株式会社エコノスに隣接するハードオフの店舗(写真/小林英介)

写真拡大

古本買い取り・販売事業を展開するブックオフグループホールディングス(以下ブックオフ)は、6月25日に開いた取締役会で、7月16日に予定していた2024年5月期決算発表を延期すると発表した。また同時に弁護士らで構成する特別調査委員会を設置し、とある事案について調べるとしている。

ブックオフとハードオフで不正事案

ブックオフによると、複数の店舗で従業員が架空買い取りや、在庫の不適切な計上をしており、現金を不正に取得した可能性があるという。業績への影響は現在調査中で、何らかの状況が判明すれば速やかに知らせるとしている。

ブックオフが決算発表の延期を発表した同日、北海道札幌市に本社を置き、フランチャイズでハードオフなどを運営する株式会社エコノスも「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」との文書を公表。

今年5月、同社が運営する特定のハードオフ店舗で、従業員が商品買い取りを偽装したほか、買い取った商品を持ち出して私的に消費した可能性があると報告した。

内部監査で発覚、ハードオフ店長は調査途中で行方不明に

エコノスはこの事案をうけて5月17日に特別調査委員会を設置し、調査を進めてきた。そして、調査結果がまとまったため、6月25日に報告書を公表するに至った。

報告書によると今年4月、エコノスがとあるハードオフの店舗Aに内部監査を行った。その際、棚卸し資産の一部をサンプルとして抽出。資産が実際にあるか調べたところ、複数の商品が確認できなかったため、追加で調査を続行したという。その調査の中で、ほかの社員から「防犯カメラ映像から店舗Aの店長Bが顧客からの商品買い取りを偽装し、架空買い取りをしている」「買い取り商品を持ち出し、私的に消費した可能性がある」との通報があった。

それを踏まえ、エコノスは今年5月に改めて実地で棚卸しを行い資産の状況を調べたところ、買い取り金額ベースで3200万円相当の在庫が所在不明になっていたことが判明。店舗Aの店長Bに話を聞こうとしたがBは調査途中で失踪、現在も行方は分かっていない。Bは22年5月から店舗Aの店長として赴任していた。

車への積み込みを偽装、スタッフが手薄な時間を狙う?

調査委員会は、店舗Aの人員配置上、店舗内にパート勤務の従業員しかいない時間帯もあったと指摘。パート従業員はタブレットを用いた細かい業務内容をすべて把握しているわけではないことから、その時間帯を狙って架空買い取りの操作をタブレットで行うことも可能だったとした。

店長Bが店舗内の商品を無断で持ち去ったことについては、店舗内のスタッフ数が手薄になる時間を狙い、駐車場の顧客の車へ積み込みを装い実行できたと見解を示した。持ち去った商品は、具体的に店舗Aで陳列し、販売している商品のほか、買い取り後にカウンターの中で一時保管している商品、店舗のバックヤードや倉庫に保管している商品だった。入念に準備を重ねた末の行為だったことは、明らかだろう。

なお、今年5月末にはブックオフを除いたすべての店舗を対象として臨時棚卸しを実施。特段の問題はなかったとし、正社員161人、パート従業員449人を対象にアンケート調査を行ったが、架空買い取り行為を認識している社員はいなかったとしている。

報告書では、原因の分析も行っている。調査委員会が検証した結果、以下のような原因が考えられるとした。

(1)買い取り時のルール・チェック体制の不備
(2)棚卸し時のルール・チェック体制の不備
(3)その他の内部統制上の不備
(4)コンプライアンス意識等の不足

そのうえで、再発防止策として(1)~(4)の体制構築に加え、内部監査体制強化、不正防止に向けたシステム改修などを提言した。

国内外のすべての店舗で臨時の棚卸しを実施する予定

本稿記者の取材に応じたエコノスの担当者は本件について、「調査委員会が発表している報告書以外のことは何もお答えできない」とコメント。ブックオフの担当者も取材に応じ、「今開示できる事項は、7月1日までに棚卸しを実施することくらい。細かい点は調査中」と回答した。

ブックオフホールディングスの担当者が言う通り、事態を受けて一部のブックオフ店舗では6月27日から休業、棚卸しを実施するという。また、ブックオフが6月25日に出したプレスリリースでも、今後、国内外のすべての店舗で臨時の実地棚卸しを実施する予定としている。

1990年に神奈川県相模原市でブックオフの直営第1号店、93年にはハードオフ1号店「新潟紫竹山店」がオープンしているが、同じ系列店ではなく別の会社であることは、一度確認しておきたい。今や日常生活の風景の一部として当たり前の存在となった両店。ひとまずは、調査結果の続報を待ちたいところだ。