by The Legend Kay

長年、個人的な経験を思い出して次の行動に生かしたり、前もって計画を立てたりするような認知能力は人間だけが持つものと考えられてきました。しかし、こうした能力をコウモリも保持していることが研究により示されています。

Time-mapping and future-oriented behavior in free-ranging wild fruit bats: Current Biology

https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(24)00689-4

Wild bats found to possess high cognitive abilities previously considered exclusive to humans

https://phys.org/news/2024-07-wild-high-cognitive-abilities-previously.html

テルアビブ大学のヨッシ・ヨベル氏らは、大学併設のI・マイヤー・シーガルズ動物研究園で放し飼いされているエジプトルーセットオオコウモリをGPSトラッカーで追跡し、対象のコウモリがどのようにエサを集めているのかを調査しました。

調査における一つ目の課題は「コウモリは時間の経過を認識できるのか?」というものでした。通常、コロニーから出てエサを探しにいったエジプトルーセットオオコウモリは、長期間にわたって実を付ける樹木と短期間実を付ける樹木を選んで飛び回るそうです。短期間実を付ける樹木は早々に実がなくなってしまうため、エジプトルーセットオオコウモリは長期間にわたって実を付ける樹木に毎晩のように訪れるそうですが、これはエジプトルーセットオオコウモリが木の性質をある程度理解していることを示しています。

コウモリが時間の経過による実の枯渇を認識できるのかを調べるため、研究者たちはコウモリを1日から7日ほど捕らえ、コロニーから出られないようにしました。

その結果、1日だけ捕獲したコウモリは前の晩に訪れた木を訪れてエサを探しにいきましたが、7日捕らえたコウモリは長期間実を付ける樹木を訪れる傾向が強かったとのこと。この傾向は、経験豊富なコウモリほど強くなりました。

この結果から、ヨベル氏らは「エジプトルーセットオオコウモリは木の性質と経過した時間の両方を認識していることを示唆している」と結論づけています。



by The Legend Kay

ヨベル氏らはもう一つ、エジプトルーセットオオコウモリが未来について考えられるのかについても調査しました。

I・マイヤー・シーガルズ動物研究園で飼育されているエジプトルーセットオオコウモリは、夕方早くにコロニーから出てエサを探しにいく個体もいれば、コロニーから出る直前までボウルに置かれた果物を食べている個体もいるそうです。人間が用意した果物は糖分と水分が豊富でタンパク質が乏しいため、ヨベル氏らはまず、コロニー内でエサを食べなかったコウモリは水分の多い果物を求めて飛行し、エサを食べたコウモリはタンパク質を求めて樹木へ訪れるのではないかという仮説を立てました。

ヨベル氏らが15頭のエジプトルーセットオオコウモリを追跡した結果、エサを食べずにコロニーから出たコウモリは仮説通り水分が豊富な実を付ける樹木へ向かい、エサを食べたコウモリはタンパク質が豊富な実を付ける樹木へと飛行する傾向が強かったとのこと。また、コウモリは自分が知っている特定の木に脇目も振らずに飛び、選んだ目標に集中するため他の木や昨日行ったばかりの良い木でさえ通り過ぎることも判明したそうです。



ヨベル氏らはこれらの結果から、「エジプトルーセットオオコウモリは、コロニーを離れる前に採餌の計画を立て、自分がどこを飛んでいて、どんな栄養を求めているのかを正確に知っていることを示唆している」と結論づけています。

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