Illustration: ESO/L. Calçada/M. Kornmesser/Nick Risinger|カリクローは環を持つと発見された最初の小惑星です

太陽の周りを公転している天体には8個の惑星、少なくとも5個の準惑星、何万もの小惑星、約3兆の彗星と氷天体などが存在します。

太陽系の天体のどれもが地球や木星ほどの知名度を誇るわけではありませんが、それでも我々の星系の大事な部分を占めていますし、太陽系の起源の理解に役立っています。

準衛星から環を持つ小惑星に至るまで、メジャーどころではないけれど個性的な太陽系の天体をまとめました。

アロコス

Image: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute

アロコスはカイパーベルトに存在する古代の微惑星として、恐らく40〜45億年前に太陽系外縁部の氷粒子から形成されました。

探査機「ニュー・ホライズンズ」が2019年1月に探査するまで、科学者たちはこの氷の天体についてほとんど知らなかったとか。その当時、探査機は地球から65億kmも離れていて、太陽系内の天体で最も遠い距離の探査となったのです。

ニュー・ホライズンズから送られた画像では、アロコスはデコボコの球体2つが結合したように見えていました。2つの球体には起源のわからない明暗の模様と、2つを隔てる明るい“首”のような部分があります。

NASAによれば、これらの特徴は太陽系の形成時にこの天体が集合体となった過程についての手掛かりをもたらす可能性があるそう。

カリクロー

アーティストによる、カリクローの地表のイラスト
Illustration: NASA/JPL

カリクローはケンタウルス族の中で一番大きく、小惑星として環を持つと発見された最初の天体です。ケンタウルス族は彗星のような組成(氷の天体)と小惑星の大きさをもつハイブリッドな天体。通常、木星と海王星の間不安定な軌道で見つかっています。

カリクローはただのケンタウルス族ではありません。まわりに氷粒子の環が2本あることも判明しています。それゆえ、太陽系で環を持つ初の小惑星として知られているのです。

NASAいわく、カリクローの直径は地球の約51分の1で、環は天体の中心から約400km地点を周回しているとか。

ミマス

Image: NASA/JPL/Space Science Institute

土星の衛星ミマスはクレーターに覆われていて、『スター・ウォーズ』に出てくる帝国の巨大宇宙要塞にそっくりなことで知られています。同衛星の先行半球の大部分を覆う幅約130kmのハーシェル・クレーターがあるから、異様に似ているのです。

土星の主要な衛星の中では最小で最も内側にあるミマスの公転周期は、たったの22時間36分。NASAによると、ミマスは土星のすぐ近くを周回し、同じく土星の衛星で水の間欠泉が存在するエンケラドゥスよりも遥かに細長い軌道を持っています。数カ月前には若い地下海が存在するという研究が発表されたばかりです。

ケレス

Image: NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA

ケレスは小惑星帯で最初に発見された天体でした。当初は小惑星として分類されたものの、他の小惑星よりもはるかに大きく、まるで異なっていたため、のちに準惑星に“昇格”されたのです。冥王星と併せて、2006年に準惑星に指定されました。

現在、ケレスは内太陽系に位置する唯一の準惑星であり、火星と木星の間に存在する小惑星帯の中で最も大きい天体です。NASAによると、ケレスは直径が940kmで、小惑星帯の質量の総量の35%を占めているとのこと。

冷たくて暗いクレーターには水の氷が豊富に蓄積されているため、この準惑星は太陽系の中でも生命を宿せる可能性のある場所のひとつとなっています。

ディンキネシュ

Image: NASA/Goddard/SwRI/Johns Hopkins APL

ディンキネシュは最初こそ小惑星帯に存在する小さな小惑星のように思われましたが、この小さくゴツゴツした天体は驚きに満ちていたとわかりました。

NASAの探査機「ルーシー」が2023年11月に同小惑星へのフライバイを実行し、この天体が抱える大きな秘密、ディンキネシュの周囲を公転する接触二重小惑星の存在が判明したのです。

この衛星「セラム」は互いに接触した状態の2つの小さな天体で構成されています。アムハラ語で“驚異的”という意味のディンキネシュは直径790m、セラムは直径220mとのこと。

カモ・オアレワ

月のクレーター。カモ・オアレワは月への激しい衝突から生まれた可能性があります
Image: NASA/Goddard/Arizona State University

地球の衛星はひとつですが、衛星みたく振る舞っているように見える既知の準衛星は7つ存在します。準衛星は地球から見ると、地球の周りを公転しているように見えますが、実際は地球と同期して太陽のまわりを公転しているにすぎません。

2016年に発見された地球近傍小惑星カモ・オアレワの名称は、ハワイ語で“振動する天体”という意味。幅は40〜100mほどの小さな小惑星で、地球に似た軌道であることからユニークだと考えられていました。

この準衛星はこの先数百万年にわたって太陽の周りを回る地球の軌道を辿ると予測するモデルを根拠に、知られている準衛星の中で最も安定しているという評価を得ています。

2017 YE5

Gif: NASA/JPL-Caltech

二重小惑星自体は珍しくないですが、質量がほぼ同じ小惑星が互いの周りを回っているのはかなり不思議なものです。

ほとんどの二重小惑星は、片方が著しく大きいため等しくはありません。ところが2017 YE5はそれぞれの直径が約900m。しかしながらこのペアは全く同じというわけではなく、片方がもう一方よりもかなり濃い色なので異なる物質で構成されているかのように見えます。

NASAによると、この小惑星は2018年6月21日に地球への最接近を果たしました。地球から600万kmの距離、地球と月の距離の約16倍に相当する近さまで迫ったそう。次に地球に接近するのは170年後になります。

イオ

Image: NASA/Image processed by Kevin M. Gill

岩石でできたイオは、太陽系で最も火山活動が活発な天体です。木星の4大衛星「ガリレオ衛星」の中で最も内側にあり、木星及び衛星のエウロパとガニメデからの重力相互作用を受けています。それによって常に膨張・収縮し、火山活動が生じるとされています。

イオの表面には、数百ある火山とケイ酸塩溶岩の湖がまるで無数のヤケド痕のように散らばっており、地表全体が荒んでいます。

ハウメア

Illustration: NASA

カイパーベルトに存在する全天体の中でも、ハウメアほどユニークなものはないかもしれません。

この準惑星は自転周期が太陽系の中でも最も速い天体のひとつで、結晶質の水氷で覆われています。そんな高速自転ゆえ、細長いジャガイモかラグビー用ボールのような形をしています。ハウメアは2つの衛星ヒイアカとナマカを従えていて、太陽の周りを285年間かけて一周します。

67P チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星

Image: ESA/Rosetta/NAVCAM - CC BY-SA IGO 3.0

1969年10月22日、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は他の彗星からスポットライトを奪う形で発見されました。クリム・イヴァノヴィチ・チュリュモフがロシアのアルマ・アタ天文台でコマス・ソラ彗星の写真乾板を調べているときに、この木星族彗星を発見したからです。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、地球からの探査機が周回・着陸した史上初の彗星となったことで歴史に名を残しました。このマイルストーンが成し遂げられたのは、探査機「ロゼッタ」がランデブーに成功した2014年8月。この彗星は1840年代のどこかで木星のかなり近くを通過した後カイパーベルトから落ちて、太陽系の内側に引き寄せられたと考えられています。

木星のトロヤ群小惑星

Illustration: NASA

トロヤ群小惑星は、太陽の周りを公転する木星を先導、後追いする小惑星のグループです。木星と太陽の重力が均衡する地点に留まっており、外惑星を形成した原始的な物質の残りだと考えられています。この小惑星群は、少なくとも40億年前から存在していた可能性があります。

NASAの探査機「ルーシー」は現在、トロヤ群小惑星の探査に向かっている途中。2021年10月に打ち上げられ、2027年と2028年に目標小惑星に到達する予定です。

マケマケ

Illustration: NASA Visualization Technology Applications and Development (VTAD)

2005年3月に発見されたマケマケは、国際天文学連合が惑星の定義を再検討するきっかけとなり、準惑星という新たなグループがつくられました(冥王星にとっては残念な話です)。

この準惑星は冥王星よりもわずかに小さく、見かけの等級がカイパーベルトでは2番目の天体になります。マケマケは太陽の周りを305年かけて一周しています。

アポフィス

Illustration: The Planetary Society

2004年に発見された当初、直径約335mの地球近傍天体アポフィスは、地球に衝突し得る最も危険な小惑星のひとつと呼ばれていました。

しかしながらその後の観測によって、同小惑星は少なくとも今後100年間は地球に衝突するリスクがなく今のところはパニックに陥る必要はないとわかり、科学者たちを安心させました。

アポフィスは2029年4月13日に地球フライバイの軌道にあり、地球から3万2000kmも離れていない近距離を通過すると予想されています。

カロン

手前が冥王星、奥がカロンです
Image: NASA/JHUAPL/SwRI

冥王星の5つある衛星で最大のカロンは、冥王星のおよそ半分の大きさです。NASAによると、母天体に対して最も大きな衛星として知られているとか。

カロンは冥王星を6.4日間かけて周回し、昇ることも沈むこともありません。そのかわり、同じ面を常に冥王星に向けて、惑星の上空の一点に留まり続けます。

パラス

Image: MIT/Marsset et al.

ギリシャ神話に登場する知恵の女神の名に由来するパラスは元々1802年に発見され、ケレスに次いで見つかった小惑星となりました。

パラスは小惑星帯の中で3つ目に大きな天体で、月の7分の1の大きさです。同小惑星は惑星に成長できなかったものの名残りだと考えられていて、表面は過酷な歴史を示唆するクレーターに覆われています。

ヒペリオン

Image: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute

ヒペリオンは土星の非球形の衛星では最大のものであり、その平均半径は135km。このいびつな形状の衛星は、宇宙空間を転がっていくかのように土星を周回しながらカオス的な自転をしています。

NASAいわく、科学者たちはこの衛星がその形状からして、大きな衝突によってバラバラになった巨大な衛星の名残りかもしれないと考えているとか。

ベスタ

Image: NASA

こちらはNASAの探査機「ドーン」が捉えた、小惑星ベスタのクローズアップ画像。天体の下側、南極にそびえ立っているのはエベレストの2倍以上の高さの山です。

ベスタ自体は小惑星帯では(ケレスに次いで)2番目に大きい天体で、準惑星に分類される可能性のあるほぼ球体の小惑星です。

ダイモス

Image: Mohammed Bin Rashid Space Centre

ダイモスは2つある火星の衛星の小さい方で、もうひとつの衛星フォボスよりも外側の軌道を回っています。NASAによれば、この小さくてゴツゴツとした天体の大きさは15 ×12×11km、公転周期は30時間。

ダイモスのことはあまりわかっていませんが、2023年1月に探査機が近接通過したところ、その起源がこれまで提案されていた火星の重力に捕獲された小惑星ではなく、火星から分離した一部だった可能性が示唆されました。

ベンヌ

Image: NASA/Goddard/University of Arizona

この小惑星がことさら特別なのは、現在その一部が地球にあるからです。ベンヌは6年ごとに地球の近くを通過する小さな地球近傍小惑星です。

ベンヌは恐らく7〜20億年前にもっと大きくて炭素に富む小惑星から分離した後、以前よりも遥かに地球の近くへと漂ってきたと考えられています。その近さを利用したNASAの探査機「OSIRIS-REx(オシリス・レックス)」は、同小惑星の一部を採取し、2023年9月にユタ州の砂漠に投下しました。

サンプルの初期分析からは多量の炭素と水の分子が明らかになりました。それこそ、NASA初の小惑星サンプルリターンで科学者たちが見つけたいと思っていたものでした。

Source: NASA Science(1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, ), NASA JPL, NASA, Massachusetts Institute of Technology,

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