主な連絡手段がメールやLINEになり、読み書き能力が求められる世の中。書く機会が格段に増えたからこそ、人に伝わる文章を書きたい! 『書く仕事がしたい』『本を出したい』(ともにCCCメディアハウス刊)の著者でライティングゼミを主宰する佐藤友美さん(以下さとゆみさん)が、過日行った「ESSEonline読者限定・文章が上達するセミナー」には書く際の疑問が殺到。さとゆみさんがQ&A形式でその疑問を解決してくれました。まねするだけで文章力がアップすること間違いなし。

Q:文章がつい長くなってしまいますが、どこを削るべきかわかりません。どうすれば伝わりやすい文章になりますか?

A:文章はメッセージ。できるだけ短く簡潔に書くと伝わる

「基本的に、1本の原稿で伝えることは1つだけです。2個も3個も伝えたいことがあるときは、別の原稿に書きましょう。絶対にこれだけを伝えたい! ということをまず決め、それを補足するエピソード以外は削除するとストレートに伝わりやすくなります。なお、文章を削るときは、だるま落としのごとくワンブロックのエピソードをまるごと落とすと、時間もかからず、すっきりとして読みやすい文章になります」

Q:文章を書くのに時間がかかります。スラスラ書けるようになりたいです

A:箇条書きから構成案をつくるとスムーズに書けます

「書くのが遅いのは、物事をくっきり見ようと思っている証拠でもあるので、時間がかかっても大丈夫です。逆に、スラスラ書けるのなら、ぼんやりとしか物事をとらえていない可能性もありそう。それよりはよい状態だと思います。ただ、それ以外の理由で時間がかかっているのであれば、構成ができていないのかも。まずは箇条書きで書きたいことを挙げ、それをどの順番で書くとわかりやすいかを考え、構成を考えてから書き始めてください」

Q:文章が簡潔になりすぎておもしろみに欠けてしまいます。人が思わず手を止めて読んでもらえる文章にするには?

A:エピソードファーストで気持ちをひきつけよう

「同じ内容を伝える文章であれば、ビジネス文書のように短ければ短いほどいいと思います。ただ、思わず手を止めて読みたい文にするには工夫が必要です。気持ちを引き寄せ、離脱を防ぐために私がよくとる方法が、エピソードファースト。書き出しの部分に具体的なエピソードを入れる方法です。そのあと自分の伝えたいことを書くと、スムーズに読んでもらえると思います」

Q:書くのが面倒になったり、行き詰まったりしたとき、どのような方法で乗り切りますか?

A:話を聞いたときや体験したときの状況や気持ちを思い出してみる

「自分のブログだったら、面倒で書きたくないときは書かなくていいと思います。多くの文章が世の中にあふれている時代、面倒だな…と思って書いている文章は読まれなくてもいい、と私は思っているからです。ただ、仕事として書かなくてはならないときは別。私の場合は、取材で録音した音声を聞き直すことにしています。インタビュー音源を聞くと、その時の気持ちがよみがえってきて、すぐにでも文章に書き起こしたい気持ちになれます」。

もしも音源がない場合は、そのときの状況をできるだけ思い出すことが、書く気持ちを奮い立たせる原動力になりそうです。

Q:今、48歳です。この年齢でライターを目指すのはもう遅いでしょうか?

A:今までの経験はすべて武器になる。今からでも遅いことはありません

「ライターというのはすべての経験がプラスにしか働かない職業です。死別や離婚、病気など一般的にネガティブにとられる経験であっても、それらを全部含めて『書く仕事』に役立ちます。48歳なら、それまで積み重ねてきた経験がたくさんあり、それらはすべて武器になります。つまりライター業は、年を取っていることがディスアドバンテージ(不利)にならない仕事です。

業界ではいつでも『書けるライター』を探しています。有名メディアでもライターを公募していて、主婦の方々をフィーチャーするメディアでは、これまで主婦だった人こそ重宝されています。ライターになりたい質問者さんに今、いちばんしてほしいことは、ライターになるための計画を立てることと、書きたいことを宣言すること。ぜひ48年間生きてきた経験をライターの仕事に生かしてみてください」

すべての文章はラブレター。書くことで人生が豊かになる

インタビューであれば取材相手を、レストラン取材であればそのレストランを推す文章を読者に紹介するつもりで書く。そのすべてはラブレターでもある、と話すさとゆみさん。ライターの仕事は、自分の「好き」を伝えて、「好き」を広げるすてきな作業で、そこに魅力があると語ります。

「書くとき、私は自分以外の人や物事をいっぱい観察します。これって自分以外のなにか知ろうとする行為。そうして(取材対象を)理解すると、だんだんそれを好きになっていくんです。だからライターの仕事をしていると、びっくりするほど世の中、好きな人やものだらけになる。これがこの仕事のすてきなところ。仕事を通して、自分が住んでいる世界を愛せるようになると幸せだと思うし、これからも好きな世界に住めたら幸せだなぁと思って、日々仕事に取り組んでいます」

そして自分が書いた文章で、読者の気持ちや世の中が1ミリでも動き、豊かに変わっていったらうれしい。

「(自分以外のことを知る)文章を書く仕事は、いいことがたくさんある。人生を豊かにすることに繋がっている。今後も文章を書くことを楽しんでもらえたらうれしいと感じています」

自分の言葉で書く。そしてその言葉が伝わることで動く人や世界がある。さとゆみさんが惜しみなく教えてくれた生きたテクニックは、明日からの生活を豊かにしてくれるヒントがいっぱいありそうです。今後の「書くこと」に活用してみてくださいね。