イーロン・マスク氏が創業した宇宙開発企業のSpaceXは、民間人による船外活動を目的とするミッション「Polaris Dawn(ポラリス・ドーン)」に取り組んでおり、現地時間の2024年9月9日には民間人の宇宙飛行士4人を乗せた宇宙船が打ち上げられました。そして現地時間の9月12日、民間の宇宙飛行士として史上初となる宇宙遊泳が実現しました。



- SpaceX - Launches

https://www.spacex.com/launches/mission/?missionId=polarisdawn

SpaceX Polaris Dawn astronauts conduct the first-ever private spacewalk : NPR

https://www.npr.org/2024/09/12/g-s1-22253/watch-spacewalk-spacex-astronauts

Polaris Dawnミッションに参加したのは以下の4人で、左から順にSpaceXのエンジニアのサラ・ギリス氏、電子決済会社「Shift4」の創業者であるジャレッド・アイザックマン氏、元空軍パイロットのキッド・ポティート氏、SpeceXのエンジニアのアンナ・メノン氏です。



SpaceXによると、4人の民間宇宙飛行士を乗せた宇宙船のCrew Dragonは、打ち上げ後すぐに減圧に順応するための準備を始めたとのこと。このプロセスではキャビン内の酸素レベルをゆっくりと増加させつつ減圧を行い、2日間かけて宇宙遊泳に向けて体を慣らしていったそうです。

体の順応が完了すると、地球の上空732kmに位置するCrew Dragonの中で、乗組員らは船外活動スーツの着用や宇宙船の空気漏れチェック、空気の排出などの準備を整えました。そしてアメリカの東部標準時で9月12日7時58分、Crew Dragonのハッチが開けられて、4人は大気圏外の宇宙にさらされた初の民間人となりました。

ハッチが開けられた瞬間の映像が以下。体が船外に出ているわけではありませんが、船内に空気が残っていないため技術的には「宇宙遊泳に成功した」ということになります。



アイザックマン氏がハッチから身を乗り出して青く光る地球を眺める瞬間を、宇宙服のヘルメット内部のカメラで撮影した様子は以下で見ることができます。アイザックマン氏は、「SpaceX、家に戻ればやるべきことが山のようにありますが、ここから見ると地球は確かに完璧な世界のように見えます」と語ったそうです。



アイザックマン氏がSpaceXの宇宙服の機動性テストを行う様子がこれ。なお、SpaceXの宇宙服は自己完結型の生命維持装置を搭載しておらず、ケーブルを通して酸素の供給を受けています。そのため、アイザックマン氏はハッチから身を乗り出しつつも、SpaceXが「Skywalker(スカイウォーカー)」と名付けたレールにしがみついていました。



ハッチから身を乗り出したのはアイザックマン氏だけでなく、同乗していたミッションスペシャリストのギリス氏も、ハッチから体を出して宇宙服の機動性テストといった船外活動に従事しました。残るポティート氏とメノン氏は、作戦中に重要な支援システムを監視する役割を担っていたとのこと。2人の船外活動が完了するとハッチを閉じ、キャビン内を再加圧して空気と酸素が通常のレベルに戻されました。

海外メディアのNPRは、宇宙服の機動性テストではほとんどの項目で「3」というスコアが記録されたものの、これが「1〜5」段階の評価なのか「1〜10」段階の評価なのかわからないとしています。それでも、宇宙遊泳は宇宙飛行の中で最もリスクの高いパートの1つであり、今回のミッションはSpaceXにとって大きな成功だと述べました。