ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』のパフォーマンスの様子

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ミュージカルに伝統芸能、オペラに音楽と多様な舞台が日々上演されている街・日比谷。6回目となる今年も日比谷フェスティバルが5月6日(月・祝)まで東京ミッドタウン日比谷(千代田区)で開催され、開催2日目となる4月27日(土)、ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』の主人公ビリーによるパフォーマンスと出演者らによるトークが披露された。

本作品は、1980年代のイギリス北部の炭鉱の町を舞台に、踊ることが好きなひとりの少年と彼を取り巻く大人たちの姿を描き、世界中を虜にした映画『BILLY ELLIOT』(邦題『リトル・ダンサー』)をミュージカル化した作品。ビリーの圧倒的なパフォーマンスと、作品の持つ巨大なエネルギーが評価され、2006年には英国ローレンス・オリヴィエ賞4部門、2009年にはトニー賞で10部門を獲得している。日本では2017年に日本人キャストによる初演が開幕。2020年には再演もおこなわれ、今回は3度目の日本上演となる。

ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』のパフォーマンスの様子

ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』のパフォーマンスの様子

この日、披露されたのは、浅田良舞、石黒瑛土、井上宇一郎、春山嘉夢一と4人の3代目ビリーによる「エレクトリシティ」。2月に行われた製作発表のときも同様のパフォーマンスが披露されたが、そこから約2ヶ月の間にも地道にレッスンを積み重ねてきたビリーたち。伸びやかかつキレのあるダンスと、堂々とした歌唱を見せ、着実な成長を感じさせた。

以下に、ビリーのおばあちゃん役を演じる阿知波悟美(※根岸季衣とWキャスト)と、ビリーの兄・トニー役を演じる西川大貴(※吉田広大とWキャスト)も交えたトークの様子を写真とともにお伝えしたい。

西川大貴

ーー西川さん、最初に『ビリー・エリオット』はどんなストーリーかご説明いただけますか。

西川大貴(以下、西川):イギリスの田舎町が舞台になっているんですけど、炭鉱で栄えてきた町なんです。エネルギーが石炭から石油へと変わり、これからどうしていこうかという中で、このビリーという少年が現れるんですけど……彼、ボクシングを習っているんですが、そのボクシングのクラスの次にバレエのクラスがあって、ひょんなことからバレエをやることになるんですよ。

当時は男の子がバレエをやるなんて、ちょっとどうした? みたいな感じの時代。そんな中、彼の才能はバレエの先生に見出されて、彼がバレエをやりたいとなって。でも町はストライキ中で大変だし……どうする?! どうするんだ、ビリー?! そういう感じです(笑)。

阿知波悟美(以下、阿知波):素晴らしい説明! 臨場感もあった! ……炭鉱なので、みんないろいろな意味で苦しい生活を送っているわけです。 社会問題もありますし、職業差別みたいなものもありますし、いろいろな状況の中で、さぁどうするんだ? というところなんですけれども、そこにビリーがいて、バレエをやりたいと思ったときに、いろいろな苦難を乗り越えて、ひとつの夢に突進していく姿がとても感動的な作品になっています。

阿知波悟美

ーー本当に力をもらえる作品ですよね。

阿知波:そうなんです! 私は初めてお稽古場に行って、子どもたちのダンス--このビリーの役の子だけではなくて、たくさんの子どもたちが出るんですけれど、彼/彼女たちがお稽古している姿を見て、もうずっと泣いてました。あまりにも素晴らしくて、可愛くて。この子たち一人ひとりに、ビリーと同じように夢があって、このお稽古しているんだなと思ったら、もうずっと泣けて泣けて……。

西川:しかも(前回の再演は)コロナ禍で本番ができるかどうかという環境でしたからね。

阿知波:はい。私は再演からの参加なんですね。ですから、初演の方たちにどういうお稽古のシステムかを聞くこともあったんですけれども、コロナ禍ということで、人のお稽古が見られない。自分が出ているところだけのお稽古で。

西川:3密を避けるため。

阿知波:そう。子どもに限らず、大人たちのダンサーさんたちも、みんなマスクをしてやっているものですから、もう息が苦しくて。大変な状況の中、みんなでお稽古していました。最終的にみんなが揃ったのは舞台稽古で、そのときにマスクをとったんですが、誰が誰だか分からなくて。(稽古場では)目しか見ていなかったから。そういうことも思い出されます。

浅田良舞

石黒瑛土

ーーこの『ビリー・エリオット』という作品が世界中で愛されている理由はどういうところにあると思いますか。

阿知波:いろいろな屈境に負けないで、夢に突進していくビリーの姿が、やっぱりすごく感動を呼ぶんだと思います。それと、周りの大人たちが今まで強いられてきたことをそのまま子どもに強いてしまっている状況が、この子によって変わっていく様が、とても感動的だと私は思っています。

西川:ほんとにね、これを喋り出したら止まんないんだよな(笑)。演出がいろいろ素晴らしいんですけど、特に「Solidarity」というナンバーがあって。阿知波さんが仰った、大人たちの苦しさみたいなものと、子どもたちが頑張っていく姿が1曲の中で交差するんですよ!

阿知波:そうなの、そうなの。

西川:これ普通にやったら、なんかぐちゃぐちゃになるというか、見づらくなっちゃうんだけど、これが綺麗に……!

阿知波:そう、素晴らしいステージング、構成になっているんですね。

西川:アイディアが素晴らしい。もちろんストーリーも素晴らしいんですけど、演出とアイディアが。

井上宇一郎

春山嘉夢一

ーービリーたちの今日のパフォーマンスはいかがでしたか。

阿知波:涙をこらえました。(製作発表のときよりも)身長も高くなってて、振りも少しのびのびしてるような気がしました。

西川:いや、当たり前なんですけど、個性が全然違うじゃないですか。だからこれ本番までに今よりもっと自分らしくなるはず。4人でやっているからこそのパワーは出ると思うけど、多分1人になったときに、また「自分のステージだ」という個性がどんどん出ていくと思う。

阿知波:そうなの。前回もそうだった。一人ひとりが「僕だ!」という魅力を醸してきて……。

西川:それが本当に楽しみ!

阿知波:もう最低でも4回観なきゃいけない(笑)。

西川大貴

ーーお二人の好きなシーンや胸が熱くなるシーンは?

阿知波:自分も出ているので、私が歌う「Grandma's Song」と言いたいところだけど……。

西川:あ、僕、それを言おうと思いましたよ!

阿知波:本当? 嬉しい! あなたのそういうところ好きよ(笑)。でもね、私の好きなところは、ワンシーンワンシーン、小さく見どころが散りばめられてるところ。例えばクリスマスパーティーも、ただパーティーをやるだけじゃない。詳しくは観てのお楽しみなんですけれども、今まで私が観たこともないような演出がされたクリスマスパーティーを見ることができます。

楽しいだけのパーティーじゃなくて、 自分たちが置かれている世の中のことやら、社会情勢のことやら、いっぱい盛り込んであって……。そういうところが私は“激アツ”ポイントだと思っています。2幕の頭です!

西川:どこを言おうか……でも、おばあちゃんのシーンも本当に大好きで。当時は、ビリーのお父さんからすると「男の子がバレエをやるなんて、何を考えているんだ」みたいな。で、おばあちゃんの歌の中でも、男は男、女は女の時代を生きてきてみたいなことが含まれていて。で、私はもう生まれ変わったら妻になるのは嫌だ! 男に頼らないで生きていく! と、回想のシーンになって……。最後、チューをするんですよね?

阿知波:そう、それで泣いちゃうの。ビリーが、少しだけ認知症になっているおばあちゃんに文句を言って、わーって騒いでいるんですけども、最後にビリーが手を握ってチュッとしてくれるんです。もうそれで泣きそうになるんですけど……。その後、舞台は暗転になるので、ビリーとおばあちゃんは2人で腕を組んで袖に入っていくんですね。その途中で 「よかったよ、おばあちゃん」と言ってくれる、人たらしなビリーが前回はおりました(笑)。ただでさえ、このぐらいの年の子って可愛いのに、余計なそういうことで、また泣きそうになっちゃった……。

阿知波悟美

ーービリーの皆さんにも感想を聞いてみましょう。お客さんの前で踊ってみて、楽しく踊れましたか?

浅田:はい。とても楽しく綺麗に踊れたのでよかったです。

阿知波:いやあ、いいな。綺麗に踊れたと自分で自信持って言えるんだもん。素敵! みんなが少しずつ成長しているのがよくわかりました。製作発表のときもみんなのパフォーマンスを見て感動したんですけど、今日またさらにみんなが成長してるなと感じました。あれからずっと稽古していたんだよね?

石黒:はい。毎日のように練習しています。

阿知波:でも、よく考えてみると、みんなは学校に行っているわけじゃない? 学校に行って、しかもレッスンも週5日やるということは、自分の時間がないじゃん? 大丈夫だった?

石黒:はい、大丈夫です。

ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』のパフォーマンスの様子

西川:僕からもいいですか。今日は「Electricity」のパフォーマンスをやりましたけど、他に好きなシーンや好きな歌詞は?

井上:「Solidarity」を最近練習していて、楽しくて。好きになりました。

春山:僕は「Dream Ballet」が好きです。

阿知波:前回の本番のときにモニターの前で手をグーにして祈るように見てました。緊張感がすごくあるシーンだから、それがこちらにも伝わってきて。失敗しないでよ、 頑張ってよと思いながらずっと応援していたの覚えている。みんなも頑張ってね。

ーー改めてビリー役が決まったときの気持ちは?

春山:世界一幸せな気持ちになりました!

井上:受かったときは本当に受かったのかなと信じられない気持ちでした。

阿知波:ずっとレッスンしてきて、今どんな風に感じていますか?

井上:ビリーで踊る振りが入ってきて。もう僕はビリーになったから、頑張らないとなと思いました。

阿知波:最近レッスンをしていて、できるようになったところは?

井上:前までバク転がちょっと難しくて、パッとできる感じがなかったんですけど。(今は)練習してきて、すぐできるようになりました。

ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』のパフォーマンスの様子

ーー最後に公演に向けた意気込みをお願いします!

浅田:お客様に感動してもらえるように練習しているので、ぜひ僕のビリーを観に来てください!

石黒:自分自身の限界を打ち破る最高のビリーになります!

井上:お客様に元気を与えられるように、エネルギーを出し切って盛り上げていこうと思います!

春山:お客様に希望を与えられるようなビリーになりたいです!

阿知波:子どもたちの素晴らしいパフォーマンスもそうなんですけれども、周りにいるキャストの方々、それからスタッフの方々みんなが素晴らしい作品にしようと邁進しておりますので、ぜひぜひご期待いただいて、劇場に足を運んでいただきたいなと思っております。その場合にはバスタオルぐらいは必要かもしれません(笑)。ハンカチ1枚2枚をお持ちになって劇場にいらしてください。よろしくお願いいたします。

西川:ミュージカルって歌とダンスとお芝居があると思うんですけど、これ、マジで言いますけど、こんなにいい音楽、こんないい振付、こんないい演出・脚本が揃ったミュージカルはないですから! もう絶対観て後悔ないと思いますので、ぜひ観にいらしてください。一緒に稽古を始められるのがとても楽しみです。よろしくお願いします!

ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』のパフォーマンスの様子

取材・文・撮影=五月女菜穂