昨年までの勢いはどこへいってしまったのか。

 日本代表がすっかりさえないチームになってしまった。

 北朝鮮をホームに迎えたワールドカップ2次予選。日本は1−0で辛うじて勝利を収めたものの、内容的には寂しい試合だったと言わざるをえない。


北朝鮮が球際での激しさを増して以降、劣勢を強いられた日本。photo by Sueishi Naoyoshi

 前半、とりわけ前半なかばまでの時間において、相手の北朝鮮はあらゆる面で"緩かった"。

 戦術的に見ても、コンパクトなブロックを形成するわけではなく、かといって、厳しくマンツーマンで日本選手に張りつくわけでもない。どうやって守るのかが曖昧で、ボールの動きや人の動きにフラフラと引っ張られ、チーム全体のバランスは悪かった。

 加えて、球際の勝負においても、激しく体をぶつけてくることはなく、日本の選手たちにラクにボールを持たせてくれた。

 試合開始直後、日本はMF田中碧のゴールで先制したあとも、自ら高い位置でボールを奪ったFW前田大然が決定機を得ているが、北朝鮮の選手たちは、まるで地に足がついていないといった様子だった。

 ところが、そこで日本は一気呵成に畳み掛けることができず、いくつかのチャンスを作ると、その後は北朝鮮につき合うように、こちらもまた緩くなってしまった。

 ラクにボールを保持できることがむしろ仇となったのか、選手個々の判断が遅く、なかなか攻撃がテンポアップしない。グループでの連動性にも欠け、次第にゴールは遠のいた。

 これを決めていれば、もっとラクな試合展開になったはず。そんなチャンスがいくつかあったのは確かだが、そもそも決定機の数自体が少なかった。

 すると、前半20分過ぎから次第に目覚め始めた北朝鮮が、徐々に反撃。後半に入るとラフプレーもまじえ、球際での激しさを増した相手に、日本は劣勢を強いられる時間が長く続いた。

 相手が緩いうちは目立たなかった日本の粗が、たちまち露呈した格好だ。

「選手の勝ちたいという気持ちと、粘り強く最後まで戦うという気持ちが勝利に結びついた」

 試合後の森保一監督は、概ねポジティブな発言に努めたが、それらの言葉はストンと腑に落ちるものではなかった。

 多くの新戦力を試した結果がこれだというなら、それなりの納得感はあっただろう。だが、先発メンバーの顔ぶれは現状のベストメンバー、あるいはそれに準ずるものだったのだ。

 にもかかわらず、この試合内容では、アジアカップで残した悪い印象を払拭するには到底及ばない。

 それにしても、今年に入り、日本代表の打つ手がことごとく裏目に出ていると言おうか、後手を踏んでいると言おうか、とにかく流れが悪い。

 アジアカップ期間中にピッチ外で問題が起きたMF伊東純也にしても、森保監督はずっと招集し続けていたのに、まだ事実関係がはっきりとしない疑いの段階でメンバー外に。攻撃のキーマンとも言うべき選手を欠く事態に陥っている。

 その判断自体を必ずしも否定はしないが、選外とする理由について、まるで釈然としない説明がなされるばかりでは、ただ臭いもの蓋をしているだけ、との印象は拭えない。

 また、試合の重要度にかかわらず、ベストメンバーにこだわり続けた挙句、ついにDF冨安健洋、MF三笘薫が"パンク"。それぞれ、所属クラブで長期離脱の憂き目に遭っている。

 もちろん、その原因のすべてが日本代表にあるわけではない。避けられないケガだったのかもしれない。しかし、だからといって、単に不運で片づけてしまうのも、あまりに無責任というものだろう。決して結果論ではなく、少なくともアジアカップでの招集は見送るべきだった。

 今回の北朝鮮との2連戦にしても、いずれもヨーロッパから遠く離れた極東での開催である。ヨーロッパ組、なかでもチャンピオンズリーグをはじめとするUEFAの大会を今月こなしてきたクラブに所属する選手は招集せず、国内組を重点的に試す機会にしてもよかったのではないだろうか。

 不測の事態とはいえ、平壌で予定されていたアウェーゲームが開催中止になった今、日本での試合に出場しなかったヨーロッパ組は、いったい何のためにわざわざ来たのか、ということになってしまった。

 言わんこっちゃない、と愚痴のひとつも言いたくなるような災厄の連続に、どうにも日本代表の悪い流れを感じてしまう。

 よほど現状に不安を感じたのか、森保監督が助けを求めたのは、ベテランのDF長友佑都。一昨年のワールドカップを最後に日本代表から外れていた37歳である。

 指揮官がそれだけ危機的状況だと考えているからこその判断なのだろうが、客観的に見れば、それが意味するのは日本代表の後退だ。

 ワールドカップ本番を前に、ラストピースとしてやはりベテランの力が必要だと呼び戻すのならともかく、アジア予選の、それも2次予選の段階でとなると、とても前向きなメンバー選考とは言い難い。

 日本代表がいろいろと心配だ。