OSK日本歌劇団 楊琳、舞美りら、千咲えみ、連載から2年ぶりに答える「後輩に残したいもの」とはーー『ブギウギ』だけでない公演の見どころも
今年4月に大阪松竹座『レビュー 春のおどり』で、荻田浩一構成・演出のレビュー「BAILA BAILA BAILA」を上演したOSK日本歌劇団。7月13日(土)~21日(日)には『レビュー in Kyoto』と題し、「南座バージョン」として「BAILA BAILA BAILA」を再上演する。情熱的なラテンやデュエットダンス、笠置シヅ子の名曲や連続テレビ小説『ブギウギ』で放送されたショーの再現、南座で上演した『陰陽師 闇の貴公子⛤安倍晴明』を題材にした新たなシーンを追加するほか、桐生麻耶、朝香櫻子も迎えてこれまでの南座公演の思い出を振り返るシーンも追加する。8月にOSKを退団をするトップスター楊琳と、娘役トップスター舞美りらにとっては、最後の南座公演となる。楊、舞美、そしてもう一人の娘役トップスターの千咲えみの3人に、「BAILA BAILA BAILA」の魅力や『レビュー in Kyoto』に向けての心境を語ってもらった。
楊琳
●見どころは「毎度のことながら「桜咲く国」です」(楊)
――大阪松竹座で上演された「BAILA BAILA BAILA」の南座バージョンということで、構成も変わるので全く一緒ということはありませんが、大阪松竹座の「BAILA BAILA BAILA」で皆さんがお好きな場面を教えてください。
楊琳(以下、楊):私は全部、好きなんですけど、オープニングの一人で踊るところと、裸足で踊らせていただいた中華の場面がとても印象深いです。ラインダンスも外せません。『ブギウギ』ゾーンになると、会場のお客様の拍手やグッと見入る空気が本当に独特です。『ブギウギ』でOSKを知っていただいたお客様の前で、テレビでご覧になっていたものを実際に自分たちが踊り、お客様に喜んでいただけたことが何よりも嬉しかったですね。特に私はドラマのその場面に出ていないメンバーの一人だったので、その世界に入れたことがすごく嬉しかったです。あとは、毎回言わせていただいていますが、OSKのテーマ曲である「桜咲く国」。南座でも見どころだらけのレビューになると思います。
舞美りら(以下、舞美):私もどのシーンも本当に大好きなんですけども、強いて言えば「ラティンクスB」です。この場面では、楊さんが登場されて歌われてから、最後に私が登場させていただくのですが、あの時、言葉にできない喜びといいますか、「みんなー! 来たよー!」と思って(笑)。
楊:そうだよね(笑)。
舞美:「皆と一緒に踊るよー!」と思いながら出ています。私が一人で踊って、皆さんが盛り上げてくださっている場面なのですが、待っている間は「一緒に踊ろうよ!!」と思いながら、早く踊りたくてうずうずしながら、まだかまだかと舞台袖にいます。また、主題歌の歌詞もとっても素敵なので、ぜひそこにも注目してほしいです。翼(和希)くん、桐生さん、楊さんと歌い継がれるのもすごく素敵な流れだなと。きっと荻田先生の思いが詰まったお三方の流れだろうと思います。あとは、黒いドレスで楊さんと一緒に踊らせていただいたデュエットダンス。私は黒が大好きなのですが、過去にAラインの黒いドレスで踊ったことがありません。ドレスは白を想像される方も多いと思うので、粋だなと思いました。曲も大好きですし、しんみりすることなく、笑顔で終われて、ラインダンスのみんなにつなげられるという流れも大好きなシーンでございます。
――舞美さんが黒がお好きということは、荻田先生はご存知だったのでしょうか?
舞美:そこまではご存知ないかと……。長袖が好きということはお伝えしていて。「舞美ちゃん、長いお袖、好きなんでしょ?」とおっしゃって、まさか! ありがとうございます! と。夢を叶えていただきました。
千咲えみ
――千咲さんはいかがですか?
千咲えみ(以下、千咲):オープニングで<今は別れを忘れて バイラバイラ>と桐生さんが歌われる歌詞があって、その時はどれだけ慌ただしく着替えをしていても、舞台からポーンと聞こえて、「そうだ! 今は悲しんでる場合じゃない! 今は今しかない」と思うのですね。それで、私も「今はみんなでバイラー!」と思ってステージに出ていくのですが、そうやって始まるオープニングも大好きです。また、ラインダンスを袖のギリギリのところで観ているのですが、初舞台生の紹介のときはいつもグッと来ていました。「ああ、この子たちが入団したんだ!」と、毎回、感動して。あとは最後のラインダンスの後のお客様の拍手が本当にものすごくて、初日もびっくりしました。私はラインダンスをしていないので袖にいるのですが、フィナーレの男役さん、デュエットダンス、ラインダンス、そして総踊りから楊さんという流れはOSKらしいなと思います。楊さんのお一人の歌も素敵な時間ですよね。
楊:歌詞がね、素敵ですよね。
千咲:レビューショーですけど、楊さんとお客様がお話ししている感じというか。もっとお客様のお近くでやっていらっしゃる感じに見えて、素敵です。あの曲は大好きです。
●夏の公演は「もっと噛み締めて舞台に立ちたい」(舞美)
左から千咲えみ、楊琳、舞美りら
――前回、SPICEでさせてもらったOSKさんの連載『OSK Star Keisho』で、「後輩に残したいものは?」というご質問をさせていただきました。その時、楊さんが「いろんな人から応援してもらっていて、愛してもらっている劇団ということ、自分たちだけの劇団じゃないということを忘れないでほしい」と。舞美さんが「OSKは秘伝のソースみたいな劇団。OSKは解散の危機を乗り越えているので、そういった歴史も伝えていきたい」。千咲さんが「先輩に教えてもらってきたことを締めず教えてくださるのが、このOSKの良さであり、伝統。私もできる限り教えてもらったことを後輩に伝えていきたい」とおっしゃっていたのですが、あの連載から2年を経て、更に後輩の方に伝えたいことがあったら、また教えてもらえますか。
楊:そうですね、それにプラスして、だからこその感謝です。むやみに感謝するのではなく、本質を捉えた感謝をしてほしい。その本質は人それぞれ違います。自分自身がOSKが大変な時期に入団したということもあって、いろんなお話を先輩から直に伺ってそう思いましたので、いろんな思いがあった上での感謝をしてほしいですね。言葉は悪いかもしれませんが「字面だけの感謝」ではなく、芯を捉えた感謝を忘れないようにしてほしいです。
舞美:これからいろんな作品に出会って、そのたびに壁が立ちはだかると思います。芸事に失敗や間違いはないので、自分が感じたことに「合ってるのかな」と考えて臆することなく、個性を大切に、思う存分、舞台で表現してもらいたい。OSKの伝統や歌劇を継ぐことは大前提に、自分の心を大切に舞台に立ってほしいです。
千咲:2年前はそれこそお二人のご卒業なんて知りませんでしたが、改めて本当に「今しかないんだな」と思います。上級生も、自分自身も、下級生も今しかいないし、今観てくださるお客様も今しかいらっしゃらない。一緒に過ごす時間は本当にあっという間なんだなと思って。お二人がご卒業目前だからかもしれませんが、2年前はそのことに気づいてなかったと思います。OSKは「今がずっと続くわけじゃない」ということを実感できる場所かなと思います。
舞美りら
――観る側としては、まだ楊さん、舞美さんがご卒業されることに全然実感が沸かないのですが、気がついたら夏になっていそうで、一分一秒が惜しいです。
楊:自分よりもお客様の方がそう思ってくださっているのかもしれないですね。私もまだ実感できていなくて、多分、来年の『春のおどり』を観に行って実感が沸くんじゃないかなと思います。幸せなことにOSKに入団してからはずっと大阪松竹座に出させていただいたので、客席から観たことがなくて。来年の『春のおどり』で初めて客席から観るので、その時にいろんなことを感じるのだろうなと思います。まだ公演はありますので、個人的な振り返りも8月以降になりそうです。
舞美:大阪松竹座でも、卒業公演なので「ああ、卒業するんだ……」とか、いろんな思いがあるのかなと思っていたのですが、今回はいつも以上に自分の中でバタバタで……(笑)。
楊:課題が多かった!
舞美:あれよあれよと過ぎていきましたので、もっと噛み締めて舞台に立たなきゃ! と思います。荻田先生が作詞されたオープニングの歌で<一瞬のきらめきだけが生きる証>という歌詞があるのですが、そこが自分の中にズドーン! と入ってきて。「いろんな状態、いろんな環境があると思うけど、いろいろ考えるよりもその一瞬を生きることに価値があるんだ!」と感じ、大阪松竹座では「皆様と一緒に共有する時間が何よりも愛おしい!」と思って挑みました。でも、もうちょっと南座と新橋演舞場(8月7日(水)~11日(日)『レビュー 夏のおどり』)では落ち着きたいですね。そして自分の理想にもどんどん追いつけるようにしたいなと思っております。
――大阪松竹座の『春のおどり』では、楊さんと舞美さんが作詞された曲がありましたが、作詞はいかがでしたか?
楊:合作ですからね。入れてほしい言葉を提出して、それを先生方が完成させてくださいました。
――そうなのですね。では、出来上がった歌詞をご覧になって、千咲さんはどう思われましたか?
千咲:私は逆にご卒業に対しての気持ちがどんどん変わってきました。
楊:「イヤッホー! やっと卒業だぜー!」って?(笑)。
千咲:違う違う(笑)。最初はご卒業されることが寂しかったのですが、今は、偉そうですけども「おめでとう!!」とすごく思います。お二人がキラキラされてるというか……。すみません、こんなこと言って……。もちろん前からずっとキラキラされていますけど……、え? 何か変わられました?
舞美:え!? 何が!?
千咲:何なんでしょうね……。それこそ大阪松竹座の『春のおどり』が始まるまではご卒業は悲しくて、公演初日に、一部のオープニングで涙されているお客様を見た時に、「おうっ……!」となってしまったんですけど……。
楊・舞美:「おうっ……!」(笑)。
千咲:ふふふ(笑)、そこからはお二人のご卒業は悲しくないんだと初めて思いました。でも、OSKとしてのお二人を見るのはきっと夏で最後になるので、もうちょっとだけ今の時間が続けばいいなと思います。そして最後は祝福したいです!
左から千咲えみ、楊琳、舞美りら
取材・文=Iwamoto.K 撮影=ハヤシマコ