわんわんスタジオでやったり、そういう音の変化も狙いつつやってみたんです。ある日、みんなが『ヴァイキング』の話をしている時に、上がってきたデモを聴いたら中学生のときにレディオヘッドの『OK Computer』を聴いた時に限りなく近い衝撃を受けて、今僕らは、本当に音楽で冒険の旅をしてるんだなと思ったんです。この2枚のアルバムのエンディングテーマというか……この曲を聴くとこの2枚でたくさんの冒険をしてきたことを思い出します。あと、今回のワンマンツアー『Tour M』の演出で今までやってこなかったような、それこそ先ほどシェイクスピアっておっしゃっていただいてましたけど、そういう演劇っぽいことにちょっとだけ挑戦してみようっていうのがあって。それもこの「ヴァルハラ」の世界観が実は影響しているんじゃないかなって……まあ、尾崎雄貴の頭の中はこれだけ長く一緒にいてもよくわからないので、なぜそうなったのかはちょっとわからないんですけど(笑)、それぐらい僕らの音楽に対する冒険心みたいなところが詰まった楽曲だなと思っています。

岩井郁人

――ヴァルハラって“戦争と死の神の館”ですもんね。

雄貴:(笑)。

――でも、めちゃくちゃ突飛なものっていう感じもしないんですよね。

雄貴:北欧神話を曲にしようと思ってるタイミングじゃない時からよく調べてたんですけど、そこから結局音楽の話になるんですよね。「北欧の音楽ってこうだよね」とか、「それって寒いからかな? 不毛の地だからかな?」とか。で、僕『ヴァイキング』の他に『ラスト・キングダム』っていうドラマも好きなんですけど、そっちはスコットランド側の話で、『ヴァイキング』は侵略者の側の話、その2点からいろいろと調べていくとすごく楽しくて。もともと死生観っていうのは自分の中にこの世のルールとしてあるので、「いざヴァルハラへ!」って死んだ後も未だ戦を続けようとしていることの考えに至ること、宗教とか神話もそうですけど、それって僕はおとぎ話だなと思っていて。子どもに「悪いことするとベッドの下からモンスターが出てくるんだよ」って言ってるのと、基本的に広めている理由っていうのは変わらないのかなと思ってるんです。そこに自分の中では、自分の音楽を通して自分が見てる世界を伝えている中での根本のルールがあり、だからこそ「ヴァルハラ」を作った時は別に「あーこんな曲作っちゃったエヘヘ」っていう感じではなくて、「よし!いい曲できた」「これはめっちゃ「ヴァルハラ」っしょ!」という感じでした。

――ある種の必然性があると。では、雄貴さんが1曲挙げるとしたら?

雄貴:僕は「UFO」。『MANTRAL』の曲なんですけど「UFO」は個人的に気に入っていて。単純に曲として気に入ってるっていう、すごく漠然とした理由なんですけど。

――気に入ってる理由はありそうですよね。

雄貴:曲というか、僕が音楽だけでなく何を作る時でもそうなんですけど、何かを伝えたいっていう思いから曲を書くんじゃなくて、まず一つ自分の中で直感で……例えばバナナだとしたら、「バナナです」「バナナって黄色だよね」「黄色と言えばひまわりだよね」っていうように連想ゲームで考えて作っていくんです。「UFO」も同じで、僕の中に幼少期に見た『ひらけ!ポンキッキ』っていう番組があって、当時の『ポンキッキ』は「みんなのうた」みたいな感じで、アニメーションに合わせていろんな曲が流れたんですけど、当時「むぎばたけのうちゅうじん」っていう曲があって、それがずっと僕の心に残っていて。それを見た時の不思議な感覚というか、子どもなのになぜか“懐かしい”って感じたんですよ。まだ小学校にも上がってなかった頃だったんですけど。「むぎばたけのうちゅうじん」のアニメーションは、金太郎みたいな男の子が……ちょっとうまく説明できないな。ネットで検索してみてください(笑)。

和樹:(笑)。

雄貴:麦畑、UFO、宇宙人、ミステリーサークル、みたいな。なぜかそれを懐かしいって感じたことがずっと自分の中に残ってて、ついに曲にできたっていうのがありますね。

尾崎雄貴

――それが形になる理由として、今皆さんが生活の大半を一緒に過ごしていたりとか、思い浮かんだことを言葉にできることがあるんじゃないですかね。

雄貴:そうですね。それこそ岩井君とかが「子どもの頃こういうことがあってさ」とか「兄ちゃんとこういうことで喧嘩したんだよな」とか、メンバーがするこういう話にそれぞれが興味があるし、「ふーん」じゃなくて「へー、それでそれで?」ってなるというか。それで、頭の中に映像として浮かぶんですよ、たぶん僕だけじゃなくて。その信頼感が結構あるのかなって思いますね。“このメンバー以外の誰にもわかって貰えないと思うんだけど”っていうことってたくさんあると思うんですけど、それをただ話すんじゃなくて楽曲に一緒に落とし込むことで、メンバーだけじゃなく、全然会っていないはずの聴いてくれる人達が同じように懐かしいと思ってくれるってすごいことだと思うので。それを作っていけるメンバーだなって改めて感じました。「UFO」もそうだし、今回のアルバムはどの曲もそういうものが散りばめられていると思います。よくメンバーと話すんですけど、人に対しての興味プラス自分に対しての興味っていうのがメンバー全員しっかりとあるので、それが今回のアルバムですごく大事な軸になってるんじゃないかなって、特に「UFO」を通して僕は思います。

――大人も子どももなぜか知ってるみたいな話で言うと、私は「カラスの歌」がすごく好きですね。

雄貴:ありがとうございます。僕も大好きです。

――それこそ4人で共有された空間に、リスナーも“なんか懐かしいぞ”とイメージできるというか。

雄貴:今は自分たちに子どもができて、それこそ岩井君や岡崎君たちが息子と近くの公園に行って、息子たちが野球の試合をやり始めるんですけど、そこに自分たちも参加したりしていて、それでレコーディングの日なのに丸一日つぶれた日があったり(笑)。その時に思ったのが、土ぼこりの中必死に汗流しながら遊んでいて、徐々に暗くなっていって夕方の匂い、晩御飯を作ってる匂いとかが軽くしてきて。でも自分の鼻の中に土の匂いがして。もうそろそろ帰らないとなって空を見上げてる瞬間にめちゃくちゃ懐かしい気持ちと、これってずっと感じれてなかったなっていう思いになって。で、その時に「カラスの歌」ができたんですけど、それをみんなで経験できたのはよかったですね。あと、「カラスの歌」は岩井君がすごく重要なアレンジと、「もうプロデュースですね」っていうことをやってくれていて。子どもの頃から一緒にいた尾崎兄弟では共有できてるメランコリックを、岩井君が理解してやってくれたっていうことに結構衝撃を受けた曲なので、噛み合ったなと思ったんです。「カラスの歌」を書いて「岩井君、いろいろやってくれ」と言って渡して、それが戻ってきたとき、“岩井君マジで天才だな、よくこんな風に変えれるね”っていうアレンジを岩井君が自分のスタジオでしてくれて。今回のアルバムの中で「カラスの歌」は、僕にとっては岩井君との大事な1曲になったなと思います。

Galileo Galilei

――今日の気分がどっちのアルバムなのかっていうのはその日によるでしょうけど、やっぱり両方あることで今のGalileo Galileiをよりわかりたくなる感じがします。

雄貴:ありがとうございます。めちゃくちゃ嬉しいです。

――ところで細部の話なんですけど、アーティスト写真に雄貴さんの“KING M”の肖像が飾ってあって、面白いアイディアですね。皆さんはこの“KING M”の絵が飾られている博物館か何かの清掃員なんですか?

雄貴:美術館の清掃員のふりをしています。

――肖像画、ちょっといかついですね。

雄貴:はい。王様の服を着たんですけど、気分はやっぱりよかったですね。王様っていいなと思いました。

岩井・和樹・岡崎:(笑)。

Galileo Galilei

――これがステージの演出の話に絡んでくるのかな?っていう妄想をしてしまいますね。

雄貴:絡んできます。

――おお。これまで全くなかった演出かもしれないですね。現状話していただける範囲でどんなツアーになりそうでしょうか。

雄貴:今回のアルバム2枚ができた出どころっていうか、その原点・源流っていうのは僕らの人生だと思うので、その人生の中でバンドを組んで10代でデビューして上京して……そっからの今の流れっていうのはやっぱり時間としてはすごく濃いので。その濃い時間の中で関係性を築いてきたのがこの4人だと思っていて。岡崎君だってそうで、岡崎君に出会ってから岡崎君のことを考えない日は僕はないので。で、そのメンバーの関係性だったりそれぞれが思ってること、そして今までGalileo Galileiに起こったことっていうのをこの『MANSTER』『MANTRAL』っていうアルバムのテーマに絡めて、演劇を盛り込んでお客さんに見せたいなって。Galileo Galileiってこういうことあったなとか、俺らってこうやって音楽考えてんだよねっていうことをただ言うだけだったら面白くないし、曲だけ聴いてくれればわかるぜっていうのは今までずっとやってきたので。じゃなくて、せっかくだったらファンや僕ら自身も「おもしろ!」と思える挑戦をしたいなと思って。どっぷりこっち側の言葉で言い表せない不思議な感じに、みんなを引き込みたいなって思ってます。

――わかりました。今回のツアーは、4人でやるんですか?

雄貴:4人プラス2人います。今回のアルバムでも超重要なピースだった大久保(淳也)さん、あとは「CHILD LOCK」って曲でDAIKI君のギターが入ってるのでDAIKI君も参加してもらって。僕が知っている一番のプレイヤー全員でやりたいなっていうところで、フルチームでいきます。

文=石角友香