この記事をまとめると

■最近は新車ディーラーも夏休みとして長期間の連休を設けている店舗が多い

■新車販売店が長期間の休みを取るようになった背景にはメーカーの休みや働き方改革、販売員不足などが影響している

■バブル経済の前後で自動車ディーラーを取り巻く社会事情が激変したことが定休日の多さからもうかがえる

いまどきの新車ディーラーはガッツリ夏季休業するのが一般的

 本稿執筆時点では間もなく小学校や中学校、高校などが全国的に夏休みに入る。最近では夏休み中の子どもへの昼食を作る手間やその費用負担などもあり、「夏休み廃止もしくは短縮」を希望する保護者の声も多いとも聞くが、長期間の休みを前に子どもたちはまさにワクワク状態であるだろう。

 大人たちも子どもたちほどではないが、一般的には8月のお盆のタイミングでの長期連休が楽しみであるはず。新車ディーラーも、お盆のタイミングでそれぞれ期間にバラつきはあるものの、長期間店舗の完全休業を行う。

 ある地域の2024年における、いわゆる「お盆休み」の状況を見ると、最短で日産系某店の4連休、最長でホンダ系某店で10連休となっていた。全部で14の日系メーカー系正規ディーラーを調べたのだが、そのなかでは6日から8日間というのが一般的な休業期間となっていた。

 2024年は暦があまりよくないようで、休業期間も結構バラつきを見せていた。一般的には8月15日を挟んで前後を休みにして連休にするが、8月15日が木曜日となっているのである。長期休業するディーラーでも可能な限り週末を避けて平日を連休とするのが一般的なセオリーになっている。

 12日が「山の日」で休日となるので、休みがもっとも少ない4日間のディーラーはそこを避けて平日である13日から16日を休みにしていた。そのなかでは、10日(土)から12日(月/山の日)を休業とし(11日からというところもあった)、16日(金)までを連休とするディーラーが目立っていた。そして、17日もしくは18日から営業再開するディーラーがほとんどであった。

 ちなみに連続10日休業するディーラーでは、6日(火)から15日(木)まで連休となっているのだが、毎週火曜日と水曜日が定休日となっているので、6日間の夏休み前後に定休日をつなげて10連休となっていた。ほかのディーラーについても夏休み期間には定休日が含まれており、定休日の違いにより夏休み期間も異なっているともいえるのである。定休日を設けていなかったひと昔前ならば、12日から16日(かつては山の日はなかったので平日5日)を夏休みとして休業するのが一般的であったと考えられる。

 ディーラーは夏休みのほか、5月の大型連休と年末・年始にまとめて休業とするのが一般的。ただ、年末・年始以外は、車両の新規登録を受けつけている各地の運輸支局も暦通りに稼働している。「それなのになぜ?」という声もよく聞く。

長期休暇をモヤモヤした気もちで過ごすセールスマンも少なくない

「ディーラーによって長期休業を年末・年始以外にも設ける背景は異なりますが、メーカーの子会社的立場のディーラーも多く、販売現場にメーカーの人間が出向していることも珍しくありません。そこでメーカーの休業カレンダーに合わせるということもあるようです。また、ディーラーは販売代理店なのでお客から受注すると、当該車両についてメーカーへ発注する作業というものが発生します。メーカーが休みの間の受注案件はメーカーの休みが明けるまで『積み残し』のようになってしまいます。それでもいまはオンラインでのやり取りとなるので送りっぱなしでもいいではないかとも考えがちですが、メーカー側も『完全無人』というわけにもいかなくなるので、これもディーラーの夏休みなどが長期化しがちになった一因となっているのではないかとも聞いています。もちろん、現場で働く従業員の雇用環境改善というものも大きく働いているでしょう」とは事情通の話。

 新車ディーラーの創成期には日曜は休業が当たり前であった。個人需要よりも法人需要が絶対的に多かったこともあったようだ。その後も、マイカーブームが起きても日曜休業を続けていたが、バブル経済期になると史上空前レベルといえるマイカー需要が沸き起こり、日曜営業をはじめ、年数回の長期休業を除き定休日も設けずに営業するようになった。

 そのころを知る人は、「とにかく毎日深夜まで新車がよく売れました。1カ月休みなく働き続けることも珍しくありませんでした。それでも、『5月の連休や夏休み、年末・年始ぐらいはしっかり休もう』ということで、そこだけは必ず休めるようになっていました」とのこと。

 バブル経済崩壊後は経費節約という側面からも(店を開けていれば光熱費などがかかる)、店舗定休日を設けるディーラーが目立ってきた。その後は「働き方改革」、そして働き手不足もあり、店を開けたくても開けられなくなり、いまでは定休日を設けることは当たり前となっている。

 過去には月曜日から金曜日の平日5日間を連休にするのが一般的と前述したが、その当時は前後の土曜・日曜は半数出勤としていたので、店を閉めるのは5日でも、そこに勤めるスタッフは7日間の連休となっていた。しかし、深刻な働き手不足となっている現状では半数出勤を行うこともできない。これも店舗の長期休業がより進む原因となっている。

 新型コロナウイルスの感染拡大がひどかった2020年や2021年では広く行動自粛が求められ、小売り店舗の多くが自主休業するなかでも法定点検だけは請け負っていたこともあり、新車ディーラーは時短営業しながらも店を開け続けた。

 遠出や外食がなかなかできないなか、貯蓄だけが増え続け、そのはけ口として人々の視線は新車に向かったため、新車ディーラーはそれなりににぎわっていた。そのようなころは仮にお盆の時期でも店を開ければ集客を期待できたが、現状では帰省やレジャーに出かける人が多くなっているので集客は期待できない。

 過去には長期休業明けには休み中に事故などを起こしたお客からの板金修理依頼が殺到していたのだが、安全運転支援デバイスの普及もあっていまは板金修理が殺到することもなくなるなど、休みやすくなっていることも大きいようだ。

 ただ、そのぶん販売促進活動のための稼働日数はより減少していく。毎年8月の新車販売台数が極端に落ち込むのは、夏休みによる新車購買意欲の減退も大きいのだが、稼働日数不足ももちろん影響している。残業もなく休みも増えたが、ノルマとも呼ばれた販売目標などは大きく変化していない。長い休みの間をモヤモヤした気もちで過ごすセールスマンも少なくないと聞いている。