3年前に淡路島に引っ越し、築67年の古民家に家族5人で暮らす、整理収納アドバイザーのひでさん(44歳)。以前住んでいたマンションは64平米の2LDK。現在は6LDKで、住まいは格段に広くなりましたが、ものは極力増やしていないそう。昔はものに囲まれて過ごしていたひでさんが、少ないもので暮らすことで得た、時間や心の豊かさについて話します。

たくさんのものに囲まれ、葛藤でいっぱいだった10年前

「ものが増えるとそれらを管理する手間や時間がかかります。ものを管理することに時間を使うより、夫とゆっくりお茶を飲んだり、縁側からのんびり外を眺めたり、そういうことに時間を使いたい」と話すひでさん。ですが、以前はものをたくさん持っていて、片づけが苦手だったのだとか。

【写真】築67年のすっきりとした台所

「好きで買い集めたはずの洋服や食器も、多すぎると管理しきれず、むしろ生活を圧迫していました。床にもものがたくさん置いてあって、常に“あそこを片づけなきゃ”とやらなければいけないことをできていない葛藤でいっぱい。自分に自信を持てずにいました」

片づけを始めたのは10年ほど前。以前住んでいた2LDKの家の中でも子どものスペースを確保する必要に迫られ、少しずつ、増えすぎたものを処分するようになったのだとか。

大きな食器棚を手放し、部屋が広く感じたときの衝撃

「物置部屋化していた部屋の床が少しずつ広くなって…(笑)。ものを減らすと暮らしが快適になるのを実感しましたね。たくさん持っていた食器も処分し、背の高い食器棚の上の段がどんどんからになっていきました。こんな大きな食器棚はいらないかもと気がついてメルカリで売り、小さな食器棚に買い替えたときは、衝撃的でした。ずっと狭いと感じていた家が広々と感じ、とても清々しい気持ちになったのを覚えています」

弾みがついたひでさんは、さらに家の中のものを次々に処分。ついには自分のもので捨てるものがなくなり、夫のものを勝手に捨ててしまったことも。

「夫が会社に行っている間に、必要なものまで捨ててしまい、今だにそのことは言われます。そんなこともあって当初はものを捨てることを猛反対していた夫も、家が片づいてすっきりすると次第に気持ちが変わるように。服に関しては、夫の方がきちんと制服化し、ミニマリスト志向なくらいです」

そうした経験から、6LDKの古民家に引っ越した今も、ものは増やさず、すっきり暮らしをキープ。

「広い家になにも置かないって、すごくぜいたくだし、かっこいいんじゃないかなって思っています。そもそもお店が少ないので、買い物にも行かなくなりましたね(笑)。こちらに来て少し増えたのは、DIYの工具と釣り道具ぐらいです」

ものを減らして身軽になれたからこそ、理想の暮らしに飛び込めた

「そもそも、たくさんのものに囲まれたまま暮らしていたら、今の家に引っ越してはいなかったと思います。ものを減らしたことで身軽になって、いつでも、好きなところで、好きな暮らしをしようと思い立ち、実行に移すことができたのです」

広々とした家の中で、今なによりもぜいたくに感じるのは、ゆったりとした時間の流れ。

「鳥の声で目覚める朝や、島に住む人々とののんびりとした交流、家族と一緒に過ごす夕暮れ。その瞬間瞬間が、とても貴重で愛おしく感じます」