〜 2024年「商号変更」動向調査 〜

 商号は会社の“顔”であり、ブランドである。この商号を2023年8月〜2024年7月の1年間で2万2,058社が変更したことがわかった。東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースに登録された約429万社の0.51%だった。また、商号変更のうち、組織変更に伴う法人格の変更は3,241社だった。
 業歴別では、業歴の浅い10年未満が44.7%を占め、業務や存在のインパクトを強めることが目的のようだ。一方、業歴100年超の老舗企業も221社あった。業歴最長は、合資会社から株式会社に組織を変更した(株)塩瀬総本家(東京都、和菓子製造)で、貞和5年(1349年)創業、675年の業歴を誇る。
 産業別では、サービス業他が8,812社と約4割(構成比39.9%)を占め、最も多かった。また、産業別で全企業数に対する変更率は、金融・保険業が0.86%で最高だった。投資ファンド運営の特定目的会社(SPC)の商号変更が目立った。
 業歴別は、10年未満が9,776社(構成比44.7%)で最も多く、全企業に対する変更率は0.84%だった。業歴が長くなるほど商号が定着し愛着も沸くが、業歴の浅い企業は思い切ったイメージチェンジに取り組みやすいことが背景にあると思われる。
 商号の文字(漢字やカタカナなど)を変更前後で比べると、変更前(2023年7月)の最多は「漢字のみ」が6,213社(構成比28.1%)だった。変更後は、「カタカナのみ」が5,543社(同25.1%)と逆転する。また、「英字のみ」も5,289社(同23.9%)で続く。コロナ禍を経て、先進性や国際性、話題性のイメージ戦略が広がっている。
 商号変更は、企業にとって最大のアクションの一つで、将来を左右する重要イベントでもある。イメージ一新、認知度や好感度のアップなど、狙いは多様だが、新たな戦略をステークホルダーにアピールし、更なる事業拡大に繋ぐシナジー効果も担っている。
※ 本調査は、TSR企業データベース約429万社のうち、2023年8月から2024年7月に商号変更が判明した企業を分析した。
※ 組織変更に伴い、法人格を変更した3,241社を含む。



2024年の商号変更は2万2,058社、全体の0.51%

 2023年から2024年に、商号変更した企業は全国で2万2,058社だった。TSR企業データベースに登録された約429万社の0.51%を占めた。
 地区別では、最多が関東の1万169社(構成比46.1%)で過半数に迫る。次いで、近畿3,640社(同16.5%)、中部2,359社(同10.69%)、九州2,338社(同10.60%)と続く。一方で、最少は北陸の427社(同1.9%)だった。変更社数は、企業数が多いエリアに比例した傾向をみせている。
 地区別の全企業に占める商号変更率は、関東と九州が最高の0.54%で並んだ。次いで、北海道と近畿が0.51%、中部と北陸が0.48%で並ぶ。一方、変更率の最低は四国の0.41%で、東北の0.42%が次に低い。


【産業別】社数はサービス業他が最多、変更率では金融・保険業がトップ

 産業別で、商号変更の最多は、サービス業他の8,812社(構成比39.9%)で約4割を占めた。次いで、建設業が2,956社(同13.4%)、不動産業2,030社(同9.2%)、小売業1,896社(同8.6%)が続く。一方、最少は、農・林・漁・鉱業の334社(同1.5%)で、運輸業573社(同2.6%)、金融・保険業701社(同3.1%)の順で少ない。
 産業別で、全企業に占める商号変更率のトップは、変更企業数が3番目に少ない金融・保険業の0.86%。投資ファンドが運営する特定目的会社(SPC)が多いのが特徴だ。このほか、情報通信業0.76%、運輸業0.63%、農・林・漁・鉱業0.54%の順で続く。
 一方、商号変更率の最低は、製造業の0.44%だった。次いで、小売業0.45%、建設業0.46%、卸売業0.47%の順で低い。

業歴50年未満が9割弱を占める

 商号を変更した企業のうち、業歴が判明した2万1,867社を対象に分析した。10年未満が9,776社で最も多く、4割超(構成比44.7%)を占めた。次いで、10年以上20年未満4,057社(同18.5%)、20年以上30年未満2,630社(同12.0%)、30年以上40年未満1,708社(同7.8%)、40年以上50年未満1,081社(同4.9%)の順。業歴50年未満が合計1万9,252社(同88.0%)で、約9割を占めた。

 全企業に対する変更率は、最高が10年未満の0.84%。10年以上20年未満と20年以上30年未満が0.51%で続く。商号変更は、業歴が長いほど変更しづらいのかもしれない。
 一方、業歴100年以上の老舗企業も221社が商号を変更した。1900年創業で世界最大規模の総合印刷会社、凸版印刷(株)は2023年10月、持株会社体制へ移行するタイミングでグローバル経営を念頭に置いた英字表記のTOPPANホールディングス(株)へ変更した。

変更後は「カタカナのみ」や「英字のみ」を使用した商号が増加、「漢字のみ」は減少

 商号変更の前後で、文字種類の構成比を比較したところ、変更後の最多は「カタカナのみ」の25.1%(5,543社)だった。変更前(5,444社、構成比24.6%)から微増した。次いで、「英字のみ」23.9%(5,289社)が続き、変更前(3,632社、同16.4%)から7.5ポイント上昇した。
 一方、変更前に最多の「漢字のみ」は28.1%(6,213社)から21.5%(4,760社)へ6.6ポイント減少、3位に転じた。このほか、「カタカナと漢字」が15.1%(3,349社)から11.7%(2,594社)へ3.4ポイント減少した。
 商号変更を機に文字種類を変更したパターンにより、漢字使用が減ってカタカナや英字の使用が増えた傾向が明らかになった。先進性や国際性のイメージを強くする狙いをうかがわせる。