Adobeが「ユーザーコンテンツをAI学習しない」と明記する形へ利用規約を再度全面見直し
2024年6月に更新されたAdobe Creative Cloudの利用規約にある「ユーザーコンテンツにAdobeがアクセスする可能性がある」という文言が大きく批判を浴びたことを受け、Adobeが利用規約の各項目について明確化することを約束しました。これにより、ユーザーが作成したコンテンツがAI学習に使用されないこと等が明記されます。
Here’s what to know about Adobe’s Terms of Use updates | Adobe Blog
Adobe’s new terms of service say it won’t train AI on customers’ work - The Verge
https://www.theverge.com/2024/6/10/24175416/adobe-overhauls-terms-of-service-update-firefly
6月初頭に更新された利用規約には、「コンテンツのレビュー目的などで、(Adobeが)自動および手動の両方でユーザーコンテンツにアクセス・表示・視聴する可能性があります。ただし、方法は限定されており、法律で許可されている場合に限られます」との一文が記されました。当初は「AdobeがCSAM(児童性的虐待コンテンツ)等に対処するため」と説明されていましたが、ユーザーのコンテンツが勝手にAI学習に使われる可能性や、NDA(秘密保持契約)を結んで作成したコンテンツが流出してしまう可能性について、懸念の声が上がりました。
Adobeが「ユーザー生成コンテンツに自由にアクセス・活用」できるように新しい利用規約を導入、クリエイターから批判の声が集まる - GIGAZINE
後日、利用規約に関する多くの質問を受けたとして、Adobeは利用規約を一部修正し、ブログにて詳細を発表しました。Adobeによると、利用規約の細かなニュアンスを調整したとのことで、改めて「PhotoshopのニューラルフィルターやAdobe SenseiのLiquid Mode等、クラウドベースの機能を提供するにはコンテンツへのアクセスが必要で、CSAM等のコンテンツをスクリーニングするのにもアクセスが必要」と説明しました。
さらに、「Adobeは、顧客のコンテンツで(自社AIの)Fireflyを学習することはありません」とも明言しました。
Adobeがユーザー生成コンテンツに自由にアクセス・活用できるよう利用規約を更新した件について正式に説明 - GIGAZINE
ところが、「自社AIをトレーニングしないことはわかったが、他社AIはどうなんだ?」などの新たな懸念が続出。2024年6月10日、Adobeは再びブログを更新し、利用規約を修正することを約束しました。
Adobeは、利用規約にある以下の項目について「明確化する」と記しています。
◆ユーザーのコンテンツを所有するのはユーザーである
ユーザーのコンテンツはユーザーのものであり、生成AIツールのトレーニングに使用されることはない。ユーザーがAdobeのサービスを利用する際にAdobeに付与されたライセンスは、ユーザーの所有権に優先するものではないことを、ライセンス付与の項目で明確にする。
◆Adobeはユーザーのコンテンツで生成AIをトレーニングしない
Adobeは、上記項目がAdobeの法的義務であることを納得してもらうため、今回の声明を利用規約に追加する。Adobe Fireflyは、Adobe Stockや、著作権が切れたパブリックドメインのコンテンツなど、許可を得てライセンスされたコンテンツのデータセットでのみトレーニングされる。
◆Adobeの製品改善プログラムに参加しないという選択肢もある
Adobeは、製品体験を向上させ、(生成AIではない)機械学習などの技術を通じて、マスキングや背景除去などの機能を開発するため、使用状況データとコンテンツの特性を使用する場合がある。ただし、Adobeの製品改善プログラムをオプトアウト(拒否)するためのオプションは常に提供している。
◆ユーザーに代わって製品を運用および改善するために必要なライセンスは、必要に応じて厳密に調整する必要がある
Adobeがユーザーに代わってAdobe製品を運用・改善するために必要なライセンスは、標準的な法定著作権が適用されるが、今後はその意味と必要な理由を分かりやすく例示する。また、製品の改良に必要なライセンスを分離してさらに制限し、オプトアウト・オプションが存在することを強調する。これらのライセンス付与は、いかなる場合においても、ユーザーのコンテンツの所有権をAdobeに譲渡するものではないことを再度明記する。
◆Adobeがユーザーのコンピューターにローカルに保存されているコンテンツをスキャンすることは一切ない
ユーザーがAdobeのサーバーにアップロードするコンテンツについては、他社コンテンツホスティングプラットフォームと同様、会社がCSAMをホストすることがないよう、Adobeがコンテンツを自動的にスキャンする。自動化システムで問題があると判断された場合、人間が調査を行う。人間がユーザーのコンテンツを確認するその他のケースは、コンテンツが公共のサイトに掲載されている場合、または法律に準拠するためにお客様の要求があった場合に限られる。
これらの修正内容については、2024年6月18日までに適用される予定です。Adobeは「利用規約をもっと早く最新のものにするべきでした。テクノロジーが進化するにつれて、私たちは日々の業務だけでなく、法的要件を絞り込み、わかりやすい言葉で説明し、ポリシー等に用いられる法的言語も進化させなければなりませんでした」と説明し、規約の修正までにユーザーの声を聞く機会を設けることを約束しました。