【訃報】唐十郎さん 享年84 紅テント興行で演劇界に旋風を巻き起こした革命児
劇作家・演出家・俳優・小説家の唐十郎さんが2024年5月4日21時01分に都内の病院で急性硬膜下血腫により死去した。5月1日に自宅で転倒し、中野区内病院に緊急搬送されていた。84歳だった。
唐組『泥人魚』2003年初演時 ©唐組
唐十郎(本名:大逈義英 オオツルヨシヒデ)さんは、1940年2月11日東京生まれ。1958年、明治大学文学部演劇科に入学、学生劇団「実験劇場」で俳優として活動後、1963年、サルトル作『恭しき娼婦』で劇団「シチュエーションの会」(1964年「状況劇場」に改名)を旗揚げ。1967年、新宿花園神社境内にて初の紅テント興行を行ない、アンダーグラウンドカルチャーの旗手として絶大な人気を誇る。また、独自の演劇論「特権的肉体論」共々、計り知れないほどの影響を演劇界に与えた。韓国、台湾、バングラデシュ、レバノン、シリア公演など海外公演も敢行した。
紅テント in 新宿花園神社 2024.5.5
1970年、戯曲『少女仮面』で岸田國士戯曲賞受賞。1983年、小説『佐川君からの手紙』で芥川賞受賞。1988年、状況劇場を解散し翌1989年に劇団「唐組」を旗揚げ。2003年『泥人魚』にて紀伊国屋演劇賞、読売演劇大賞演出家優秀賞、鶴屋南北賞、読売文学賞受賞。2012年度朝日賞受賞。2021年、文化功労者 顕彰。
唐組『泥人魚』2003年初演時 ©唐組
俳優としては、映画『犯された白衣』(1967年、監督:若松孝二)、映画『銭ゲバ』(1970年、監督:和田嘉訓)、映画『修羅』(1971年、監督:松本俊夫)に主演した他、NHK大河ドラマ『黄金の日日』(1978年 原田喜右衛門役)、ドラマ『北の国から2002 遺言』(2002年 高村吾平役)、ドラマ『ハンチョウ~神南署安積班~ 第3シリーズ』 (2010年 石倉晴夫役)等でも強烈な印象を放った。一方、横浜国立大学、近畿大学では教授・客員教授を務めた。
唐組『泥人魚』2003年初演時 ©唐組
訃報の流れた5月5日は、唐さんの主宰する劇団唐組が第73回公演『泥人魚』(作:唐十郎、演出:久保井研+唐十郎)の東京公演初日でもあった。公演会場の新宿花園神社紅テント前では午前中に、劇団の座長代行を務める久保井研氏による会見が行なわれた。
【動画】会見を行なう劇団唐組座長代行 久保井研氏(ノーカット映像)
久保井氏によれば、東京公演に先立って行なわれた神戸公演・岡山公演に出発するために劇団員一同で唐さんの自宅に挨拶に行ったのが4月13日。2012年5月に転倒して以来、療養中だった唐さんはその日、劇団員たちを激励し、旅巡業の自動車のところまで見送りに来たという。
【写真】2024.4.13の劇団公式ブログより(前列左から二番目が唐さん)
通夜、葬儀は近親者のみで執り行う予定で、日程等はまだ未定とのこと。また、今回唐さん本人が観ることの叶わなかった劇団唐組 第73回公演『泥人魚』東京公演は予定通り行なわれ(6月9日迄)、長野公演も6月中旬に行なわれる。
新宿花園神社 2024.5.5
現代演劇史上最大の巨星のご他界に際し、謹んでお悔やみを申し上げます。