MicrosoftがAI関連サービスの開発を主導するMicrosoft AIというAI部門を新設し、同部門のCEOにGoogleのAI開発部門であるGoogle DeepMindの前身であるDeepMindの共同創設者であるムスタファ・スレイマン氏が任命されました。スレイマン氏はMicrosoftが開発するMicrosoft CopilotやBing、Microsoft Edgeといった消費者向けAI関連製品の開発を進めることとなります。

Mustafa Suleyman, DeepMind and Inflection Co-founder, joins Microsoft to lead Copilot - The Official Microsoft Blog

https://blogs.microsoft.com/blog/2024/03/19/mustafa-suleyman-deepmind-and-inflection-co-founder-joins-microsoft-to-lead-copilot/



Google DeepMind co-founder joins Microsoft as CEO of its new AI division - The Verge

https://www.theverge.com/2024/3/19/24105900/google-deepmind-microsoft-mustafa-suleyman-ai-ceo

スレイマン氏は2010年にAI開発企業のDeepMindを、デミス・ハサビス氏らと共同設立した人物です。Googleは2014年にDeepMindを買収しており、買収額は当時のレートで500億円でした。

Googleが謎の人工知能開発スタートアップ企業「DeepMind」を500億円で買収 - GIGAZINE



その後、DeepMindはプロの囲碁棋士にも勝利することができる「AlphaGo」と呼ばれる囲碁AIを開発して一躍注目を集めます。

その間、スレイマン氏はGoogleでAI開発の先駆者として活躍を続けますが、2019年に自身が主導するAI開発プロジェクトの一部をめぐる論争を理由に、Googleから休暇を与えられたことがBloombergにより報じられます。その後、GoogleとDeepMindが「スレイマン氏がスタッフをいじめた」という苦情の調査を開始したことがウォール・ストリート・ジャーナルの報道により明らかになっていました。

休暇を与えられた後、Googleはスレイマン氏をAI製品管理およびAI政策担当ヴァイスプレジデントに任命していますが、2022年に同氏はGoogleを退職。そして、新しくAIスタートアップのInflection AIを設立しています。

Inflection AIはOpenAIが開発する大規模言語モデル(LLM)「GPT-4」の半分以下の計算で、ほぼ同等のIQを持つことが可能なパーソナルAI「Pi」や、基盤モデルの「Inflection-2.5」を開発しています。

GPT-4の半分以下の計算でほぼ同等なIQを持つパーソナルAI「Pi」と基盤モデル「Inflection-2.5」が登場 - GIGAZINE



そして2024年3月20日、スレイマン氏が自身のX(旧Twitter)アカウント上で「本日、Microsoft AIのCEOとしてMicrosoftに加わることを発表できることを嬉しく思います。私は、Copilot、Bing、Edgeを含むすべての消費者向けAI製品と研究を指揮していきます。私の友人で長年の共同研究者であるカレン・シモニャンが主任研究員となり、Inflection AIの素晴らしい仲間の何人かが同じくMicrosoftに加わることを選択しました。Inflection AIは新しいCEOの下でその使命を継続し、そのAPIを世界中の開発者や企業に広く利用できるようにすることで、これまで以上に多くの人々にリーチすることを目指します。素晴らしい旅でした、これからもたくさんのことが待っています。皆様のご支援に感謝いたします。本当に物事は始まったばかりです」と投稿し、Microsoft AIのCEOに就任したことを発表しました。





なお、Microsoft AIが新設されても、ケビン・スコット氏はMicrosoftの最高技術責任者(CTO)およびAI担当ヴァイスプレジデントを引き続き務めることとなります。

Microsoftのサティア・ナデラCEOは、スレイマン氏がAI部門のCEOに就任することについて「私はムスタファのことを数年前から知っており、DeepMindとInflection AIの両方の創設者として、また先見の明のある製品開発者として、大胆な使命を追求する先駆的なチームの構築者として大いに尊敬しています」「私たちはこれまで不可能だと思われていたテクノロジーを構築するチャンスをつかみました。AIの恩恵を地球上のすべての個人と組織に安全かつ責任をもって確実に届けるという我々の使命にかなう人物です」と語っています。

Microsoftは数千億円を費やしてOpenAIとパートナーシップを提携したり、AIスタートアップのMistral AIとパートナーシップ契約を提携したりと、AI分野への投資を加速しています。そんな中でMicrosoftが独自の新しいAI部門を設立したこととなるわけですが、既存のパートナーシップが放棄されるわけではありません。Microsoftは「OpenAIの基礎モデルロードマップをサポートするカスタムシステムやシリコン作業を含むAIインフラストラクチャーの構築を継続し、基盤モデルに基づいて製品を構築する」と述べ、OpenAIとの協力関係を今後も維持すると明言しています。