「歩けない…」体操・ひろみちお兄さんを襲った“脊髄梗塞”の恐怖とは
〈機内で体調を崩し、下半身麻痺となり歩けなくなってしまいました〉
【画像】55歳にしてこの若々しさ、体操の「ひろみちお兄さん」
〈ご報告〉と題し、「脊髄梗塞」を発症したことを公表したのは、NHK「おかあさんといっしょ」に出演した体操の「ひろみちお兄さん」ことタレントの佐藤弘道(55)である。
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日本一有名な体操のお兄さん
健康な人を襲うことも...脊髄梗塞とは
佐藤を襲った脊髄梗塞とはどんな病なのか。脳梗塞・脊髄損傷クリニック総院長の貴宝院永稔医師が語る。
「背骨の中にある神経の束である脊髄に繋がる動脈が詰まってしまうことで虚血状態になり、脊髄組織の一部が死んでしまう病状のことです。発症年齢は10代から年配の方まで幅広く、男女差もない。健康な人を突如この病が襲うこともある」
体操のお兄さんだけあって、佐藤は普段から仕事で身体を動かし、中年太りとは無縁のスリムな健康体型を維持してきた。
「普段からエレベーターではなく階段を使うようにしたり、自宅でダンベル運動をしたりしていました。『わざわざジムに行く必要がないんだよ』なんて言ってましたね」(芸能関係者)
脊髄梗塞発症の原因は多岐にわたる。
「脊髄につながる血管が、大動脈手術の合併症、動脈硬化、血栓などで詰まってしまうケースのほかにも、血管自体が炎症を起こし、そのダメージで血流が悪くなるなど、発症のメカニズムは多様です。長年の不健康がたたることもあれば、突発的な不調が原因になる場合も」(貴宝院氏)
佐藤自身は移動中の「機内で」発症したと明かしている。飛行機での移動が原因だった可能性も「否定はできない」という。
「エコノミー症候群のように長時間同じ姿勢を強いられると血行不良で血栓ができ、何かの弾みで血栓が通常流れるはずのない動脈に“飛んで”しまう可能性もわずかにある。また高度の上昇に伴い一時的に機内の酸素が薄くなり、更に脱水状態などが加わることで脊髄へ送られる酸素が不足し、発症の誘因になってしまった可能性も」(同前)
家族との時間を大事に
佐藤は「おかあさんといっしょ」に出演を果たした2年後、日体大の同級生・久美子さんと極秘結婚。おしどり夫婦として知られる。子供は2人。長男も日体大を出て、家族ぐるみで体操教室も運営している。
「体操のお兄さん時代は、全国各地に呼ばれて家族とまともに過ごせない時期があった。そのぶん、今は家族との時間を大事にしている。息子さんとゴルフによく行っているようで、『もうスポーツでは息子に勝てないです』と笑っていた」(前出・芸能関係者)
今は全く歩けません――仕事も家庭も順調で幸せに満ちた日常を一気に塗り替える難病の襲来は、佐藤の心をも蝕みかねない。
4年半前に同じ病を発症した時の苦しみを語るのは、「脊髄梗塞患者の会」の川尻陽子代表だ。
「夫と泊りがけでバス旅行に出かけた2日目でした。旅館の応接セットに座った途端に両ももが脱力していくのが分かりました。両足を締め付けるような痛みが襲い、そのまま下半身不随となってしまいました」
それから投薬とリハビリによる闘いが始まった。
「立てない、歩けないに加え、痺れと痛みに悩まされ、排泄障害にはとても悲しい思いをしました。私は刺し子や読書をして常に襲ってくる痛みやストレスを紛らわせていました。リハビリを重ねて今では補助具や杖を使い少しずつ動けるようになっています」(同前)
リハビリで必要なのは「前向きな心です」と川尻氏は佐藤にエールを送る。
かぞくといっしょに苦難を乗り越えるしかない。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年6月27日号)