アルツハイマー病研究者が研究資金1600万ドル不正受給のためデータ捏造・改竄を行ったとして訴えられる
アメリカの連邦検察が2024年6月27日に、アメリカ国立衛生研究所(NIH)から約1600万ドル(約25億円)もの連邦助成金をだまし取ったとして、ニューヨーク州立大学のホァウヤン・ワン教授をメリーランド州の連邦大陪審に対し起訴しました。アルツハイマー病の治療法と診断検査についての研究を実施していたワン被告人は、不正に助成金を得るために科学データの捏造(ねつぞう)や改竄(かいざん)を行ったと指摘されています。
https://www.justice.gov/opa/pr/professor-charged-operating-multimillion-dollar-grant-fraud-scheme
gov.uscourts.mdd.562688.1.0.pdf
(PDFファイル)https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.mdd.562688/gov.uscourts.mdd.562688.1.0.pdf
Cassava Sciences Issues Statement on Former Science Advisor | Cassava Sciences, Inc.
https://www.cassavasciences.com/news-releases/news-release-details/cassava-sciences-issues-statement-former-science-advisor
Embattled Alzheimer’s Researcher Is Charged With Fraud - The New York Times
https://www.nytimes.com/2024/06/28/health/wang-cassava-alzheimers-fraud.html
法定文書によると、ワン被告人は2015年5月頃から2023年4月頃にかけて科学データを捏造または改竄した研究結果を基にNIHに対して助成金を申請。その結果2017年から2021年にかけて約1600万ドルもの助成金が授与されました。アメリカ司法省(DOJ)によると、助成金の一部がワン被告人の研究費用や給与に充てられたとのこと。
ワン被告人はこれまで、バイオテクノロジー会社のCassava Sciencesで、アルツハイマー病の診断検査と、アルツハイマー治療薬であるシムフィラムの研究に携わってきました。
しかし、一部の科学者からはシムフィラムが作用するメカニズムと治療結果について疑問の声や(PDFファイル)検査における問題が挙がっていました。また、かねてよりCassava Sciencesとワン被告人が実験結果を操作したと非難する声もあり、いくつかのジャーナルは、Cassava Sciencesとワン被告人が共著した論文を撤回しています。
こうした懸念から連邦検察はワン被告人を大規模な詐欺1件、電信詐欺2件、虚偽陳述1件の容疑で起訴。有罪となればワン被告人には最高で禁錮55年が科せられることになります。
また、ワン被告人が教授を務めるニューヨーク州立大学も独自の調査を実施しており、調査委員会は「31件の申し立てのうち14件について、ワン被告人による意図的な科学的不正行為を強く示唆する証拠を発見しました」と報告しています。また、ワン被告人が改竄前の研究データを保存していないことも明らかとなっており。調査委員会のメンバーは「これは重大な研究不正行為に相当します」と批判しており、広報担当者は「問題が解決するまで、連邦捜査局(FBI)の調査に最大限協力します」と述べています。
NIHのレナート・マイルス広報は「NIHは今回の研究不正を非常に深刻に受け止めています。我々は受け取った全ての研究不正の申し立てを迅速かつ慎重に検討します」と報告しました。