ミニPCを精力的に展開しているBeelinkから、Intel N200を搭載した小型デスクトップPC「Beelink EQ13」が登場しました。昨今注目されているN100搭載ミニPCに近いお手頃価格や省電力性能はそのままに、少しパワーアップした新作です。

今回はサンプルを試用する機会に恵まれたので、さっそく実機レビューをお届けします。

Intel N200搭載ミニPC「Beelink EQ13」。Amazonでは46,800円+3,000円引きクーポンで販売中(6月25日時点)

スタイリッシュな新設計ボディは「電源内蔵」がうれしい

Beelinkの同クラスの製品としてはN100搭載の「EQ12」が約1年前に発売されています。Amazon.co.jpにおける6月25日時点の販売価格はEQ12が30,800円、EQ13が43,800円(クーポン適用後)と価格差があるのですが(どちらもメモリ16GB/SSD500GBの構成)、Beelink公式サイトでドル建ての価格を見ると実はEQ12もEQ13もまったく同じ259ドル。

つまり、現状では輸入時期の違いから円安の影響で国内価格に差が付いているものの、本来N100搭載モデルと変わらない価格でN200搭載モデルが手に入る可能性を秘めているということで、今後の値動きに注目です。

16GBメモリと500GB SSDが組み込まれた完成品の状態で販売される

気になる性能をチェックする前に、外観や付属品についても触れておきましょう。この手のミニPCではスペックの異なる複数の機種で共通のボディを使ってコストカットしているのが常ですが、EQ13はEQ12と異なる新設計のボディを採用しフルモデルチェンジしています。

外観をぱっと見て分かる違いとしては、側面の通気口が無くなり底面+背面に集約され、前面のデザインも変わり、全体的に要素が整理されスタイリッシュになった印象。USB Type-C端子が背面から前面に移されたのも、通常のPCとして利用する場合には重宝しそうです。

前面にはUSB-A、イヤホンジャック、USB-C、電源ボタンが並ぶ

背面にはUSB-A×3、HDMI×3、有線LAN×2と電源端子。小さなスペースにぎっしりとインターフェースが詰め込まれている

そして、約126×126×39mmというコンパクトなボディに電源を内蔵したことにも注目。EQ12ではACアダプタが必要でしたが、これで配線もスマートになり、ミニPCならではの省スペース性に磨きがかかりました。

付属品は電源ケーブルとHDMIケーブルのみとシンプル。そう、大きなACアダプタは必要ないのだ

本体内部にアクセスするには、裏返して四隅にあるゴムキャップを取り外してからネジを外します。ベアボーンキットで提供される機種ではないので、分解のしやすさはさほど重視されていないのかな?と思いきや、ネジを取ったあとに裏蓋を引き上げるためのつまみがご丁寧に用意されているのはちょっと不思議な作りです。

裏蓋を取ると、左側にSO-DIMMのDDR4メモリスロット(1枚)、右端に内蔵電源ユニットが見えます。中央に鎮座する大きな黒いヒートシンクを外すとM.2(Type 2280)SSDが現れ、隣に空きスロットが1つあります。標準搭載されるSSDは1枚ですが、2枚搭載することを前提にした位置・サイズのヒートシンクが備わっているのは増設時にありがたいところ。

最初から入っている右側のスロットのSSDの下には無線LANカードが隠れており、Intel AX101が採用されていました。

四隅のゴムキャップを外してネジを取れば、裏蓋を外して内部にアクセスできる

左から順にメモリ、SSD用ヒートシンク、電源が見える

SSDの増設を見越して、2枚カバーできるサイズのヒートシンクを備えている

「N200」を搭載したミニPCは意外と貴重

Alder Lake-Nプロセッサについておさらいしておくと、Jasper Lake世代のCeleron/Pentium Silverの後継として2023年初頭に登場したエントリー向けCPUです。

それだけならさほど注目される存在ではなかったでしょうが、Pコア(高性能コア)とEコア(高効率コア)を組み合わせたハイブリッドアーキテクチャの第12世代CoreからEコアだけを拝借して生まれたという経緯から、新世代のCPUコアが使われ大幅にパワーアップしており、ミニPCやUMPCなど低価格・省電力と相性の良いジャンルで続々と採用され盛り上がっています。

Alder Lake-Nには、Intel Prosessor N50/N95/N97/N100/N200、Core i3 N300/N305というバリエーションがあり、基本的に数字が大きいものほどCPUのコア数とクロック、内蔵GPUのEU数が上になっています。

搭載製品が多いのはN95やN100あたりで、N200はLenovoやHPのChromebookのほか、法人向けですがSurface Go 4に採用されている程度。「N100の上位版」という気になる存在でありながら、ミニPCでは意外と珍しいCPUです。

N100とN200の仕様上の違いとしては、CPUクロックが3.4GHzから3.7GHzに向上し、GPUが24EUから32EUに増える程度。多少グラフィック性能が上がるとはいえ、ゲームや動画編集のような「N100では出来ないことが出来る」というほどの差ではないですし、性能差を実感できる場面は少ないかと思います。

とはいえ、モバイル向け(Uシリーズ)の第8世代Coreプロセッサと同等程度には快適に使えてしまうAlder Lake-Nのコストパフォーマンスの高さには改めて驚かされます。ベンチマーク結果もいくつか添えておきますが、Google Chromeで十数個タブを開いて作業したり、YouTubeでフルHDの動画を再生したりしてみても不足はなく、事務用途なら十分快適に使えます。

PCMark 10のベンチマーク結果

3DMark(Steel Nomad Light)のベンチマーク結果

ファイナルファンタジー XIV: 黄金のレガシー ベンチマーク

システム全体の消費電力は最大25Wと、常時起動させておくような使い方でも安心な省電力仕様です。また、ファンレスかと錯覚するほど静かなのも印象的でした。先述の通りEQ13は新設計のボディを採用しており、電源を内蔵しただけでなくエアフロ―も見直されています。底面吸気・背面排気でファンの回転が低速で済むよう考えられており、動作音は公称28dB。図書館よりも静かなレベルですから、周囲の音に溶け込みほとんど気になりません。

ただ、性能重視でAlder Lake-N搭載ミニPCを選ぶならN200搭載の本機がベストなのか?と問われると疑問が残ります。メモリがDDR4であったり、初期搭載のSSDがSATAであったりと(NVMe SSDも利用可)、物によってはN100搭載モデルに劣る点もあります。

初期搭載されているSSD(メーカー不明)でCrystalDiskMarkを実行した結果。SATAということもあって速度は今ひとつ

しかし、Alder Lake-N搭載ミニPCらしい安価で遊び甲斐のあるマシンであることは確かです。設置場所がごちゃつかない電源内蔵型であることや付けっぱなしでもストレスにならない優れた静音性だけでなく、SSDを増設できる空きスロットや2基の有線LANポートを備える拡張性の高さも見どころ。通常のPCとしての利用はもちろん、OpenWrtを入れてルーターにしたり、CasaOSあたりで簡易的な自宅サーバーを作ったりと色々な楽しみ方が出来そうな遊べる一台です。