「“逆”あおり運転」ってどんな運転? 故意じゃない“ノロノロ走り”も違反! 遭遇したらどう対処する?
「逆あおり運転」って何? どんな行為?
ここ数年のドライブレコーダーの普及により、違反かつ迷惑行為である「あおり運転」の認知が進みました。
そうしたなかで、「逆あおり運転」と呼ばれる危険行為も存在します。
あおり運転は、前走車に対して極端に車間距離を詰めてプレッシャーをかける、つまり後ろから“煽る”危険な運転行為のことを指します。
【画像】「えっ…!」これが高速で「うっかりやりがちな違反」です!(26枚)
2020年(令和2年)6月に公布された改正道路交通法では、一連のあおり行為を「妨害運転罪」として厳罰化されました。
嫌がらせ行為がメインのあおり運転は、「円滑な通行を妨害する目的の場合」と判断された場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられるとともに、行政処分として違反点数25点、免許取り消し・欠格期間(免許の再取得ができない期間)2年が課されます。
そして、「妨害を目的としたあおり運転により、交通の危険を生じさせた場合」は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられ、違反点数35点、免許取消し・欠格期間3年が課されることになります。
ただ、この刑罰と行政処分は妨害運転罪にのみ適用されます。人を死傷させたり、暴行や傷害・脅迫などの犯罪行為が認められると、さらに厳罰が課されることになります。
この厳罰化はかなり効果があったようで、徐々にではあるものの、あおり運転の検挙数は減少傾向にあると言います。
では、このあおり運転とは異なる逆あおり運転とは、どのような行為なのでしょうか。東京都内の教習所で指導員(教官)をしていたI氏は以下のように話します。
「最近注目されている逆あおり運転は、わざとノロノロ走行することで後続車をいら立たせ、あおり運転を誘発する行為、または理由もなく急ブレーキをかけたり蛇行運転して抜かさせないなどの迷惑運転行為を指します。
(逆あおり運転が)さらにタチが悪いのは、クラクションを鳴らして注意しようものなら急停車し降車して恫喝してきたり、追い抜くと今度は執拗に追いかけてきたりするケースが多いそうです。法律的に考えれば妨害運転罪に該当します」
しかし、いわゆる「ノロノロ運転」の速度の解釈は難しいのです。
高速道路や自動車専用道路の場合は最低速度が定められているため、時速50km以下の走行は速度違反となります。一般道の場合、最低速度は制限がないため、どれほど遅くても速度違反とはなりません。
ただし、道路交通法第27条では、「前方のクルマが後方のクルマに追いつかれた場合は、歩道側によって進路を譲る義務」が定められており、周囲に迷惑をかけるノロノロ運転は「通行区分違反」や「安全運転義務違反」に当たる可能性があります。
さらに明らかな逆あおり運転の場合は、妨害運転罪が適用されやすくなっているそうです。
では、あおり運転と逆あおり運転では、罰則に違いが生じるのでしょうか。
「結論から言えば、警察の捉え方としてはあおり運転も逆あおり運転も、妨害運転罪として取り締まるはずです。
そしてその危険行為を証拠映像として残しておいたほうが、より警察も判断しやすくなりますので、ドライブレコーダーは前後を別カメラで撮影・同時収録できるタイプを装着したほうがいいでしょうね」(元教官I氏)
では、逆あおり運転に遭遇したり、自分のクルマが標的になってしまった場合は、どう対処すべきなのでしょうか。先出の元教官I氏は以下のように話します。
「もっとも推奨される対応は、ドアを施錠した状態で安全な場所に停車し、すぐに110番通報すること。高速道路を1人で乗っている場合は、ハンズフリー機能などを使って走行しながらでも通報すべきです。
この場合は公共の安全維持や緊急性の高い事案と判断され、走行中のスマホ利用も罰せられることはないはずです」
また、あおり運転や逆あおり運転をしているドライバーは、興奮していて正常な判断ができない状態である場合が多いため、「自分から注意してやる!」といった無用な正義感は出さないほうがいいのだと言います。
こういうトラブルに巻き込まれたときこそ、被害を最小限に抑えるためにも、ドライブレコーダーによる証拠映像録画と警察への迅速な通報が効果を発揮するのだそうです。
しかし注意したいのは、そもそも自分の運転があおりや逆あおりを誘発させていないかという点です。
不慣れな道で標識を確認しようと低速でフラフラしたり、ブレーキをパカパカ踏んで後続車に煩わしい思いをさせたり、ヘッドライトが間違ってハイビームのまま、といったように、運転技量は千差万別ですが、迷惑運転をするドライバーに限って、自身の行為が原因と認識すらしていないケースも多いようです。
周囲のクルマの速度に合わせる、いわゆる交通の流れに乗った運転を心がけ、速すぎず遅すぎずの速度を維持する運転を心がけたいものです。