グルメのプロが発見!最近、1万円台で満足できるコスパ優良店が増えている!
日々、星の数ほどレストランをリサーチし、年間計500軒以上のお店を取材している「東京カレンダー」編集部。
そんなグルメのプロたちは、刻々と移ろうレストンシーンについて、以前からある“異変”を察知していた…!?
レストランの今に迫るトークを繰り広げるのは、この3人!
副編集長 中野愛子
レストランとの一期一会を大切に、どんな高級店でも悔いなきよう好きな酒を好きなだけ飲むのが信条。コース1万円前後のお店なら、お財布が安心な気がします。
これまで取材した店をGoogleマップでピン留めしたところ、600軒近く、特に港区恵比寿界隈はピンだらけ。最近はワインの勉強に日々奮闘している。
フードライター 小石原はるか
「東京カレンダー」の創刊当時から携わり、東京のレストランシーンの移り変わりを見守ってきた。ふと気づけば最年長スタッフとなり、ご意見番的ポジションに。
脱・激戦区?手頃でいい店のドーナツ化現象
中野:毎号いろいろなお店を紹介していますが、近年満足度が高い上にお料理が1万円前後、という嬉しいお店が増えてきているなあと思います。
小石原:確かに。コロナ禍を経て、出店エリアが必ずしも銀座や港区界隈など家賃の高い都心部でなくても良くなったことも理由のひとつかな、と。
中野:私的には、2022年の『渡辺料理店』の出現がパラダイムシフトだと思っているんですが、こちらも場所が門前仲町。
「出自がしっかりしていて、場所こそ中心部からはちょっと離れていても満足度の高い店がいい」という価値観が一気に浸透したのかしら。
小石原:東京を代表するグランメゾン『レカン』で料理長を務めた渡邉幸司さんの味を、コースなら8,500円でいただけるというのは画期的。瞬く間に予約困難店になってしまいました。
『渡辺料理店』
この店の誕生がパラダイムシフトだ!
中野:東京カレンダーの予約サイト「グルカレ」で、人気だったのが『懐食みちば』です。道場六三郎さんが監修するコースが1万890円と聞くと、インパクトがありますものね。
船山:『渡辺料理店』同様、スターシェフのネームバリューはやはりすごい。
小石原:松戸のスーパーマーケットの奥、という隠れ家的な立地にも驚き。
『懐食みちば』
巨匠の集大成が1万円という衝撃。
中野:日本料理で、個人的にびっくりしたお店といえば神楽坂の『日本料理 初志(ういさね)』です。
現在はコース1万9,800円ですが、最初に伺ったときは1万6,500円で「このお値段でこのクオリティ!?」ってとっても感動したので、語らずにはいられません(笑)。
船山:ぜひお願いします!
中野:神楽坂の奥路地、という立地がまず素敵な上、天井にアールがついている空間も居心地良し。主役のお料理は『菊乃井』で修業された大将の地元・愛媛の食材がふんだんに使われ、繊細かつ食べ応えあり。
食べて飲んで2万円前後くらいだったので「またすぐ来たい!」とその場で思いました。
『日本料理 初志』
食通から高い評価の丁寧な仕事がいい。
小石原:正統派の日本料理でこの価格帯のお店は、いまどき本当に貴重ですね。一方、イタリアンやフレンチは選択肢がぐっと増えています。
赤羽の『odorat』は、コースが7,000円から。カレーの名店『スパイスカフェ』でも修業経験のあるシェフ・永瀬友晴さんのお料理は香りの利かせ方が巧みで、かつ食後感が軽やか。温かみのある空間にも、心和みます。
中野:お店の情報を最初に聞いたときは「赤羽にフレンチレストランが!?」と、その意外性に驚いてしまいました。
『odorat』
赤羽でフレンチという鮮烈な登場。
船山:西小山にオープンした『caillou』も似たタイプのお店ですね。目黒から8分と、冷静に考えると都心部からまったく遠くない。でも、フレンチができるエリアとしては新鮮味がすごくありました。
そしてなんといっても、カウンターに並ぶ素材を選んで料理を決めるのが、ここならではで面白い。
小石原:このページに出ているお店の中で唯一コースメニューがなく、自分でディナーを組み立てるアラカルト形式です。
なので、お料理の知識がある程度あった方がより楽しめるけれど、シェフの安達晃一さんは優しい方なので、分からないことは尋ねればOK。
中野:極端なオーダーをしなければ1万円台で収まるはず……!
『caillou』
食材を選ぶスタイルで注目を集めた。
小石原:代沢の『DAN』は、駅からのアクセスは正直ちょっと、です。でも、高級食材も盛り込んだクオリティの高いコースが9,350円と、アンダー1万円。破格といっていいと思います。
中野:スマートな雰囲気も素敵♡
『DAN』
上質な食材をふんだんに使う贅沢。
1万円台のいいお店=ワンオペが多い!?
小石原:1万円台のいいお店に多く見られる特徴としてもう1点忘れてはならないのが、ワンオペのお店が多いこと。人件費を抑えて、食材に還元してくれていると考えるとありがたい限り。
船山:『La couleur d'ete』もそうですね。
中野:こちら、まだ伺ったことがないんですけれども、どんな感じです?
小石原:オーナーシェフの藤井トモヒロさんのお料理は、伝統的なフレンチの技法にのっとった……、ひと言でいうと“ノスタルジックなフレンチ”。
フランス料理好きにはたまらないお料理の名前がメニューに並んでいます。
船山:取材で伺いましたが、コースが1万2,980円からというのは、まさにワンオペならではの価格設定だなと思いました。シェフ自身がやりたいことを突き詰めているのも格好いい。
『La couleur d'ete』