Googleが2024年5月15日に開催した年次開発者向け会議「Google I/O 2024」の中で、教育研究に基づいて学習用に微調整された新しいAIモデル「LearnLM」を発表しました。LearnLMのベースとなっているのは、GoogleのチャットAIであるGeminiです。

How Google’s LearnLM generative AI models support teachers and learners

https://blog.google/outreach-initiatives/education/google-learnlm-gemini-generative-ai/







Geminiをベースに教育研究に基づいて開発されたAIモデルがLearnLMです。LearnLMは人々の学習方法に合わせて調整されており、学習体験をより魅力的かつ個人的で有用なものにするための、Google DeepMind、Google Research、製品チーム全体の取り組みのひとつとして紹介されています。

GoogleはLearnLMを開発する上で、教育者や専門家と協力して、以下の原則をAIモデルとそれを活用した製品に盛り込んでいます。

アクティブな学習を促す:タイムリーなフィードバックにより、練習と(課題への)健全な取り組みが可能になります。

認知負荷の管理:関連性があり、適切に構造化された情報を複数のモダリティで提示します。

学習者に適応する:関連する教材に基づいて、目標とニーズに動的に適応します。

好奇心を刺激する:エンゲージメントを刺激し、学習過程を通じてモチベーションを提供します。

メタ認知を深める:計画を立て、監視し、学習者が進捗状況を振り返ることを支援します。

GoogleはGoogle検索、YouTube、Geminiといった製品での学習エクスペリエンスを強化し、単に答えを与えるだけでなく学習・理解を深められるようにするため、LearnLMを以下のように導入しています。

◆Google検索

Google検索ではAIが検索結果を要約してくれる「AI Overview」において、自分にとって最も役立つ形式(オリジナル(Original)のままにするか、簡略化(Simpler)するかなど)に調整することで、複雑なトピックをより理解できるようにします。



◆Android

Androidでは「かこって検索(Circle to Search)」を使用することで、スマートフォンやタブレットから直接数学や物理の文章問題について段階的に学ぶことができます。さらに、2024年後半には「かこって検索」でシンボリックな数式、図、グラフなどを含む、さらに複雑な問題が検索可能となります。





◆Gemini

GoogleのチャットボットであるGeminiでは、間もなくあらゆるトピックについて専門家として機能するGeminiのカスタムバージョンである「Gem」を使用できるようになります。既製のGemのひとつである学習コーチ(Learning coach)は、クイズやゲームなどの役立つ練習アクティビティとともに、段階的な学習ガイダンスを提供することで、知識の構築をサポートします。Geminiの学習コーチは今後数カ月以内にリリースされ、Gemini Advancedを使用すると、独自の学習の好みに合わせてGemをさらにカスタマイズできるようになるそうです。





◆YouTube

YouTubeでは会話型AIツールを使用して学術ビデオを見ながら比喩的に「手を上げる」ことで、明確な質問をしたり、役立つ説明を得たり、学習内容に関するクイズに答えたりすることができます。これは、Geminiモデルのロングコンテキスト機能のおかげで、講義やセミナーなどの長い教育ビデオでも機能するようになる模様。これらの機能は、アメリカの一部のAndroidユーザーにすでに展開されています。

この他、GoogleはLearnLMと既存の製品に加えて、学習を拡張するための新しいツールとエクスペリエンスも構築しています。

そのひとつが、研究論文を短い音声会話に分割する新しいツールの「Illuminate」です。Illuminateは数分でAIが生成した2つの会話音声を含む音声を生成し、複雑な論文からの重要な洞察の概要を抽出することができます。

Using long-context to make knowledge accessible - YouTube

さらに、高品質のコンテンツ、学習科学、チャットエクスペリエンスを統合することで、情報をどのように理解に変えることができるかを探る新しい実験的エクスペリエンスとして「Learn About」も開発されています。Learn Aboutで質問すると、写真、ビデオ、ウェブページ、アクティビティを通じて、自分のペースでトピックの理解を進めることができます。また、途中でファイルやメモをアップロードし、複雑な質問をすることも可能です。