最終話が放送された石原さとみ主演のサスペンス×ラブストーリー『Destiny』

 ツッコミどころ満載で、ある意味、驚きの最終話ではあった。

 6月4日(火)に最終話(第9話)が放送された石原さとみ主演のサスペンス×ラブストーリー『Destiny』(テレビ朝日系)。

 最終話で明かされたのは、多くの視聴者が最初から予想していただろう、ひねりのない真相。盛大な肩透かしを食わされた気分で、驚かせてくれない結末に逆に驚いたぐらいだ。

■父の死、女友達の死の2大事件

 まずストーリーのおさらいをしておこう。

 主人公・西村奏(石原)は大好きだった亡き父(佐々木蔵之介)と同じく検事になっていた。

 20年前、奏が中学3年のとき、正義を貫く検事だった父親は、政治家の汚職事件に巻き込まれ、身に覚えのない疑惑をかけられて自殺してしまう。

 その後、奏は母親の地元の長野県に引っ越し、信濃大学の法学部に進学。勉強一筋のメガネ女子でいわゆる陰キャだったが、馴れ馴れしく接してきた野木真樹(KAT-TUN亀梨和也)と知り合ったことがきっかけで、陽キャの法学部仲間ができる。

 奏と真樹は恋人になるが、大学4年のときにもともと真樹を好きだった友人・及川カオリ(田中みな実)が激しく嫉妬。真樹を自分の車に乗せて暴走し、カオリだけが亡くなってしまう。そして真樹は失踪するのだった。

 カオリの死から12年後の現在。奏はずっと姿を消していた真樹と再会したことがきっかけで、20年前の父の死や12年前のカオリの死に再び向き合っていく――という物語だ。

■【ネタバレあり】明かされたのはひねりのない安易な真相

 父の死とカオリの死という2つの事件がミステリーの核となっていたわけだが、第5話の段階で奏はおおまかな真相までたどりついていた。

 ただ、こういったサスペンス作品において、中盤回で大半の謎が解明されることはあまりない。そのため、真相だと思われていたことはミスリードで、最終話にひっくり返されたり、さらなるショッキングな事実や斜め上の展開が待っていたりするだろうと、視聴者は期待していたはず。

 ……結論を言うと、視聴者が衝撃を受けるようなラストは用意されていなかった。

 最終話では、奏の父を陥れた黒幕は元総理大臣(伊武雅刀)で、元総理の秘書が手足となって偽装工作などの悪事を働いていた事実が明確になり、この2人が逮捕されてめでたしめでたしというオチ。

 父の死のきっかけは政治家の汚職事件だったため、巨大な権力を持った黒幕がいるであろうことは、誰しもが真っ先に予想するセオリー中のセオリー。最終話のクライマックスは、そのひねりのない安易な真相を追及していくかたちだった。

 好意的に解釈すれば、真実がド直球だったことは “裏の裏” をかかれたとも言えるが、多くのサスペンスファンはそんな意外性は求めちゃいないだろう。

 しかも、奏の検事としての最後の見せ場は、約6分間も使った秘書を取り調べるシーンだったのだが、その秘書を演じていたのは川島潤哉という役者。彼には失礼だとは思うが、知名度が高くないバイプレイヤー俳優が石原さとみと長尺で対峙するシーンは、正直しょぼすぎた。

■怪しかった矢本悠馬も安藤政信もただの「いいヤツ」

 ツッコミどころはまだまだある。

 奏に近しい主要キャラたちのなかに、誰一人として闇堕ちしているキャラはおらず、全員いいヤツだったという結末も肩透かし感が強まった要因だろう。

 たとえば、奏の大学時代からの仲間でお調子者のムードメーカー・梅田祐希は、けっこう怪しかった。祐希を演じていたのが売れっ子の演技巧者・矢本悠馬だったこともあり、なにか秘密を隠しているのではと疑った視聴者も多かっただろうが、シンプルにめっちゃいい友人だった。

 奏の現在の恋人で同棲もしていた外科医・奥田貴志も、奏を献身的にサポートする聖人キャラだったので、筆者はなにか裏があるのではと怪しんでいた。演じていたのが名優・安藤政信だったこともあり、ただのやさしい彼氏で終わるわけはないと睨んでいた。

 ……が、最後までただのやさしい彼氏。これも “裏の裏” をかかれたと言えばそうなのだが、安藤政信の無駄遣いではないか。

■田中みな実のキャスティングや亀梨和也の死亡フラグに疑問

 ほかにも、過去編にしか登場しなかった女子大生・カオリ役に、なぜ実年齢37歳の田中みな実をキャスティングしたのかも大いに疑問。

 実は生きていて、現在編にも登場するのかと思いきや、そういう展開ではなかったので、「JDに見えない」とさんざんツッコまれた田中は叩かれ損である。

 カオリの死の真相も、誰かに操られていたとか車に細工されていたとか、さらなる事実が隠されており、政治家の汚職事件にもっと直接的に関連があるのかと予想したが、そんなこともなかった。カオリ自身が半狂乱で暴走しただけという、中盤回で明かされた真相そのままだったのだ。

 細かい要素にツッコミを入れるなら、亀梨演じる真樹はがんを患っていることが明らかになっていたので、ラストは亡くなってしまうのだろうと思っていた視聴者は多いはず。だが、真樹は手術を受けて、あっさり快復。かなり重篤であるかのような演出がされていたので、あれでは “死ぬ死ぬ詐欺” だ。

 ――このようにツッコミどころだらけの最終話となってしまった『Destiny』。視聴者たちが考察で盛り上がり、高評価を受けていた作品だっただけに、最終話の反動でガッカリ感もすさまじかったのだろう。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中