「エンジニア的思考」を身につけるには(写真:asaya/PIXTA)

「数字に弱く、論理的に考えられない」

「何が言いたいのかわからないと言われてしまう」

「魅力的なプレゼンができない」

これらすべての悩みを解決し、2万人の「どんな時でも成果を出せるビジネスパーソン」を育てた実績を持つビジネス数学の第一人者、深沢真太郎氏が、生産性・評価・信頼のすべてを最短距離で爆増させる技術を徹底的に解説した、深沢氏の集大成とも言える書籍、『「数学的」な仕事術大全』を上梓した。

今回は「数学的思考」を取り上げ、これからの日本に求められるエンジニア的な考え方とその身につけ方を紹介する。

求められる「背景にあるメカニズム」を見抜く人材

先日、ある有名企業から取材と対談のご依頼をいただいた際、担当の方が次のようにおっしゃっていました。


「当社はエンジニア的思考が大事だと思っています」

「エンジニア的」とは、「エンジニアのように」ということです。では、「エンジニアのような人」とはどのような人なのでしょうか?

その問いに答えるために、まずは次の数字の連なり(数列)をご覧ください。

A:(1、2、4、8、16、…)

B:(1、3、9、27、81、…)

C:(1、3、5、7、9、…)

じつは、上記の数列は2つのグループに分類することができるのですが、パッと見で気づけたでしょうか。

正解は、AとBのグループ、Cのみのグループです。その理由を解説していきます。

よく見ると、Aは2倍ずつ、Bは3倍ずつ増えています。このように倍々に増えていく構造を持っている数列を等比数列と呼びます。

一方で、Cは2ずつ増えていることがわかります。このように、一定の数ずつ増えていく構造を持っている数列を等差数列と呼びます。

つまり、A、B、Cにはそれぞれ構造、すなわちメカニズムがあり、そのメカニズムの違いによってグループ分けができるのです。

もともとの問いに戻ります。「エンジニアのような人」とは、どのような人なのか。

それは、先の例のような「メカニズム」をすぐに見抜くことができる人のことです。

メカニズムとは、物事の仕組みや構造のことを指します。仕事をするにあたり、その対象のメカニズムを明らかにできる人。これがエンジニア的な人であり、そんな人の頭の使い方が、エンジニア的思考なのです。

「構造化」と「モデル化」でキャリアアップ

では、エンジニア的思考を身につけるためにはどうすればよいのでしょうか。

私の提唱する数学的思考の中に、「構造化」「モデル化」という2つの動作があります。この2つは物事のメカニズムを明らかにする思考法であり、マスターすれば、自然とエンジニア的思考も使いこなせるようになります。

構造化とは、文字通り物事を構造で捉える思考法です。先ほどの数列の例は、まさにこの構造化を活用することでメカニズムを見抜きました。

モデルとは、「型」のことです。すなわち、モデル化とは、型をつくることで、物事をよりシンプルに、わかりやすく示すという思考法です。

数学とはモデルの学問でもあります。公式や定理と呼ばれるものはすべてモデルであり、物事を分析し体系立てることで型を示すものが数学です。

たとえば先ほどご紹介した数列というテーマにおいてもたくさんの公式や定理が存在しますが、それらは数の増減に関するメカニズムを明らかにした結果と考えることができます。

「構造化」と「モデル化」はとても数学的な動作であり、かつ多くの企業から喉から手が出るほど求められているビジネススキルなのです。必然的に、それらを使いこなせる人材は給料が高くなります。

もしあなたもエンジニア的思考が必要と思われたら、ぜひ「構造化」と「モデル化」を訓練してください。ビジネスパーソンが今から理工系の勉強をし直すのは現実的ではありません。しかし「構造化」と「モデル化」の訓練は誰でも簡単に可能です。

「やりがいのある仕事」には必須のスキル

「構造化」や「モデル化」は、仕事にどのように活かされるのでしょうか。

たとえば、あなたが所属する会社の売り上げが、どのように変化しているかを知りたいとします。構造化によって、売り上げが増えるメカニズムは、商品の質の向上と広告の効果であると考えることができるかもしれません。

だとすると、広告宣伝費が変わっていない場合であれば、売り上げ増加の理由は商品の質が向上したからだと説明することができるのです。

また、上司から広告宣伝費の効果を明らかにするよう命じられることもあるかもしれません。その場合、広告費を1円増やすごとに売り上げはいくら増えているのか、さまざまなデータを用いて明らかにすることになります。

これこそまさにモデル化であり、売り上げと広告費の関係を数学の公式のような、シンプルな状態にすることを目指します。

このような、非常に難しくもやりがいのある仕事に役立つスキルが「構造化」や「モデル化」であり、だからこそこの2つのスキルを使いこなすエンジニア的人材が重宝されるのです。

業績が上がらないという問題のメカニズムを明らかにできる人。採用活動がうまくいかないという問題のメカニズムを明らかにできる人。上司とソリが合わないという問題のメカニズムを明らかにできる人。そういう人が欲しいのです。

あなたはエンジニアになる必要はありません。しかし、間違いなく「エンジニア的」であったほうが、あなたのキャリアに役立ちます

あなたの身近にいる「エンジニア的」な人を探し、その仕事術や思考法を真似てみてください。エンジニアの行いを盗むのです。そしてエンジニアのように仕事をするのです。あなたにデメリットはひとつもありません。

(深沢 真太郎 : BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家)