◆25年続いたインテルの天下、ではエヌビディアの天下は?

 アップルに対しては株式市場の評価が急速に好転したが、対照的に市場から厳しい見方を受けているのが、インテル だ。長年、半導体の盟主として君臨していたインテルだが、今回のAI相場の中でただ一人、"蚊帳の外"と言っていい。業績はどん底だし、パット・ゲルシンガーCEOはことあるごとに同社のAI戦略を打ち出しているのだが、いまや市場はまったく聞く耳を持っていない。

 インテルの凋落には3つの要因がある。一つはEUV露光技術への対応だ。EUV露光装置はASML が2016年12月期第2四半期に初めて売り上げを計上した。納品先はTSMCまたはサムスン電子と思われる。いまでもそうだが、EUV露光装置はとにかく高価で、しかも扱いづらい。初期のEUV露光装置はオペレーションに習熟するまで最低1~2年はかかっていたと思われる。インテルはこの時、EUV露光装置を導入せず、一世代前のArF液浸露光装置で半導体の微細化を進めようとした。この8年前の決断が、いまになって響いているのだ。

 次に挙げられるのは、同社は先端半導体を生産開始した場合、最初にPC向けに生産しようとするところだ。実はいまの半導体は、PC向けよりもサーバー向けの方が、圧倒的に単価が高い。飛ぶようにパソコンが売れたPC普及期ならいざ知らず、いまのような環境では、PC向けを優先していたら経営効率が落ちてしまう。これは、同社が生産をすべて自社で行うIDM(垂直統合型デバイスメーカー)だからということもある。この体制では、一度決めた生産計画を途中で変更することができないからだ。

 それに対してTSMCは設計を行わず、製造に特化したファウンドリーなので、IDMに比べれば状況の変化に機動的に対応することができる。エヌビディアのような工場を持たないファブレス・メーカーとファウンドリーの組み合わせが最適だというのが、現時点での結論なのだ。あとはやはり、GPUの製造能力をほとんど持っていないことは、現在のAIムーブメントの中では致命的だ。これはインテルが本来、CPUのメーカーだからやむを得ないのかもしれないが。

 もちろん、インテルも復活をあきらめているわけではない。4月にASMLの2ナノ半導体向けの次世代型EUV露光装置(High-NA型)をTSMCに先駆けて工場に設置したのもその表れだし、アメリカ政府も国内半導体支援策、CHIPS法によって強力に同社を後押ししている。だが、これからTSMCをキャッチアップするのはかなり難しい、というのが市場の見方だし私も同感だ。

 1995年に「Windows95」が発売されてから、インテルは20年以上、半導体産業をリードしてきた。いま、その時代が終わり、エヌビディアが新たな半導体産業の盟主となった。こう見るのが自然ではないだろうか。

◆まずはマイクロン、そしてTSMC、ASMLの決算に注目

 ここまで、24年前半のAI相場を振り返ってきたが、すでに後半戦、次の決算シーズンが間近に迫っている。まずは今週発表のマイクロン・テクノロジー の決算に注目したい。AI半導体に不可欠であるHBMの売り上げが順調に伸びているのか、確認したい。