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老人ホームの入所にあたり、最大の懸念といえばその費用。通常は入居者本人が負担するものですが、子どもが払うことも珍しくはありません。またしっかりとシミュレーションしたものの、想定通りいくとは限らず、驚愕の事態に直面する場合も……。

老人ホーム費用…誰がどのように用立てればいいのか?

老人ホームの費用形態は、初期費用と月額費用に分かれます。初期費用である入居一時金は家賃の前払いのようなもので、数百万円から高いところでは億を超えるところも。同じ施設でも、入居一時金のないプランを用意しているケースもありますが、そちらのプランはその分、月額費用が高くなります。

月額費用に含まれるものは施設によってさまざまですが、たいてい、家賃、管理費、食費、光熱費、(介護が必須の施設であれば)介護費が含まれます。そのほか、日常品や美容代、レクリエーション代などが別途かかり、その額は平均3万〜5万円程度とされています。

民間企業が運営する有料老人ホームであれば、入居一時金は1,000万円程度、月額費用は25万円程度が相場。この費用をどのように用意するかが問題ですが、入居一時金は退職金含む預貯金、月額費用は年金と貯蓄の取り崩しなどでカバーするケースが多いようです。

それでも足りない場合は、持ち家であれば、自宅を売却したり、自宅を担保に資金を作るリバースモーゲージを利用する手も。ただ自宅の活用は慎重にすべきというのが多くの専門家の声。老人ホームに入居したらそれまで、というわけではなく、退所を余儀なくされることも珍しくはありません。そうなった場合、戻ることのできる自宅があるのとないのとでは大違いです。

入所自身で賄うことが難しい場合は、その子どもが負担するというのがよくあるパターン。株式会社Speee/ケアスル 介護『介護施設の費用に関するアンケート調査』によると、介護施設の費用を負担している人は「入居者自身」が64.0%。次いで「入居者の子ども」の24.8%。入所者の4分の1は、子どもが負担しています。

先日、81歳の母が老人ホームに入所したという54歳の男性は「いずれは身銭を切る必要もかもしれない」と覚悟するひとり。母の年金は月7万円ほど。預貯金2,500万円に自宅は持ち家です。入居を検討している老人ホームは、初期費用は500万円ほどで月額費用は25万円ほど。プラスαを考えて、月28万円ほどの出費を見込んでいたといいます。

入居一時金は預貯金で支払うとして、月額費用は年金を差し引いた20万円強の出費をどうするか、検討しなければなりません。

――不足分を母親の預貯金でカバーするなら、計算上預貯金が底をつくのは8.3年

――不測の事態を考慮するなら、5、6年で底をつくと考えたほうがいいか

――それまでに自宅の売却についても段取りしておいたほうが

――多少、自分が身銭を切る覚悟も必要か……

色々とシミュレーションして、検討していた老人ホームに入居することを決めたといいます。

老人ホームからの初めての請求…そこで初めて知る驚愕の事実

母が老人ホームに入所し、ほっとひと息の男性。

――父が亡くなり、母があの家(実家)でひとり暮らしを続けるというのは、やはり心配でした

ただ入所から1ヵ月後、驚愕の事態に直面します。月額費用が初めて引き落としとなる日。利用明細は、長男である男性宅に送られてくるようにしていました。その明細をみてビックリ。

家賃、管理費、食費、光熱費、介護費用、洗濯代。ここまでは月額費用として含まれている金額。そこにプラスされ、美容代、レクリエーション代、プラスαの介護費用。トータルで3万円ほどで、ここまでは想定していた通りです。しかし実費分として請求されていたのが「おむつ代8万円」。

――えっ、おむつに8万円!?

衝撃的な金額に「思わず、気絶するかと思った」と男性。気を取り直し施設に電話をすると、確かに8万円だという答えが返ってきました。

――でも、おむつに月8万円っておかしくないですか?

素直に疑問をぶつけてみると、思ってもみなかった母親の行動が明らかになりました。母親は事あるごとにおむつ替えを要求。

――えっ、汚れてないですよ

――いいの、何かイヤなの。だからお願い、かえて

「そんなに母は潔癖症だったのだろうか?」と疑問に感じつつ、とにかく、他の入居者と比べて10倍近くも紙おむつを使い、積もり積もって月8万円だというのです。確かに、一般で売られているおむつに比べると、ホームで定めている単価は高いと感じていました。それにしても……

母に事実を確かめると、何ら間違いはなく、「おむつ代月8万円」に偽りはありませんでした。

――もう少し我慢してよ。すぐにお金がなくなっちゃうよ

――イヤなものはイヤなの

譲らない母親。もう一度しっかりとシミュレーションをして対策を講じないと、まさかの「おむつ破産」が現実のものになってしまいます。

[参照]

株式会社Speee/ケアスル 介護『介護施設の費用に関するアンケート調査』