岸田文雄総理

写真拡大

 関東甲信が梅雨入りした6月21日、150日にわたる通常国会が事実上閉幕。岸田文雄総理が“火の玉”となって取り組んだ政治資金規正法の改正や、定額減税も国民から総スカン。自民党内からは、公然と総理の退陣を求める声が出始めた。

【写真をみる】「さわやかな笑顔」が印象的な小林鷹之氏(49)

小泉進次郎氏は「とっくに見限られている」

 政治部デスクが指摘する。

自民党では選挙が弱い中堅や若手が総裁の若返りを求めています。多くが一致して名前を挙げるのが、3年前に発足した第1次岸田政権で、初代経済安保相として初入閣を果たした旧二階派の小林鷹之氏ですね」

 小林氏は財務官僚を経て、2012年に衆院千葉2区で初当選。49歳ながら当選4回を誇り、外交・安保にも強い政策通の上、清新なイメージで党内外に存在感を示しつつあるという。

岸田文雄総理

 ん? 自民党の若手総裁候補といえば、小泉進次郎元環境相ではなかったか。

「進次郎氏には知名度に見合う理念や具体的な政策が乏しい。世代交代を訴える中堅以下の評価は“メッキは剥がれた”“空疎なイメージだけ”だそうで、とっくに見限られているとか」

小林鷹之氏「急浮上」の背景

 世間的にほぼ無名。その小林氏が急浮上した背景を、自民党中堅議員が解説する。

「9月の総裁選を見越して、麻生さん(太郎副総裁)と菅さん(義偉前総理)が強烈な綱引きを始めている。降って湧いた新顔の擁立話は、その延長線にある」

 どういうことか――。

自民党の勢力図をざっくり言えば、麻生・茂木系が30%、岸田系が15%、菅・二階系も15%、そして旧安倍派・無派閥が40%という具合。麻生さんは、自派と茂木・岸田派との3派連合で半数近くを固めて岸田再選を基本線と考えていた」

 ところが、岸田総理はあまりに不人気。

「さりとて茂木さん(敏充幹事長)を立てようにも、岸田総理は政権を蔑ろにしてきた幹事長を“絶対に許さない”と恨み骨髄。旧参院茂木派も茂木さんと確執があり、総理に同調するとみられている。つまり、現状で茂木さんには総理・総裁の芽はほとんどない。そこで、長らく財務省の“守護神”を務めた麻生さんは、財務官僚らも後押しする小林に目を付けた」

麻生氏の巧妙な“作戦”

 ポイントは、小林氏が旧二階派所属という点。

「対立する菅さんが石破茂さん(元幹事長)や進次郎を擁立すれば、そこに岸田総理が乗り換える可能性も。となると、麻生さんらは非主流派に転落しかねません。麻生さんは、自派の大物で経済安全保障族を仕切る甘利明さん(元幹事長)を通じて、彼の子分の小林を一本釣りすることにしたワケ」

 甘利氏と菅氏は、長年にわたって神奈川県で覇権を争うライバル同士だ。

「38人の旧二階派は、菅さんに近い親武田(良太元総務相)派と反武田派に割れています。小林の擁立で揺さぶられれば、菅さんと距離を置く反武田派は小林支持で動きますし、展開次第で派閥全体が麻生派に同調することもある。菅さんの復権を警戒する甘利さんの意向に沿う、現実的かつ巧妙なやり方といえます」

 当の麻生派関係者が言う。

「小林は岸田総理と同じ開成高校の出身で、閣僚として総理を支えた。総理は茂木のことは嫌いでも、小林なら支持できるでしょう。菅が小林と同年代の進次郎を持ち出しても、人柄の面でも能力的にも圧倒的にこちらが上です」

 期待のホープも、首輪には長老が握るリードが――。

「週刊新潮」2024年7月4日号 掲載