GOOD BEY APRIL 撮影=高田梓

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すべては“いい言葉といいメロディ”のために――。シティポップ・リバイバルを象徴する作曲家・林哲司のプロデュースによるデビュー曲「BRAND NEW MEMORY」を筆頭に、シティポップ/80'sジャパニーズポップスの文脈で評価されるGOOD BYE APRILの音楽は、しかしジャンルには縛られないより本質的なものを目指す。親交の深いヒグチアイをゲストボーカルに迎えた新曲「ニュアンスで伝えて feat. ヒグチアイ」は、爽やかなサウンドの裏側に強い意志とポップ美学を秘めた会心の自信作に仕上がった。デビュー1周年、さらなる進化と深化を志す4人の本音を聞いてみよう。

――メジャーデビュー1周年。振り返ってどんな思いがありますか。

つのけん(Dr):1年間、本当にあっという間だったなと思っていますね。大先輩方と共演したりとか、林哲司さんもそうですし、EPOさんもそうですし、経験したことのないことだらけだったけど、今まで積み重ねてきたことの延長線上にこういうことがあるのがすごく嬉しいことでもありますし。やってきたことは間違いじゃなかった、と感じる瞬間は何度もありました。最近で言うと、韓国のライブもそうですね。どんどんいい記憶が塗り替えられていく、すごく濃い1年を過ごせたなと思います。

吉田卓史(Gt):まだまだ初めてのことがあるんやな、ということをすごく感じた1年でした。今までは自信がなかったというか、たとえばギターをちょっとミスっただけでライブ中にへこんだりしたんですけど、EPOさんとか、キンモクセイとか、先輩方とやっていくうちに、あんまりそういうことを考えないようになったんです。この間の韓国でも、けっこうギターをミスったんですけど(苦笑)、でも純粋に楽しめたんですよね。しかもみんな盛り上がってくれて、完璧なものだけがいいものじゃないということも感じたし、とにかくなんでも楽しんでやろうと思えた1年でした。

延本文音(Ba):私たち、自信のないグループなんですよね(笑)。“いい曲できた!”と思っても、時間が経ったら“大丈夫かな?”って思っちゃうし、ライブもそう。だから林さんと一緒にやった時も、余計なことを考えちゃうんですよね。でも林さんと一緒に色々やる間に、本当に気に入ってくれていることがわかったし、EPOさんとのジョイントライブの時も、EPOさんがすごく信頼してくれて、初リハーサルから“絶対いける”と言ってくれて、涙まで流してくれたし。キンモクセイも、自分のペースを大切にされる方たちですけど、やっぱり音楽性のシンパシーがあったからこそ、ここまで仲良くなれたと思っていて。そういうチャレンジがいっぱいあった中で、“私たち、意外とできんじゃね?”と思う時も増えてきて。林さんのトリビュートライブも、大役だなと思ったけど意外といけたなとか。韓国ライブも、2曲目で同期(打ち込みのトラック)が止まったんですよ。

――うわ。それは大変。

延本:それが「BRAND NEW MEMORY」というデビュー曲で、韓国で一番聴かれていた曲なので、一瞬“どうしよう!?”と思ったんですけど、いいところで全員が演奏を止めて、復旧を待つ間に英語と韓国語のMCで繋いで、逆にお客さんが笑ってくれるような状況に持っていけたんですよね。結局、同期を繋ぎ直して最初からやり直したんですけど、そのあともめちゃくちゃ盛り上がってくれて、“意外といけるな”と思ったりして。

倉品翔(Vo,Gt&Key):そりゃあいけますよ。もういい年なんだから(笑)。

延本:ずっと自信がなかったんですけど、無理やり自信をつけさせられる経験をした気がします。

――それは、メジャーデビュー以降の一番大きな成果じゃないですか。

延本:そうですね。やっぱり自分たちだけでやっていると、自分たちができることをやってしまうんですけど、そういうハードルを与えてもらったことによって自信がつきました。そんな1年でした。

倉品:1年を振り返ると、そういう新しいチャレンジをたくさんしてきたと思うんですけど、そもそもそれまでに12年半ぐらい、この4人でやってきた時間があって。僕らはけっこうわがままなバンドで、こだわりも強いし、“これは嫌い”“こういうことはしたくない”とか。12年の中で感じたこともたくさんあるんですけど、その一つとして、あくまでも音楽として素晴らしいポップスをやりたいわけであって、自分たちが名を残したいからポップスをしたいとか、そういう気持ちがまったくないんですよ。でもそれをキープし続けるのはけっこう難しくて。やっぱり“結果を出さなきゃ”とか、頭をよぎる時もこれまでにたくさんあったんですけど、そういうものを排除して、とにかく音楽に対してピュアな気持ちで、いい音楽を作るというロマンをずっと追いかけ続けていて、それを同じメンバーでずっとやってこれたことは、半ば奇跡的なことだと思うんですね。

――それは本当すごいと思います。

倉品:今回メジャーに行ったことによって、関わってくれる人が増えた時に、果たしてそれがずっとできるのかな?と思ったんですけど、まったく変わらなかったし、むしろそれを加速させられた1年だったと思うんですよね。自分たちが選んできた美学というか、そういうものをちゃんと使った上で、いろんな人と一緒にやる。そこでまた新しく自分たちも生まれ変われる。いろんな人が関わってくれる中でも、これまでと同じアティテュードで音楽に向き合えたし、かつ、今までやったことのないチャレンジがたくさんできたという意味で言うと、音楽人生としてすごく幸せな1年だったと思います。

――素晴らしい。

倉品:それはスタッフのみなさんが、そういうことも汲んでくださった上で、なおかつ僕らの音楽に可能性を感じてくれているからこそだと思うし。逆に言うと、自分たちで積み上げてきたものが間違いじゃなかったというのは、チームのみなさんにいただいた言葉からも再確認する部分はありましたね。どう考えても、最短距離ではないだろうというやり方だと思うんですけど。

延本:そうだね(笑)。

倉品:でも振り返ると、自分の中では無駄なものは一つもないんですよね。やっぱり一個一個にちゃんと理由があってやってきているから、“これで良かったんだ”ということは、デビュー1年目の新しい出会いや、いただいた嬉しい言葉ですごく実感しました。

倉品翔(Vo & Gt & Key)

続けていくためには結果を出さなきゃいけない。そこと、自分たちの追いかけているロマンを両立させていく。それをやり続けるのが自分の中のテーマ。

――それもある意味タイミングが良かったというか、2020年代の今だから良かったというふうには言えないですか。それこそ1980年代とか、林さんがヒット曲をバンバン書いていた時代は、周りからすごいプレッシャーもあったと思うんですよね。でも今は必ずしも大ヒット重視というわけでもないし、メジャーでもインディーでもいろんな活動の方法があるし、音楽ジャンルも自由だし、ある意味いい時代な気はしているので。

延本:ああ、そうですね。サブスクとかネットのおかげで、20代じゃなきゃいけないとか、働いてちゃダメとか、そういうのがなくなったなとは思っています。周りのミュージシャンも含めて、本当に音楽が好きな子たちが、働きながらも発信できているし、そのやり方って、若くして豪邸に住んで、絶対に音楽で大金持ちになってやるみたいな、そういう夢を描いているミュージシャンにとっては、夢がないかもしれないですけど、コツコツ作ることが好きな人間からしたら、いい時代かなと思いますね。私たちは30代ですけど、まだ新人と言ってもらえるし(笑)。年齢を問わず、いいものを作っていればいいという、私たちはそれに合っているなと思います。

倉品:本来、そうあるべきですからね。

――そうあるべきだと思いますよ。

倉品:さっき、名を残したいわけじゃないとか言いましたけど、続けていくためにはもちろん結果を出さなきゃいけないと、ずっと思ってはいます。そこと、自分たちの追いかけているロマンというものを両立させていく、それをずっとやり続けるのが自分の中のテーマなので。そういう意味では、それがやりやすい時代になっているんじゃないかな?と思いますよね。

――それは本当にそうだと思うし、GOOD BYE APRILもそうやって今、あとに続く人たちに背中を見せていると思うんですね。“そうか、こういうふうにも活動できるんだ”って。

延本:自分たちもそうでしたけど、そういう存在が先にいてくれたら心強いじゃないですか。だから、 言ってあげたいですよね。私たちと同じように、派手さはないし、自信もないし(笑)、でも音楽が大好きだという子たちに、“焦らなくても大丈夫だよ”って言ってあげたいですもんね。私たちが成功することによって。

倉品:でも“いばらの道だよ”とは言っておきたい(笑)。道は長いよ、って。

延本:マラソンなんだよ、って。

――いい話。というところで、新曲の話にいきましょう。5月1日リリース、「ニュアンスで伝えて feat.ヒグチアイ」。アイさん、倉品さんと同郷なんですよね。

倉品:長野県出身で、地元が一緒です。ただ知り合ったのはこのバンドを始めてからで、最初は“同世代で地元出身のシンガーソングライターがいるんだ”ぐらいの感じだったんですけど、2013年にライブを一緒にやり始めて、これまでに10回ぐらい一緒にライブをやってきています。共同企画でツーマンもやったし。

延本:本当の最初は、倉品とアイちゃんともう一人のシンガーソングライターの弾き語りだった。私はそれを見に行って、アイちゃんが同い年と知って、声をかけたんですよ。“すごいかっこよかったです”って。そこからちょっと仲良くなり始めて、バンドでも仲良くなって、という感じです。

倉品:2017、18年ぐらいまでは、定期的にライブをしていたんですけど、僕らも音楽性の方向性が少しずつ変わっていって、それぞれのフィールドで頑張るというフェーズにしばらく入っていたので。それ以降はあまり接点がなかったんですけど、それまでの濃い繋がりがあったので、それぞれの活動を見ながら“自分たちも頑張ろう”みたいな気持ちはありました。

延本:友達だから、普通に遊んだりもしていたし。

倉品:そういう繋がりはずっとある中で、今回この曲ができた時に、“アイちゃんの歌で聴いてみたいな”と純粋に思ったんですね。

延本:そもそも曲ができた時点で、なんとなくデュエットがいいなと思ったんですよ。相手の方が決まってから歌詞を書こうかなと思っていたんですけど、その時点ではイメージが湧かなくて、時間が過ぎて行く中で、先に歌詞を書いちゃおうと思って書き上げた時に、“これ、アイちゃんじゃない?”ってなって、それでお願いをしました。

倉品:ライブの日の、楽屋で電話しましたね。

延本:普通に“えー、やりたい!”みたいな、そんな軽いノリだった気がする。

――なかなかのドラマですよね。それまでの長い付き合いを考えると。

延本:一緒にやっていたのは、自分たちがどストレートなJ-POPをやっていた頃で、その後は私たちが80'sに寄っていったり、アイちゃんがメジャーデビューしてライブのキャパも上がっていく中で、立っている場所が変わってきたので。新しいファンの人たちからしたら、“どういう繋がりが?”と思うと思うんですけど。

倉品:そういう意味では、それぞれの道を進んでいく先の“今”なんですよね。僕らは80'sやシティポップというくくりの中でやっていて、この曲もその延長線上ではあるし、僕らがあの頃の音楽性に戻った曲ができたからアイちゃんと一緒にやる、とかでもないんですよね。それなのに、“あれ? でもこの曲、アイちゃんの声が聴こえる気がする”と思って、お願いして、やってくれたというのは、何か不思議な気がします。

吉田卓史(Gt)

僕はいつも難しく考えてしまう性格なので……。最初はちょっと酔っぱらってギター弾いたりして。そのぐらい楽にやった方がいいんじゃないか?と。

――それぞれのプレイについて聞きますね。ドラムはどんなふうに?

つのけん:リズムパターンは、デモの段階である程度決まってはいたんですけど、正直、打ち込みでもいいと思ったんですよ。でもやっぱり、打ち込みには出せない細かい手癖だったり、強弱だったり、生ドラムの良さを生かして、いかに主張せずにストーリーを作っていけるか?をめちゃめちゃ考えました。特に2番でアイちゃんが歌うところ、あえて頭のハットを抜いて、すごい不規則なところで戻ってきたりして。そういう仕掛けを作ることで、どれだけストーリーを伝えられるか、本のページをめくる役目をドラムパターンで表現できるか?というところを、重点的に考えて叩きました。いかに軽やかに風になれるか、というか。

――風、吹いてますよ。ギター的には?

吉田:僕はいつも難しく考えてしまう性格なので……ギターだけじゃないかもしれないけど、神経質なところがあって、自分の作るものに対して“ほんまにこれでいいんかな?”というのは、たぶん一生あるんですね。この曲のリフは元々デモ段階であったもので、そこに何を足そうか?と思った時に……これ、ふざけて言っているわけじゃないんですけど、最初はちょっと酔っぱらってギター弾いたりして。そのぐらい楽にやった方がいいんじゃないか?と。最初、それでデモを録ったもんね。

倉品:うん。

吉田:この曲に関しては、考えすぎたら流れが止まっちゃうだろうなと思ったので、結果的にかなりシンプルになりましたね。ギターソロも特にないですし、リズムに徹して、いらんところを全部捨てて弾けたかなという印象ではあります。

延本:全体のバランスを聴くと、ベースもシンプルなんですよ。グルーヴに徹するというか、ローリングさせていくだけなんですけど、そのニュアンスが難しくて。シンプルということで言うと、倉品の声もシンプルじゃないですか。そこにアイちゃんの声が入ることで、いい意味でソウルフルとか、ロックな感じとか、そういう部分を補ってくれて、すごくいいバランスになったなと思いますね。女性独特の華やかなえぐみというか、それをアイちゃんが、すごくいいバランスで出してくれたので。サウンドはシンプルだけど、こんな熱い曲になったのはアイちゃんのおかげです。

――倉品さん、この曲を作った最初のイメージというと?

倉品:春のリリースということで、春の匂いがするようなリズムで、というイメージからデモを作ったんですけど、 2、3回ボツっているんですね。それで“もっと本質的に、心の動くメロディを作らなきゃダメだ”と思って、弾き語りでサビのメロディを作り直したら、わりとすんなりこのメロディが出てきました。元々リズムはネオソウルとか、シティポップの延長線上でトライしたいなと思っていたんですけど、作り変えたサビのメロディがすごくオーセンティックなものになったからこそ、アイちゃんとのコラボがうまく結実したのかな?と。歌が真ん中に来た時にちゃんと輝ける曲になって、なおかつアレンジやサウンド感は、アイちゃんにとってフレッシュなものになったというところで、収まりのいいコラボというよりも、掛け算のコラボになったと思っています。

――サウンドはシンプルに、そして歌は豊かに。特に言葉の力が強い歌だなぁと思います。

延本:アイちゃんも“自分が書いたみたい”と言ってくれました。アイちゃんって、けっこう言葉の人だと思うので、引っ張られたわけじゃないんですけど、自然とアイちゃんが歌っても違和感がないところに着地しているというか。でもアイちゃん(が歌うこと)が決まってない時に書いたから、本当に巡り合わせを感じます。

――大きくくくれば応援歌というか、励ますメッセージですよね。聴き手を。

延本:そうですね。ラブソングではないです。

倉品:その応援の仕方が、すごく自分たちのスタンスだなと思います。気の強い人の応援歌じゃなくて、日々に葛藤がある人の応援歌というか。

延本:そう。自信のない人が作る応援歌(笑)。私たち4人とも、そういうタイプなので。そういう感じがめっちゃ出ていますよね。

延本文音(Ba)

私、何かあったらアイちゃんに相談するんです。同い年ですけど、姉御みたいな気持ちで、メジャーデビューの話が来た時も、“詐欺かな?”みたいな。

――確かに。アイさんだけだったら、もうちょっと強い感じになる気がする。

延本:そうかもしれない。強い人なんですよね。私、何かあったらけっこうアイちゃんに相談するんですよ。同い年ですけど、姉御みたいな気持ちでいるというか、メジャーデビューの話が来た時も、アイちゃんに相談して、“ついにメジャーデビューの話が来たんだけどどう思う?”って。“詐欺かな?”みたいな。

――あはは。ひどい(笑)。

延本:結成12年とか13年で、今さらメジャーデビューとかどう思う? みたいなことを聞いちゃったりして。

――何て答えてくれました?

延本:“人だよ”って言ってくれました。“一緒にやる人が信じられるなら、どこへ行っても大丈夫だと思う”って。

――さすが。説得力あるなぁ。

延本:(メジャーデビューが)決まった時も、アイちゃんにまず報告しに行きました。

倉品:そういう意味では、欠かせない人だよね。ずっと近くにいてくれる。

延本:めちゃくちゃ遊んだりとか、頻繁に連絡を取るわけじゃないんですけど、なぜかお互いの節目に必ずいるというか。アイちゃんのメジャーデビューの時も、私の絵の仕事にアイちゃんがついてきてくれて、一緒に壁に色を塗ってもらったんですけど、その時の休憩中にスイカを食べながら“実はメジャーデビューが決まった”という話を聞いて、“おめでとう!”って。そう思うと、不思議な関係ですよね。

――サウンドはシンプル、メロディはオーセンティック、でも実は芯の強い曲。

倉品:サウンドだけ聴くと、軽やかに風が吹いている感じですけど、その向こう側に繊細なメンタリティがある。そういう曲かもしれないですね。

――シティポップやAORは、サウンドとアレンジ面のことを言われることが多いけど、実は歌詞がすごく大事じゃないですか。メロディの力と合わさった歌詞だからこそ心に残るし、そういう方向性として、この曲はいいハマり方をしているなぁと思います。

倉品:僕もそう思っていて、80'sやシティポップスを聴いていても、やっぱり言葉とメロディに一番影響を受けているんですね。サウンドよりもそっちの方が、より本質的に大事だと思うので。

延本:作詞家や作曲家から逆引きして、聴いたりしていたんです。林さんを好きになったのもそれなんですよ。80'sの音楽を聴いていると、好きな曲があって、クレジットを調べてみたらいつも林さんの名前があって。“私、林さんの曲が好きなんだ”と思って、林さんの曲縛りでカラオケとかで歌っていたら、林さんにプロデュースしてもらうお話が来たという。

――それは明らかに引き寄せですよ。

延本:だから本当にびっくりして。本当にあの時代の作詞と作曲はすごいなと思いますね。作詞家では、阿木燿子さんが好きなんです。

倉品:でも、僕らがそこをリスペクトしてることって、あんまり伝わりづらいのかな?とは思っていて。今はサブスクとかで音楽を聴いているから、聴き方としてライトに聴いているし、サウンドの情報だけで終わっちゃうところがある。それはそれでいいと思うし、たぶん僕らは今、シティポップのリバイバルの中に入れてもらえたりしていると思うんですけど 実はそこよりも、本質的な言葉とメロディの良さにすごくこだわりがあって、それが好きでやっていることは、あんまり伝わりづらいだろうなと思うので。“そこが自分たちのポリシーだ”というのは、声を大にして言っていきたいですね。

つのけん(Dr)

さっきドラムのプレイについて聞かれた時に、“ニュアンスが”って言いそうになって、“手癖で”に変えた(笑)。ネタになっちゃうのが恥ずかしくて。

――すごくわかります。今、ソングライターチームに話が偏ってしまって、つのけんさんと吉田さんには申し訳ないですけど。

つのけん:いえ、全然大丈夫ですよ。

延本:プレイヤーのクレジットとかも、面白いもんね。

つのけん:そうそう。林立夫さんだったり、ポンタさん(村上“ポンタ”秀一)だったり。

延本:ギタリストもベーシストもそう。レコードを欲しくなるのは、クレジットを見たいから、みたいなところがあります。演奏者のクレジットは、なかなかネットでは出てこないから。

倉品:さっき詞と曲の話をしましたけど、もちろんプレイもそうなんですね。僕らはみんなそうで、80'sの頃の分業制だったり、名うてのスタジオミュージシャンが集まって一個の曲ができているとか、そういう意識はそれぞれにあるんです。そういうふうに共有しあっているから。

吉田:林さんが言ってたもんね。“バンドでこうやって、スタジオで一緒にリアルタイムで作っていくのって、昔っぽいよね”って。

つのけん:言ってた。

倉品:今は、こういう作り方をしている人はあんまりいないらしいので。この曲もそうですけど、それぞれのプレイは地味だったり、楽曲の背景に徹していたり、曲に尽くしている感じとか、スタンスとして、あの頃のスタジオミュージシャンが曲を作っていく感じと、僕らが今やっていることは近いと思います。そういう楽曲への向き合い方と、ミュージシャンとしてのスタンスが伝わったらいいなと思いますね。

――それはもう、GOOD BYE APRILのリスナーには伝わっていると思いますよ。何よりも大事なのは“いい曲を作ること”だと。

倉品:本当にそうです。これから、それを伝えに行きたいですね。

――こちらこそ、それをいい感じで、ニュアンスで伝えていこうと思います。……うまくないな(笑)。

倉品:ニュアンスは大事ですよね(笑)。僕も、“普段こんなにニュアンスって言ってたんだ”って、この曲をレコーディングしていて思いました。

吉田:それ、めっちゃ思った!

倉品:“ここのニュアンスが”って言いかけて、「ニュアンスで伝えて」っていう曲を録ってるから、ちょっとギャグみたいになるんですよ。毎回こんなに“ニュアンス”って言ってたんだと気づきました。

つのけん:さっきもドラムのプレイについて聞かれた時に、“ニュアンスが”って言いそうになって、“手癖で”に変えた(笑)。ネタになっちゃうのが恥ずかしくて。

――「ニュアンスって言っちゃいけないゲーム」じゃないから(笑)。ニュアンス、どんどん使いましょうよ。流行らせよう。そしてリリースのあとはライブがあって、メジャーデビュー1周年でいろんな企画があるんですよね。

倉品:そうですね。日韓ツアーの日本編を、5月25日に新代田FEVERでやります。

――その前後、23日から26日まで、すぐ近くの会場で『メジャーデビュー1周年個展』をやるという、これは?

延本:個展というか、写真展ですね。デビュー曲のレコーディングから、この間の韓国ライブまでの写真を展示したりとか。それを東京のライブに重ねて、みんなでお祝いしたいなという感じです。

倉品:会場がカフェなので、カフェを楽しみながら、僕らの1年間の活動を見てもらえたらと思います。楽しそうですよね。

延本:他人事?(笑) 私たちが楽しくする側だから。

倉品:そのあと、7月7日に名古屋、8日に大阪でワンマンライブをやります。

延本:アコースティックではやっていたんですけど、名古屋と大阪は初めてバンドセットでワンマンをやります。ぜひ来てほしいですね。

取材・文=宮本英夫 撮影=高田 梓