漫画:©︎三田紀房/コルク)

東大に合格できる可能性を秘めた子供の才能が、親や先生の無知のせいで潰されてしまうことが非常に多い――。東大セミナー講師・指導歴25年のベテラン・川本雄介氏はこう語ります。今回は『ドラゴン桜で学ぶ 伸びる子供の育て方』を上梓した川本氏が、負けず嫌いな子どもとの接し方について共有します。

負けず嫌い=この子はダメだ、なのか?

みなさんは、「負けず嫌いな子」に対して、どんな印象を持っていますか。

勉強でもゲームでも、負けるのが嫌で、「ズル」してまで勝とうとするような子っていますよね。将棋や囲碁で負けそうになったら、盤面をひっくり返したり、テストでもどうしてもいい点を取りたくてカンニングしたり……。

もちろん、嘘をついたり、ズルをするのはよくないことですが、そういう子に対して「この子はダメだ」とレッテルを貼ってしまうのもよくありません。実は負けず嫌いなのは、とてもいい傾向なのです。今回は、「負けず嫌いな子の成績の伸ばし方」についてお話ししたいと思います。

「負けず嫌い」なタイプの子のほうが、成績を上げやすいのはなぜなのか、まずは『ドラゴン桜2』のワンシーンをご紹介します。

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「勉強とは怒りだ」と桜木先生は説明していますが、まさにそのとおりだと思います。できないところができるようになるのが勉強であり、できないところに対してちゃんと怒れる人のほうが、成績を上げやすいのです。

ただ、もしかしたらみなさんの中にはこう思う人もいるかもしれません。

「勉強に対して『負けず嫌い』を発揮してくれたらいいけれど、うちの子はそれ以外の面でも『負けず嫌い』なんだよな」

「勉強以外のもの、ゲームとかスポーツでも『負けず嫌い』な場合もあるから、一概に『負けず嫌い』のほうがいいってことはないんじゃない?」

しかし実は、東大に合格する生徒は、みんな勉強以外の面も含めて「負けず嫌い」なんですよね。勉強以外の物事も含めて、些細なことから、さまざまな勝負事に対して負けず嫌いで、向上心が高いのです。

塾のテストで点数を気にする、入試のときの点数を話す、といった学力面においてだけではありません。学校のスポーツ大会や、部活、文化祭など、勉強以外のちょっとした行事でも本気で勝負する傾向があります。

「頭いいんだから、別に勉強以外のところでそんなに熱くなることないんじゃない?」と思うかもしれませんが、スポーツだろうがなんだろうが、本気で彼ら・彼女らは悔しがります。

受験生でも、本気で運動会に参加

こんな話もあります。東大合格者の多い開成高校や麻布高校などの超有名進学校は、どこも運動会が大人気で、受験を控えた高校3年生でも気合十分で運動会に挑み、本気で喜んだり本気で泣いたりするのだそうです。

そうした高校の先生曰く、「本気で勝ち負けにこだわっている高校3年生ほど、受験で東大をはじめとする名門大学に合格できる場合が多い」のだそうです。

どんな勝負でも、全力を出す。勝ったら本気で喜び、負けたら本気で悲しむ。そういう生徒にとっては、勉強か勉強以外か、といった垣根なんてないのです。

むしろ、「勉強は全力を出せ、勉強以外は全力を出すな」というような指導は、子どもにとっては息苦しいものであり、親から管理されている感覚になってしまいます。これを続けていると、負けず嫌いの子のよさが潰され、結局勉強でも全力を出せない子になってしまいます。

「ゲームでもスポーツでも本気で挑むように」と指導したうえで、「なぜゲームやスポーツと違って、勉強では本気を出さないのか」と指摘したほうが、子どもにとっては響く場合があります。

親御さんや先生にお願いしたいのは、きちんと子どもに「どんな勝負に対しても、全力を出す心」を持たせてあげることです。そのためには、一緒にゲームや遊ぶときでも、子どもだからといって手を抜かないことが大事です。

よく、子どもが異常なまでに負けず嫌いだと「そんなに悔しがるな」と言う親御さんがいますが、そうではなくて、向き合ってあげることが必要だと思います。

親から見て、「そんなくだらないことで悔しがるの?」というようなことがあっても、「くだらないことでそんなに執着しないの!」とは言わず、「悔しいね。次はどうすれば勝てるかな?」と相談に乗ってあげることです。こうした姿勢を持っている大人が周りにいるかどうかは、子どもの成長にも大きく関わってきます。

以前担当した生徒で、授業中に踊り出す子がいました。「なんで踊ってるんだ?」と聞いたら、「正解したことが嬉しくて!」と言っていました。それくらい感情豊かで、勝ったときには喜んで、負けたときには泣くほど悔しがる子というのは、成績が伸びやすいです。実際、踊り出したその子はその後、国公立大学に合格しました。

生意気な生徒ほど、伸びる傾向がある


また、塾で多くの生徒を見ていると、毎年一定数、「こちらを言い負かそう」としてくる生徒がいます。「先生はこう言っていましたけど、こうなんじゃないですか?」と聞いてくるような、一般的には「生意気」と呼ばれる生徒です。

意外に感じるかもしれませんが、こういう生徒の成績はかなり伸びる場合が多いです。先生に対してもしっかり勝負を挑み、先生も全力でぶつかると、生徒は大きくレベルアップすることがあります。

私は毎年、そういう生徒がいると「お!今年も来たな!」となんとなく嬉しく感じるものです。どんな「負けず嫌い」も受け入れてあげることが、その子の成長につながります。ぜひそう考えて、子どもと向き合ってみてあげてください。

(川本 雄介 : 東大セミナー講師、ドラゴン桜コース責任者)