プロ注目、大ケガ、それでも元東北得点王ノースアジア大FW内垣祥一は諦めない「いまはまだ見つかっていないですけど、努力したい」
東北地区大学リーグ1部第8節東北大(宮城)vsノースアジア大(秋田)戦が27日に仙台市青葉区内で行われ、ノースアジア大は1-5で東北大に大敗を喫した。この日先発したFW内垣祥一(4年、大坂・清明学院高)は果敢にゴールへ迫って両チーム最多のシュート3本を放つが、ネットを揺らせなかった。それでも試合終了の笛が鳴るまでストライカーは勝利を諦めずにピッチを駆け抜けた。
最後まで諦めずにゴールへ迫った。東北大の激しいプレッシャーにさらされながらも、内垣は軽快なボールタッチでプレスを掻い潜りながら攻撃にアクセントを生んだ。だが後半は東北大の怒とうの攻めに屈してチームは4失点を奪われて大敗した。
内垣は「天気の荒れもあって、アップ時間もばらつきがありました。いつも通りのアップではなかったんですけど、それでも試合はやらないといけない。入りは先制点を取って勢いに乗れた部分はあったんですけど、失点してから相手の雰囲気にのまれて、自分たちのサッカーも最後まで見つけられず、この点差になってしまったと思います」と深く肩を落とした。
突発的なゲリラ豪雨の中で行われた試合のため、敵地と地の利がないノースアジア大イレブンはアクシデントに苦しんでしまった。そして今季に入ってから山本茂太監督、早野宏史総監督(現J3・AC長野パルセイロ・アカデミーアドバイザー)が揃って退任。指導者不在の中で選手たちはプレーを強いられている状況だった。
「次期監督が見つからないまま選手だけでやっています。その中でもいまの環境でやらないといけないと思っています。(指導者不在は)言い訳にはできないと思います」と背番号10。
今季は2勝5敗と勝点6で8チーム中6位と残留圏内にいるが、予断を許さない状況だ。「2勝しかできてないので、残りの試合は勝ちたいですね」と前を向いた。
昨季総理大臣杯で東北勢初となる大学日本一に輝いた富士大戦は1-2と惜敗したものの接戦を繰り広げた。この試合で背番号10はゴールを決めており、1部残留の鍵を握る男は後半戦の反撃に向けて静かに闘志を燃やしていた。
過去にプロから注目された男は可能性を信じている
内垣祥一。東北学生リーグを追っている人間は、一度耳にしたことがある名前かもしれない。2022年シーズンにノースアジア大初となる東北1部得点王に輝いた内野は、北東北では注目を集めたストライカーだった。
抜群のシュート精度、抜け出しのセンス、ゴール前でのキレは一級品であり、秋田県代表として出場した2022年天皇杯1回戦ではJ3福島ユナイテッドFC相手に1-7で大敗するも、前半9分に鋭いドリブルからゴール前へ切り込んで右足でゴールを奪った。
Jリーグ関係者も内垣を注目する人間はいたが、翌シーズン初夏以降から背番号10の名前を聞くことがなくなった。
「高校のときに手術した部分が再発してしまいました」と内垣。
左足首のじん帯損傷という大ケガを負った背番号10はじん帯を再建する手術を受けたという。「同じところを2度手術となると難しいですよね。(大学)3年目は棒に振りました」と悲し気な表情を浮かべた。このケガにより以前あったキレと得点感覚は失われてしまった。
高校卒業後にプロを目指して秋田に渡ったストライカーは「(退任した山本監督の前任の)鍵本勝美監督のときは楽しいサッカーだったんですけど、辞めてしまって、手術も重なって…。2年のときは自分も(プロに)いけるかなと思っていましたけど、(ケガや鍵本監督の退任が重なって)プロは断念する形になりました」と夢を絶たれてしまった。
それでもこの日は劣勢でも泥臭く走り、ゴール前では攻撃のアクセントを作るように前線へパスを供給。隙あらばシュートを打つなど奮闘し続けた。ノースアジア大の背番号10は自分の可能性を諦めていない。
「2年生のときと違って得点力がまったくなくなっていると思います。自分なりに考えて、いまはまだ(新しいプレースタイルが)見つかっていないですけど、努力したいと思っています」と新たなプレースタイルを模索している。
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東京都3部USEサッカー部への内定を勝ち取っている内垣は、恩師である鍵本監督の下で大学卒業後もサッカーを続ける。かつては東北学生サッカー界で注目された点取り屋は、チームの中核としてノースアジア大の1部残留と新たなプレースタイルの獲得を目指している。目標に向けて一歩、一歩、歩みを止めずに内垣は前へ突き進む。