2024年2月、警察庁は令和5年の特殊詐欺発生状況について発表(参照:警察庁)。特殊詐欺全体の認知件数は1万9033件で前年より8.3%増、被害総額は4万4124億円にのぼり前年より19%増となりました。

 

総認知件数の割合の上位を手口別で見てみると、「架空料金請求詐欺」が27%、「還付金詐欺」が22%、「オレオレ詐欺」が20.7%という結果に。トップに立った「架空料金請求詐欺」は、文字通り架空の料金を請求しお金をだまし取る手口で、前年比の認知件数が75.8%増、被害額は35.7%増と、特に被害が増えている詐欺です。

 

ポップアップ表示による手口が半数に迫る

 

架空料金請求詐欺は、どのように行われているのでしょうか。その手口について見ていきます。()内は架空料金請求詐欺の手口に占める割合です。

 

・ポップアップ表示(43.8%)

ウェブサイトの閲覧時に突然「ウイルスに感染した」という警告や「料金が発生した」といった情報が表示され、誤ってクリックした相手にウイルスからの復旧などを名目に金銭を要求する手口です。2023年度の警視庁のレポートには記載がありませんでしたが、新しい手口として近年増加していると考えられます。

 

・電話(30.2%)

家の電話やスマートフォンに見知らぬ番号から電話がかかってきて、自動音声で「未納料金が発生している」との伝言が残される手口です。実在する事業者の名称を名乗っている場合もあるので注意が必要です。前年度より6%増加しています。

 

・メール・メッセージ(25.5%)

実在する事業者の名称を名乗って、メールやショートメッセージに「有料サイトの利用料金が未納です」などの内容が送られてくる手口です。そこに貼られているリンクや電話番号に連絡をすると、相手から金銭を要求されてしまいます。こちらは前年度より22%減少しました。

 

前年度のレポートと比較して分かるのは、詐欺の手口の変化。これまでは、電話やメール/メッセージなど犯罪者からコンタクトしてくる手口が総数の多くを占めていました。ところが近年では、ポップアップ表示に焦ってクリックしたり、表示されている電話番号にダイアルしたりと、被害者から連絡がくるように仕向ける手口に変わっていると言えます。

 

ポップアップ表示を使ったサポート詐欺が増えた背景として、警察庁は、犯人側にとっての効率の良さを指摘します。犯人側にとっては偽の警告にだまされて復旧を求める被害者側から電話がかかってくるため、オレオレ詐欺のように不特定多数に電話をかける必要がないというのです。

 

架空料金請求詐欺にだまされないためには

それでは、架空料金請求詐欺にだまされないためにはどうしたらいいのでしょうか。警察庁や各地方自治体が呼びかける情報を整理すると、以下の方法があげられます。

 

・身に覚えのない請求が来ても連絡しない

実在する事業所や、裁判所の名前が書かれた請求情報を目にすると、身に覚えのない場合でも信じてしまい、連絡をとってしまいがちです。慌てて記載されているアドレスや電話番号に連絡せず、消費生活センターや最寄の警察署に相談するといいでしょう。

 

・電子マネーの券面番号は教えない

架空料金請求詐欺の場合、金銭のやり取りがAmazonギフトカードや、Appleギフトカードなどの電子マネーで行われることが多いです。コンビニなどで購入することを指示された後、カードに書かれている番号を通知するよう要求してきますが、決して教えてはいけません。

 

・文面や記載されている電話番号などを調べる

届いた書面やメールに記載されている連絡先に連絡する前に、その連絡先をインターネットで検索して調べましょう。同様のケースで情報を寄せる投稿が見つかるかもしれません。もし詐欺であるとの情報が掲載されていたら、決して連絡を取らないようにしましょう。

 

・見知らぬ番号や非通知の場合は留守電にする

見知らぬ番号や非通知で電話がかかってきた場合、慌てて電話に出ようとせず留守番電話に切り替えましょう。相手が話している内容を確認し、覚えのない用件であればかけ直す必要はありません。

 

これらの対策をしても悪質な連絡がある場合は、はがきやメール・メッセージの内容を証拠として保存しておきましょう。この証拠は、犯人を調査するための重要な情報となるため、消費者センターや警察に相談する際に有効です。

 

唐突なポップアップ表示による警告は、誰でも恐怖心を煽られ焦ってしまいがち。上記の対策からもわかるように、まずは落ち着いて判断することが被害を回避する術と言えるでしょう。