藤巻の“孤独な闘い”に終止符。ついに真犯人を突き止め…続編にも期待『グレイトギフト』最終回<ネタバレあり>

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<ドラマ『グレイトギフト』最終回レビュー 文:くまこでたまこ>

主演・反町隆史、脚本・黒岩勉によるサバイバル医療ミステリー『グレイトギフト』。

3月14日(木)に放送された最終回では、藤巻達臣(反町)が久留米穂希(波瑠)とともに真犯人を突き止める姿が描かれた。

<※以下ネタバレを含みますので、ご注意ください>

◆藤巻が聞きたかった妻からの「ありがとう」

家族を守るために、白鳥稔(佐々木蔵之介)に大きな反撃もできずに従ってきた藤巻。一人、孤独な状態で闘う藤巻の姿は、妻・麻帆(明日海りお)や娘・あかり(藤野涼子)に伝わることはなかった。

それどころか、藤巻は麻帆やあかりに冷たい態度を取られてしまう。そのたびに、藤巻を応援する身としては、やるせない思いでいっぱいになったが、最終回では、そんな藤巻が救われる展開になった。

白鳥との最終決戦に向かう藤巻の前に麻帆が現れる。一瞬、「最後の最後に爆弾を落とすのか…?」とひやひやしてしまったが、それはいらぬ心配だった。

麻帆は郡司博光(津田健次郎)から、藤巻が麻帆のためにやってきたすべてのことを聞いたことを打ち明ける。

さらに、麻帆は「あたしを救ってくれてありがとう」と感謝の思いと、「あたしのために本当にごめんなさい」と謝罪の言葉を伝える。それに対し、藤巻はぐっとこらえるように、「麻帆が謝る必要はない。すべて僕が自分で決めたことだから」とはっきりとした口調で告げるのだ。

そんな藤巻に、麻帆は決意のようなものを感じ取ったのではないだろうか。藤巻と家族、夫婦、恋人として過ごしてきた日々を思い出したのかもしれない。藤巻から離れたい思いで離婚届を突き付けた麻帆はそこにはいなかった。

そして、藤巻に向けて、涙ながらに病院を辞めて、どこかへ引っ越すことを提案する麻帆。セリフにはなかったが、「一緒に」という言葉がちゃんと隠されていた。しかし、藤巻はその提案をきっぱりと断る。

藤巻にとって、麻帆からもらった「ありがとう」という言葉は誰に言われるよりも特別なものだった。これまで藤巻がやってきたことが、すべて間違いじゃなかったと思えた瞬間に自然と涙があふれた。

◆最後の最後まで信じられなかった真犯人の演技がすごい

最終回では、真犯人がついに明らかになった。

その人物とは、明鏡医科大学付属病院病理部の検査技師・奈良茉莉(小野花梨)だ。

奈良は、『グレイトギフト』の中で、一番明るく、誰に対しても平等に接していた。たしかにちょこちょこ怪しいなと思う瞬間はあったが、誰もが怪しいので、その怪しいなと思うことも、「気のせいか」くらいで終わらせていた気もする。

しかし、その「気のせいか」が気のせいではなくなっていた。まずは、第8話で殺人球菌「ギフト」のレシピをいとも簡単に作り上げたことにある。この時点で、SNSでは「奈良犯人説」が浮上していたが、それでも信じられなかった。

奈良は、いつでも同じテンションで、怖い顔一つ浮かべたことがない。ただ毎回、藤巻と久留米を意地でもカップルにしようと奮闘する姿だけは、「怖いな…この子」と感じていた。

どこにでもいそうな元気で明るい奈良。そんな彼女は、最終回で真犯人として登場する。

少し前の藤巻や久留米であれば、「あの奈良さんが…」と驚いたはずだ。しかし、さまざまな裏切りを繰り返された藤巻と久留米は動揺することなく、奈良が真犯人であることを突き止め、引きずり出すことに成功する。

真剣に怒りをあらわにする藤巻と久留米に、奈良は動じることもせずに、いつものように振る舞う。あまりの変わらぬ態度に「やはり犯人ではない説」を唱えたかったが、奈良が真犯人であることには変わらなかった。

怪しさを醸し出しながらも、最後の最後まで確信を持たせなかった奈良を演じる小野花梨の演技力が素晴らしかった。

◆続編がありそうなラスト

藤巻が迎えたラストは、人によってはすっきりしたかもしれないし、しなかったかもしれない。

正直、私も見るたびに感情が渦巻いていた。誰がどんな感想を抱いても、間違いではないと思う。ドラマの楽しみ方は自由なのだから。

視聴者の声には「藤巻先生が可哀想」「またこの展開」など、ドラマの展開に対してもどかしい思いもあった。藤巻が抱えていたどうしようもできない悩みと、視聴者が抱いたモヤモヤはどこか似ているのではないだろうか。

藤巻の本当の気持ちは藤巻にしかわからない。でも、『グレイトギフト』で感情が刺激されるたびに、藤巻と視聴者は間接的につながっていたように感じている。

藤巻が少しずつ歩みを進めてきた姿を知っているから、毎週欠かさず応援したし、最終回が終わってから、もうすでに藤巻を求めている。藤巻という人物は本当に不思議だ。

「これをロスと言うのだな」と実感しながら、物語は続編がありそうな雰囲気で終わりを迎えている。確信は持てないが、続編があるのではないかと期待が高まる。また藤巻に会えるその日まで楽しみに待ちたい。