1年の締めくくりの大切な時期に、子どものやる気を高めるにはどうしたらいいのでしょうか(写真:msv/PIXTA)

3月は子どもたちにとっても1年の締めくくりの時期です。今の学年が間もなく終わり新しい学年に進級する節目であり、卒業や卒園をして入学・進学・就職をする子どもたちにとってはさらに大きな節目です。この大切な時期に、子どものやる気を高めるためにどうしたらいいのでしょうか?

多くの親御さんがやりがちなのが、「今年は算数がダメだったから、来年はがんばろう」とか「中学になったらもっと勉強をしっかりやらなきゃ」などという言い方で発破をかけることです。でも、こういうやり方で子どもをやる気にさせることはできません。

プラス思考で1年を振り返る

それよりも、まずはプラス思考で1年を振り返ってみましょう。そのほうが、新しい1年への前向きな気持ちを持てるようになります。

そのためのコツは2つです。1つは「○○が楽しかった。○○をがんばった。○○ができるようになった」など肯定的な部分にフォーカスすることです。2つめは、足りていないことやできないことはあえてスルーすることです。実は、この2つが子どもを伸ばすコツです。

もちろん、もともと子ども自身が向上心が高くて、自分の目標に向かってやる気満々という状態でしたら、足りていないことなどを振り返るのも効果があります。でも、大抵はそうではないので、上記2つの方法がお勧めです。

例えば次のような感じでいいと思います。今では当たり前になっているものでも、1年前はできなかったことなど、探せばたくさんあるはずです。

・親子で旅行に行って楽しかった。パパとのじゃれつき遊びが面白かった
・ペットの世話をがんばった。レゴブロックをがんばった
・蝶々結びができるようになった。九九が言えるようになった

プラス思考で振り返るために、ぜひ活用してほしいのが子どもたちが学校や園から持ち帰ってくるモノたちです。例えば、絵、作品、読書記録、身体検査の記録、がんばりカード、がんばり賞や賞状、勉強したプリントやワークなどです。そういうモノを見ながら子どもの話を聞いてほめたり、コミュニケーションを深めたりしましょう。

子どもの絵を見たら、ぜひほめてあげてください。内心は「下手だなあ」と思ってしまうこともあるかもしれませんが、そういうときも部分に注目すればほめられるところが見つかります。「犬の描き方が迫力あって、本当に動き出しそうだね」というようにほめます。あるいは、「ここは立体感が出てるね。どうやって描いたの?」と聞いてあげるのも効果的です。

そして、さらに、絵を上手に飾ってあげるなどして、大切に扱ってあげるといいですね。安いものでいいので、額縁に絵を入れて飾るとすごく見栄えがして、子どもは喜びます。

読書記録でしたら、1年間で読んだ本のタイトルなどが書いてあると思います。それを見て「たくさん読んだね」とほめたり、あるいは「この本は、お父さんも子どもの頃に読んだよ」というように、いくつかの本を話題にしてみたりするといいですね。また、ちょっと注意深く見れば、その子の好きな本の傾向がわかるので、春休みにそういう本を買ってあげたり図書館で借りたりするのもいいと思います。

また、身体の成長の記録もぜひ有効活用しましょう。子どもは大人と違って身体が大きくなることに純粋な喜びを感じますので、「1年前より身長が6センチも伸びたね!」と一緒に喜んであげましょう。

また、その子が6年生でしたら1年生の入学時と比べるのもお勧めです。1年生のときと比べて30センチ伸びていたら、ものさしや巻き尺などで実際にその長さを示してあげるといいでしょう。「こんなに伸びたんだ!」と感じられて、自分の成長を実感できるはずです。

また、以前履いていた靴や着ていた服と今のそれを比べるのもいいでしょう。入園時のモノと卒園時のモノ、小学校入学時のモノと卒業時のモノ、それらを比べれば自分の成長が一目瞭然です。親御さんにとっても感慨深いものがあると思います。

ほめられる要素はいくらでもある

子どもが学校から持ち帰ったがんばりカード、がんばり賞、賞状などにも1年間の子どもの足跡が残っています。ぼんやり見ていると気づきませんが、よく見ればそこに親が知らなかった学校での子どものがんばりが表れているはずです。ですから、それを話題にして子どもの話を聞いたりほめたりしましょう。しばらく壁に貼るなどして飾ってあげるのもいいでしょう。または、それらを手に持つなどして記念撮影するのもお勧めです。

また、学校で勉強したプリントやワークなどにも、ほめられる要素はいっぱいあるはずです。それらも、親の知らないところでけっこうがんばっていたという証拠なのです。

子どもの成績表は叱る材料にしないことが大切です。それを見て叱ったとしても、それで改善することはまずありません。それよりも、何かしらほめられる部分を見つけてほめてあげてください。もしそれができないなら、あえてスルーしましょう。

それ以外にも通信教育などをしている場合は、やり終わったものを積み重ねるなどして、頑張った足跡を自覚できるようにしてあげましょう。

また、今年撮った写真や動画を親子で一緒に見てみるのもいいですね。親子の日常のスナップ、家族旅行でのひとこま、兄弟や友達と一緒に遊んでいるところ、縄跳びの練習を頑張っている姿、習い事の発表会、スポーツの試合など、写真や動画を見ることで思い出されることはたくさんあるはずです。また、それらの中からこれはと思う写真をプリントアウトして目に見えるところに貼っておくのもお勧めです。

そうすれば、わざわざ見ようとしなくても生活の中で自然に目に入ってくるようになります。縄跳びをがんばっている写真を見るたびに、一瞬でもそのときのことが頭をよぎり「わたし、あのとき縄跳びがんばったな」と思い出すことができます。繰り返し見ているうちに、「わたしは努力できる。がんばれるんだ」と思えるようになります。それが自己肯定感を高めることに繋がります。

また、家族で写っている写真を見れば「あのとき楽しかったなあ。ぼくには大切な家族がいる。みんなぼくを大切にしてくれる。ぼくもみんなが大好きだ」と思えるようになります。家族の愛情を実感することで自己肯定感が高まりますし、家族の人間関係もよくなります。私はこのように写真を活用して子どもを伸ばす方法を「ほめ写」と呼んでいます。

ということで、以上のようにプラス思考で1年を振り返ってみましょう。そうすれば新しい1年に前向きな気持ちで臨めるようになるはずです。

親の応援があれば、子どもは楽しい時間が過ごせる

そのうえで、春休みには、次の学年の幅広い意味での予習をしておくのもいいと思います。例えば、理科で月の勉強をするなら月齢カレンダーを貼っておく。国語で故事成語をやるなら故事成語の学習マンガを、算数で分数をやるなら分数の絵本を用意しておく。社会で歴史の勉強するなら郷土博物館に行ってみるなど。このように生活や遊びの中で「楽しみながら」ちょっと予習をしておくのです。

すると授業が始まったときに「あ、見たことある。ぼく、これわかりそう」と思えます。この「わかりそう」が大事です。こういう気持ちになれるとその勉強に大きな関心と自信をもって臨めます。まったく初めて見聞きするものだと「え、何それ?難しそう」と思ってしま可能性があります。子どもはちょっと知っていることやちょっとやったことがあることを、学校で勉強すると非常に前向きな気持ちで臨めるのです。

最後になりますが、もうひとつ春休みにぜひ取り組んでほしいことがあります。それは、子ども本人が好きなことを応援してたっぷりやらせてあげることです。親の応援があれば、子どもは好きなことに熱中できて楽しい時間が過ごせます。それによって幸福度が上がりますし、親子関係もよくなります。

さらに「自分はこれが得意だ」と思えるようになると、自分に自信が持てるようになります。すると、生活全体に張りが出てきて生きるエネルギーがわいてきます。

「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」というテレビ番組に出てくる子どもたちは、まさにそういう子たちです。あの番組に出てくる子どもたちが特別ということではなく、どの子にもそういう可能性があります。ぜひ、子どもが好きなことを応援してあげてください。


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(親野 智可等 : 教育評論家)